値決めは経営、と言いますが、値段を決めるくらい難しいこともありません。多くの場合、値段は適当に決まってしまいがちですが、これをやっていると「儲からない」につながります。「儲ける」ためには、値決めを理論的に行う必要があります。
目次
変動費と固定費
値決めを理論的に行うためには、値段の要素を理解する必要があります。値段の要素には原価、マージン(利幅)や競合の価格など、様々な見方がありますが、ここでは自社の「固定費」と「変動費」に注目して考えるやり方を紹介します。
「固定費」とは商品が売れようが売れまいが、毎月発生する費用をいいます。例えば、人件費です。人を雇うと今月販売不振だったから給料半分ね、とは言えません。営業マンに歩合制で払うことも可能ですが、基本的には固定部分があります。その他にも、事務所の家賃や水道光熱費なども固定費です。
一方「変動費」は商品の販売に応じて発生する費用です。例えば、梱包費、送料、などです。
売上から変動費を引いたものを「限界利益」といいます。限界利益から「固定費」を引いたものが「営業利益」です。営業利益は本業からの「儲け」ですので、営業利益がしっかり出るように売上(売値)、変動費、固定費のバランスをとる必要があります。
値引き(値上げ)をすると利益がどう増減するか?
単純に値引きをすると売れるため、すぐに値引きをしたくなります。ですが、わずかな値引きでも、変動費や固定費が変わらなければ、利益の減少幅は大きくなります。このことは多くの経営者にとっていまひとつピンとこないものです。そこで具体例を使って見てみましょう。
具体例
1個の販売について変動費2000円の商品を固定費7000円の前提で販売する場合、販売数の増加によって、営業利益は下図のようなものになります。
販売数が7個のときに売上7000円x7個ー変動費2000円x7個ー固定費7000円=0となり、営業利益がゼロになります。要するに損益がトントンです。この販売数を損益分岐点といいます。
このとき販売数に関わらず、一律2%値引きするとどうなるでしょうか。下図のグレーの線のように値引きした分、販売数が増えても利益が増えなくなります。
このとき利益の減少幅をグラフにすると、下図のようになります。当然ながら、販売数が大きいほど値引き額が大きくなります。
では、この値引き額が当初の営業利益に対してはどの程度の影響があったでしょうか。値引き幅÷営業利益でみると、次の図のようになります。本来は損益分岐点で無限大になるのですが、そこは省略しました。
ここから分かることは、わずか2%の値引き販売なのに、この例では販売数がある程度大きい場合には、利益の減少幅は10%にもなる、ということです。ここが値引きの怖いところです。うかつに値引きすると、思った以上に利益を削ってしまい、赤字に転落するということがあります。
損益分岐点付近では、もともとカスカスのビジネスだったわけなので、わずか2%の値引きでも利益は大きく削られます。30%とか40%の利益を失うこともあります。
まとめ
値決めをする際に、基本的には極力値引きはしない方が良いです。取引先との関係や競合との関係でやむを得ず値引きをする場合には、上記のような変動費、固定費、限界利益、営業利益の分析とシミュレーションを行って慎重に行いましょう。「数パーセントくらいなら、まあいいか」といって何も考えずに値引きすると後で痛い思いをしますので、ご注意を。
また、値引きの場合以外でも、例えば「アウトソーシングによってある費用を固定費から変動費に変えると利益がどう増減するか?」や、「現在の売り上げで人を雇うこと(固定費を増やすこと)が出来るか?」といった重要な経営判断において、上述の分析とシミュレーションは有効です。直感や思いつきで判断せずに、数字で納得してから行動に移すようにしましょう。
以上、経営は値決めがすべて。変動費、固定費、限界利益、営業利益を分析シミュレーションして値引きするかどうか判断する方法、という話題でした。この話題について理解を深めたい場合は下記の本が分かりやすくてお勧めです。
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