【経営破綻のキホン】中小企業を支援する制度を整理

前回のこちらの記事に続きまして、中小企業の経営破綻を扱います。

経営破綻した状態とは?

会社が経営破綻した状態とは、債務を弁済することができず、事業の継続が困難な状態を指します。

経営破綻に至る原因

  • 経済不況
  • 競争激化
  • 顧客ニーズの変化
  • 経営不祥事
  • 粉飾決算
  • 過剰な借入
  • 不適切な投資
  • 後継者不足

経営破綻の兆候

  • 資金繰りの悪化
  • 売上減少
  • 利益減少
  • 債務増加
  • 訴訟の提起
  • 人材流出
  • モラル低下

経営破綻の法的措置

  • 民事再生
  • 会社更生
  • 破産宣告

民事再生・会社更生

  • 裁判所の監督下で、債権者との間で合意に基づき、債務の一部免除や返済猶予などの措置を受けることで、事業の再建を目指す法的手続き
  • 会社を存続させ、事業を継続することを目的とする

破産宣告

  • 裁判所によって、債務者の財産を処分し、債権者に弁済する法的手続き
  • 会社は解散し、事業は清算される

経営破綻の影響

  • 従業員の解雇
  • 取引先への影響
  • 債権者への影響
  • 企業イメージの悪化
  • 経営者の責任追及

経営破綻は、決して他人事ではありません。日頃から経営状況を把握し、リスク管理を徹底することが重要です。



会社が破産しても個人が破産せずに資産を残す方法とは?

会社経営者にとって、会社が破産するということは大きな痛手となります。しかし、適切な対策を講じることで、会社が破産しても個人が破産せずに資産を残すことは可能です。

1. 自宅を個人の名義にする

自宅が会社名義の場合、破産手続きの中で売却されてしまう可能性があります。そのため、破産前に自宅を個人の名義に変更しておくことが重要です。ただし、名義変更には一定の条件を満たす必要があり、また、税金などの問題も考慮する必要があります。

2. 夫婦財産制を活用する

夫婦財産制には、**「共有財産制」「夫婦別財産制」**の2種類があります。共有財産制の場合は、夫婦の財産が共有財産となり、会社が破産した場合にも夫婦の財産が処分される可能性があります。一方、夫婦別財産制の場合は、夫婦それぞれの財産が独立しており、会社が破産しても個人の財産が処分されることはありません。

3. 会社と個人の資金を混同しない

会社と個人の資金を混ぜて使用すると、会社が破産した場合に個人の財産が処分される可能性があります。そのため、会社と個人の資金は厳格に区別し、個人の財産は会社とは別に管理することが重要です。

4. 経営者保証ガイドラインの活用

平成26年より施行された「経営者保証ガイドライン」は、一定の条件を満たす場合、代表者個人が破産を回避し、住宅などの資産を残しながら債務整理を行うことができる制度です。

ガイドラインの適用要件

  • 会社の規模や業種、財務状況等一定の要件を満たしていること
  • 債権者との間で弁済計画を策定し、誠実に履行すること
  • 今後経営者として適切な事業活動を行うこと

ガイドラインのメリット

  • 破産宣告を受けずに済むため、社会的な信用情報に傷がつかない
  • 自宅などの一定の財産を残すことができる
  • 債務の一部免除を受けることができる


破産か民事再生か、どちらを選ぶべきか?

会社が経営破綻に陥った場合、破産と民事再生という二つの選択肢があります。それぞれの手続きにはメリットとデメリットがあり、どちらを選択すべきかは、会社の状況や債権者との関係性、経営者の意向などを総合的に判断する必要があります。

破産

破産とは、裁判所の命令によって、債務者の財産を処分し、債権者に弁済する法的手続です。破産宣告されると、会社は解散し、事業は清算されます。

メリット

  • 手続きが比較的迅速
  • 費用が比較的安価
  • 債務を大幅に減らすことができる

デメリット

  • 会社は解散し、事業は清算される
  • 経営者の社会的な信用が失われる
  • 従業員の解雇を伴う

民事再生

民事再生とは、裁判所の監督下で、債権者との間で合意に基づき、債務の一部免除や返済猶予などの措置を受けることで、事業の再建を目指す法的手続です。民事再生は、会社を存続させ、事業を継続することを目的としています。

メリット

  • 会社を存続させ、事業を継続することができる
  • 経営者の社会的な信用を維持することができる
  • 従業員の解雇を回避できる可能性がある

デメリット

  • 手続きが複雑で時間がかかる
  • 費用が高額になる
  • 債務をそれほど減らすことができない

どちらを選ぶべきか

破産と民事再生のどちらを選択すべきかは、個々の事案によって異なります。

  • 会社を存続させ、事業を継続したい
  • 債権者との合意を得られる見込みがある
  • 事業再建の計画がある

という場合は、民事再生を選択することが適切な場合があります。

  • 事業の継続が困難である
  • 債権者との合意を得られる見込みがない
  • 事業再建の計画がない

という場合は、破産を選択せざるを得ない場合があります。



民事再生よりも簡便的な再生手続きとは?

会社が経営破綻した場合、破産宣告を受けることなく、事業を再建することを目指すために利用できる制度はいくつかあります。

民事再生は、裁判所の監督下で、債権者との間で合意に基づき、債務の一部免除や返済猶予などの措置を受けることで、事業の再建を目指す法的手続きです。しかし、民事再生は手続きが複雑で時間がかかるというデメリットがあります。

そこで今回は、民事再生よりも簡便的な再生手続きについてご紹介します。

1. 簡易再生

簡易再生は、民事再生の一種であり、債権調査・確定手続を省略することで、通常の民事再生よりも迅速に手続を進めることができます。簡易再生は、再生計画案に同意した債権者が再生債権額の5分の3以上を占めている場合に利用できます。

メリット

  • 民事再生よりも迅速に手続を進めることができる
  • 債権調査・確定手続を経ないため、費用が安くなる

デメリット

  • 同意要件が厳しい(再生計画案に同意した債権者が再生債権額の5分の3以上を占めている必要がある)
  • 裁判所の関与が少ないため、手続きの安全性や透明性が確保されにくい

2. 同意再生

同意再生は、民事再生の一種であり、すべての再生債権者から再生計画案に書面による同意を得ることで、さらに迅速かつ簡便に手続を進めることができます。同意再生は、再生計画案に同意した債権者が再生債権額の100%を占めている場合に利用できます。

メリット

  • すべての再生債権者から同意を得ているため、手続が円滑に進めやすい
  • 民事再生よりも迅速に手続を進めることができる
  • 裁判所の関与が少ないため、費用が安くなる

デメリット

  • 同意要件が非常に厳しい(すべての再生債権者から同意を得る必要がある)
  • 裁判所の関与が少ないため、手続きの安全性や透明性が確保されにくい

3. 事業譲渡

事業譲渡は、経営破綻した会社の事業を、別の会社に譲渡することで、事業を再建する方法です。事業譲渡は、民事再生や破産宣告の手続を経ずに実施することができ、比較的迅速に事業を再建することができます。

メリット

  • 民事再生や破産宣告の手続を経ずに実施することができる
  • 迅速に事業を再建することができる
  • 従業員の雇用を維持することができる可能性がある

デメリット

  • 事業譲渡の相手先を見つけることが難しい場合がある
  • すべての事業を譲渡することができない場合がある
  • 譲渡対価が低い場合がある

民事再生よりも簡便な再生手続きを選択する場合

  • 手続の迅速性
  • 費用
  • 同意要件
  • 裁判所の関与
  • 事業の継続可能性

などを総合的に判断する必要があります。



同意再生の手続とは?

同意再生は、民事再生法に基づく再生手続の一種であり、すべての再生債権者から書面による同意を得ることで、迅速かつ簡便に事業の再建を目指すことができます。同意再生は、民事再生と比べて手続きが簡略化されているため、時間と費用を抑えながら事業の再建を進めることができます。

同意再生の特徴

  • 迅速性: 民事再生と比べて手続きが簡略化されているため、迅速に事業の再建を進めることができます。
  • 費用: 民事再生と比べて費用を抑えることができます。
  • 柔軟性: 再生計画の内容を債権者との合意によって自由に設定することができます。
  • 裁判所の関与: 民事再生と比べて裁判所の関与が少ないため、手続きが迅速かつ柔軟に進められます。

同意再生の手続の流れ

  1. 再生債権の届出
  2. 再生計画案の作成
  3. 再生計画案の送付及び説明
  4. 再生計画案への同意
  5. 同意再生決定の申立て
  6. 同意再生決定
  7. 再生計画の実施

同意再生のメリット

  • 迅速に事業の再建を進めることができる
  • 費用を抑えることができる
  • 再生計画の内容を自由に設定することができる
  • 従業員の雇用を維持しやすい

同意再生のデメリット

  • すべての再生債権者から同意を得なければならない
  • 裁判所の関与が少ないため、手続きの安全性や透明性が確保されにくい
  • 再生計画案に反対する債権者がいる場合、手続が膠着状態に陥る可能性がある

同意再生が適切かどうかを判断するポイント

  • すべての再生債権者から同意を得られる見込みがあるか
  • 再生計画案の内容が妥当であるか
  • 事業の継続可能性があるか

同意再生を選択する場合

  • 弁護士に相談して、適切な手続を進めることが重要です。
  • すべての再生債権者と十分に協議し、合意を得られるように努める必要があります。
  • 再生計画案は、現実的で実現可能な内容である必要があります。

同意再生は、民事再生よりも簡便で迅速な再生手続ですが、慎重に検討する必要があります。



経営破綻した中小企業のために認定支援機関ができること

中小企業にとって、経営破綻は大きな痛手となります。しかし、適切な支援を受けることで、破綻を回避したり、事業の再建を図ったりすることが可能です。

認定支援機関は、中小企業庁から認定を受けた民間機関であり、中小企業の経営支援に関する専門的な知識や経験を有しています。経営破綻した中小企業に対して、以下のような支援を行うことができます。

1. 経営状況の把握及び分析

  • 財務諸表分析
  • 資金繰りの分析
  • 市場環境分析
  • 競合分析
  • 強み・弱み・機会・脅威(SWOT)分析

2. 経営課題の抽出

  • 財務上の課題
  • 販売上の課題
  • 生産上の課題
  • 人材上の課題
  • 組織上の課題

3. 事業再生計画の策定

  • 事業ビジョンの策定
  • 事業戦略の策定
  • 財務計画の策定
  • 人員計画の策定
  • 組織再編計画の策定

4. 事業再生計画の実行支援

  • 資金調達支援
  • 債務整理支援
  • 業務改善支援
  • 人材育成支援
  • マーケティング支援
  • 経営管理支援

5. アフターフォロー

  • 定期的な面談
  • 経営状況のモニタリング
  • 追加支援の検討

認定支援機関による支援を受けるメリット

  • 専門的な知識や経験に基づいた支援を受けられる
  • 官公庁や金融機関との連携が可能
  • 低廉な費用で支援を受けられる場合がある
  • 第三者的な立場で客観的なアドバイスを受けられる

認定支援機関による支援を受けるデメリット

  • すべての認定支援機関が同じ質のサービスを提供しているわけではない
  • 必ずしも事業再生が成功するとは限らない
  • 支援を受けるためには、一定の要件を満たす必要がある

当事務所(税理士法人船津会計)も認定支援機関です。お問い合わせは以下よりご連絡お願いします。