この記事は「中小企業にテレワークやITシステムを導入したのですが、どんな助成金・補助金を利用することができますか?」といった疑問に答えます。
目次
出揃った中小企業に対する様々な助成金・補助金
新型コロナウイルスの感染の拡大を受けて、中小企業に対する様々な支援策が講じられています。売上が激減した場合に使える持続化給付金が有名ですが、それ以外にも特にテレワークの導入や非対面型の新しい生活様式をサポートする助成金・補助金がいくつか出ています。
ところが縦割り行政のため、それぞれの役所や公機関がそれぞれの施策を発表しており、全部並べて見渡してみる、ということがなかなかできません。発表時期もバラバラで更新もされるためさらに分かりにくくなっています。
そこで今回は中小企業がテレワークIT関連で利用できる助成金や補助金をピックアップして整理してみました。全て活用すると最大で総額850万円のメリットがありますから、使わないと損です。
テレワークIT関連で利用できる助成金・補助金
今回ピックアップしたのは以下の4つです。
- 働き方改革推進支援助成金
- IT導入補助金
- 持続化補助金
- 中小企業経営強化税制
以下にそれぞれ内容と、実際にどういう事例で使えるか説明します。
働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)(厚生労働省)
働き方改革推進支援助成金は厚生労働省が以前から行なっていたものですが、今回の事態を受けてテレワーク導入に特化したテレワークコースを設定しています。公式サイトは以下のリンクになります。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/telework_10026.html
(1)趣旨
在宅又はサテライトオフィスにおいて就業するテレワークに取り組む中小企業事業主に対して、その実施に要した費用の一部を助成するとなっています。
(2)対象となる事業者
次の要件を満たす事業者です。
- 労働者災害補償保険の適用事業主
- 小売業なら資本金5000万円以下・従業員50人以下
- サービス業なら資本金5000万円以下・従業員100人以下
- テレワークを新規で導入または対象を拡大する事業主
(3)対象となる投資
テレワーク用通信機器の購入、または導入のための研修やコンサルティング費用。
(4)金額
対象経費(謝金、旅費、借損料、会議費、雑役務費、印刷製本費、 備品費、機械装置等購入費、 委託費)x補助率 です。
補助率は「成果目標」達成なら3/4(上限300万円)、未達成なら1/2(上限200万円)となります。
(5)条件
次の場合に助成金が支給されます。
- 令和2年12月1日(火)までに申請すること
- 定められた評価期間中に成果目標を達成すること
成果目標は(1)対象従業員がテレワークを実施、(2)テレワーク実施の週間平均が1回以上であること、です。
(6)おすすめの活用例
働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)の活用例としては次のものが考えられます。
活用例【クラウドWi-Fiの導入】
テレワークを導入する際の典型的な問題は、従業員が自宅にネットワークを施設していないという点です。最近ではスマホがひとつあれば用が足りるため、自宅にネットワークを持っていない人が多くいます。
この場合、会社でクラウドWi-Fi(モバイルWi-Fiルーター)を契約して提供するのが最も手っ取り早いです。これについて詳しくはこちらの記事に書きました。
活用例【VPNの導入】
次にネットワークがあったとしてもインターネットに会社のネットワークを解放するわけにはいきませんから、一定のセキュリティを保つために設備が必要です。それが VPN(バーチャルプライベートネットワーク)と言われるものです。
VPNの導入についてはこちらの記事に詳しく書きました。
IT導入補助金(テレワーク環境の整備)(経済産業省)
IT導入補助金も経済産業省が以前から実施しているものですが、新型コロナウイルス感染防止のためにテレワーク環境の整備をする場合に特化して提供される補助金です。公式サイトは以下のリンクになります。
https://www.it-hojo.jp/tokubetsuwaku/
(1)趣旨
新型コロナ感染症が事業環境に与えた影響への対策及び同感染症の拡大防止に向け、具体的な対策(サプライチェーンの毀損への対応、非対面型ビジネスモデルへの転換、テレワーク環境の整備等)に取り組む事業者によるIT導入等を支援する、となっています。
(2)対象となる事業者
以下の中小企業です。
- 小売業なら資本金5000万円以下、従業員50人以下
- サービス業なら資本金5000万円以下、従業員100人以下
(3)対象となる投資
あらかじめIT導入支援事業者が事務局に登録し、認定を受けたITツールに限られています。従って自分で自由に選ぶことは出来ず、登録されたものから選ぶ必要があります。
内容的には、ソフトウエア、導入コンサルティング、PC・タブレット等のハードウェアのレンタル費用、となっています。
(4)金額
経費x補助率3/4
ただし下限30万円~上限450万円の範囲の金額となります。上限450万円のIT投資は中小企業にとって規模が大きいものです。
(5)条件
交付申請に「gBizIDプライムアカウント」が必要です。このアカウント取得が結構手間で、1-2か月かかりますので注意が必要です。
1次締切から4次締切までスケジュールが決まっているので、各回の締切に間に合うように準備申請する必要があります。
(6)おすすめの活用例
IT導入補助金の活用例としては次のものが考えられます。
活用例【クラウド会計の導入】
人気のクラウド会計システム「freee」が認定を受けており、導入との対象として選択することができます。導入コンサルティングも補助金の対象なので、この際古い会計システムを「freee」に置き換えてしまう、というのはいかがでしょうか?
「freee」についてはこちらの記事も参考にどうぞ。
持続化補助金(小規模事業者持続化補助金) (日本商工会議所・全国商工会連合会)
日本商工会議所・全国商工会連合会が街の商店や工場など小規模事業者を支援するために提供している補助金です。国の「持続化給付金」と名前が似ていて混同しやすいですが、全くの別ものです。公式サイトは以下のリンクになります。
https://r1.jizokukahojokin.info/
(1)趣旨
小規模事業者等が取り組む販路開拓等の取組の経費の一部を補助することにより、地域の雇用や産業を支える小規模事業者等の生産性向上と持続的発展を図ることを目的としています。この「販路開拓」向けというところがキーポイントです。
(2)対象となる事業者
商工会議所(または商工会)の管轄地域内で事業を営んでいる「小規模事業者」及び、一定の要件を満たした特定非営利活動法人が対象となります。商業・サービス業の場合、従業員数5人以下といった規模です。
(3)対象となる投資
販路開拓等(生産性向上)のための取組で例えば次のものです。
- 新たな販促用チラシの作成、送付
- 新たな販促用PR(マスコミ媒体での広告、ウェブサイトでの広告)
- 業務改善の専門家からの指導、助言による長時間労働の削減
- 新たにPOSレジソフトウェアを購入し、売上管理業務を効率化
(4)金額
補助対象経費の2/3以内で、補助上限額は50万円です。
ただし、「認定市区町村のよる特定創業支援等事業の支援」を受けた小規模事業者は補助上限額が100万円にアップします。
(5)条件
条件は結構厳しめです。次のようなものです。
- 事前に「事業計画書」を作成し地域の商工会議所にて確認を受ける必要がある
- 受付締切日が4回(2020年3月・6月・10月、2021年2月)あり締切に間に合うこと
- 審査に合格して採択されたら実績報告書の提出が必要
(6)おすすめの活用例
50万円のためにクリアすべき条件が厳しいですが、持続化補助金の活用例としては次のものが考えられます。
活用例【ネットショップの開設やネット広告の出稿】
小規模事業者でもコロナ時代にあってはネットショップやネット広告は必須となります。この機会に補助金を使って取り組んでみるというのも良いです。ネットショップやネット広告についてはこちらの記事に詳しいです。
活用例【キャッシュレスの導入】
POSレジ(おしゃれなお店で見かけるタブレットなどをレジにしているもの)を導入してクレジットカード決済に対応する、というのも販路拡大という点では有効な補助金の使い方です。コロナで現金のやり取りを嫌う傾向もありますので、是非ご検討頂ければ。こちらの記事もご参照ください。
テレワーク等を促進するための中小企業経営強化税制(財務省)
中小企業経営強化税制は「税制」ですので税金が安くなる、という話です。補助金・助成金がもらえるということではありません。ですが、メリットとしては同じです。
国は税金の面からもテレワークIT関連の投資を支援しています。公式サイトは以下のリンクになります。
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/2020/200501kyoka.html
(1)趣旨
一定の設備を取得や製作等した場合に、即時償却又は取得価額の10%の税額控除(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)が選択適用できる、となっています。今回のコロナで新たにデジタル化設備(C類型)が対象に加わりました。
つまり、普通に減価償却するのではなく、全額当期の費用にするか、10%分の税額を減額しますよ、ということです。大変ありがたい話です。
(2)対象となる事業者
中小企業という以外は特に限定されるものではありません。
(3)対象となる投資
次のいずれかとされていますが、それぞれが何のことを言っているのはいまひとつはっきりしません。おそらくテレワーク環境やクラウド環境全般と解釈できると考えています。迷ったときは税務署に電話して確認するしかありません。
- 遠隔操作(通常行っている業務を、通常出勤している場所以外の場所で行うことができるようにする)
- 可視化(データの集約・分析 最新の状況を把握し経営資源等の最適化)
- 自動制御化(状況に応じて自動的に指令を行うことができる)
(4)金額
即時償却又は取得価額の10%の税額控除(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)が選択適用できることになっています。これにより税金がいくらお得なのかはケースバイケースで算定する必要があります。
(5)条件
特にありません。普通に確定申告をするだけです。
(6)おすすめの活用例
活用例【オンライン会議システムの導入】
オンライン会議は無料で使えるZoomが人気ですが、その反面セキュリティに問題があったりして、大手企業では利用禁止となっているところもあります。有償になりますが、その他にもしっかりしたオンライン会議システムは各社から出ており、こちらの記事で比較しております。
活用例【クラウド環境の導入】
中小企業の場合、テレワーク以前の問題として、クラウド環境の利用が浸透しておらず、いまだに紙とファックスの世界ということがあります。そのうような場合、「Google G Suite」や「Microsoft 365」といったビジネスクラウド環境の導入に取り組むと、生産性アップの成果が出やすいです。クラウド環境の導入についてはこちらの記事をご参照ください。
以上、テレワークIT関連で利用できる助成金・補助金とその使い方、という話題でした。コロナ対応で悩む中小企業・個人事業主の助けになれば幸いです。
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