この記事は「テレワークを始めたくても始められません。特に費用が気になります。テレワークの導入にはだいたいいくらくらいかかりますか?」といった疑問に答えます。
目次
テレワーク7割に遠く及ばない現実
コロナ禍で政府が企業に対して「テレワークの割合を7割にしてください」としていますが、完全なる掛け声倒れに終わっているようです。東京商工リサーチの調査では大企業は約48%が、中小企業では約20%が在宅勤務などのテレワークを実施しているということで、ぜんぜん少ない状況です。
なぜギャップが埋まらないのか?というと、割と明らかなことですが(1)実際の物や人を扱う仕事だから、(2)自宅には無い設備・備品や紙書類が必要だから、(3)テレワークを開始するためのリソース(人材や予算)が無いから、といったところでしょう。
そのほかにも(4)会社に集まらないと仕事できない(やる気が出ない)から、といった気持ちの問題もあるかもしれません。ですが、ウイルスの波状攻撃は今後も続くはずで、そんなことを言っている状態でもありません。
(1)については非対面とか非接触へのシフトが各業界で進んでいますが、物理的に困難で急にできるものでもなく、今後徐々に時間をかけて進んでいかざるを得ないものです。社会全体のパラダイムチェンジですから、1社だけで対応できるものでもありません。
ですが(2)や(3)はわりと工夫しだいで1社だけで対応できるものという気がします。要はやるかやらないかの世界です。もちろん予算の制約はある訳ですが、比較的安くテレワークをスタートする方法はあるので、以下に紹介します。IT企業に丸投げするとビックリする金額になりますが、以下の方法なら従業員数名の中小企業が格安でテレワークを始めることが可能です。
いまから始めるテレワーク!費用はいくらかかるのか?
テレワークを始める場合にやることは基本的に以下のとおりです。
- 家に持って帰るパソコンを用意する
- 家から接続できるネット回線を用意する
- アプリやデータをクラウド化する
- (必要なら)社内のネットワークにアクセスできるようにする
- (必要なら)電話の転送システムを準備する
以下にそれぞれのやり方と費用を説明します。
家に持って帰るパソコンを用意する
会社のパソコンがノートパソコンで1人1台ならそれを持って帰れば良いということになります。セキュリティについては仕事の内容によってはパソコン内の情報の暗号化なども考えたほうが良いですが、普通の場合はパスワードがかかっており、Windows Defenderのような標準のアンチウィルスソフトが入っていれば十分です。
もし持ち帰り用のパソコンが無いという場合は、レンタルすることになります。最近パソコンメーカーのレノボが中小企業向けに無料でパソコンを貸し出す支援プログラムを行っています(記事執筆時の情報です)。条件が合えばタダでパソコンを借りられますので利用してみると良いです。
(出典:lenovo.com)
家から接続できるネット回線を用意する
今では多くの家庭に光回線などのインターネット回線が普及していますので、それを使えばタダですみます。会社によっては在宅勤務手当など通信費の一部を負担してくれるところもあり、そういった神対応ができるならなおさら良いです。ですが予算の制限があるなら、そこは説明して従業員に負担してもらうしかありません。
もし家庭にインターネット回線が無いです、という従業員がいる場合は、会社負担でWiFiルーターなどをレンタルして提供することになるでしょう。以下のようなレンタルサービスで月当たり1台あたり3,000~4,000円といったコストがかかります。
アプリやデータをクラウド化する
社内のサーバー(共有ドライブ)や個々のパソコンのデータは極力クラウド化して外からアクセスできるようにしましょう。具体的にはWordやExcelといったOfficeソフトと親和性が高いMicrosoftのOneDriveがおすすめです。OneDriveにデータを移して外からアクセスしチームで共有する、という体制にします。
OneDriveはサブスクリプションのMicrosoft Office 365に含まれています。法人向けのBusiness Basicは月当たり1人あたり540円のコストで利用でき、1TBという十分なデータ容量が利用可能です。また自社で管理しているよりもよほど強固なセキュリティとなっています。「クラウドはセキュリティが心配」というのは昔の話で、今では会社のデータを安心して預けることができます。
またこれを機に社内で使っているビジネスアプリケーションもクラウド化します。
例えばインストール型の会計ソフトからfreeeのようなクラウド会計に移行します。これにより経理担当者は家から仕事することができるようになります。freeeであれば月額1980円からの利用コストがかかりますが、インストール型の会計ソフトでも法改正に合わせた更新料がかかるのであまり変わりありません。
(必要なら)社内のネットワークにアクセスできるようにする
本来なら以上で終わりなのですが、様々な事情で社内のネットワークにアクセスする必要がある、ということが現実にはあります。外から社内のネットワークにアクセスするのはセキュリティの観点から若干やっかいな準備が必要です。
この場合、規模が大きい運用ならVPN(バーチャル・プライベート・ネットワーク)という仕組みを入れますが、コストも高いですし運用のためのIT人材も必要です。かといって、会社のルーターに穴を空けて外からの侵入を許すような方法はイージーですが、セキュリティ上危険です。
それでお勧めしているのは「リモートビュー」というソフト(サービス)の利用です。社内のパソコンにソフトを入れて設定すると、インターネット経由で自宅からそのパソコンに入って遠隔操作することができるようになります。
自宅のパソコンにはその社内のパソコンの画面が映し出され、あたかも社内にいるかのように操作することが可能です。セキュリティも担保されています。
これが月当たり1人あたり800円から利用することができます。VPNなど検討するよりも簡便かつ安いです。
(必要なら)電話とFAXの転送システムを準備する
もうひとつやっかいなハードルは「電話とFAX」です。取引先から電話がかかってきたらどうするか?FAXが来たらどうするか?という問題です。こういった旧世代のデバイスは使わないのが吉ですが、相手の問題もあって急にそうもいきません。
電話の場合、単純にはNTTの転送サービス(ボイスワープ)でスマホなどに転送すれば済みます。これなら1つの番号あたり月額550円で利用できます。ですが、これですと1台のスマホにしか転送できず不便です。電話番を変えるために転送設定を変更しなければならず面倒という話になります。
本来なら会社の電話番号にかかってきた電話を複数の従業員のスマホに配賦したいということになりますが、これを安価にできるのが「クラウドPBX」という仕組みです。以下の記事で紹介したナイセンクラウド なら、2人まで月額5,000円から従業員のスマホを使った内線のような仕組みを利用することができます。
FAXの場合は、FAXをメールの添付として転送してくれるサービスを使うのが一般的です。例えば「eFAX 」というサービスが最大手ですが、月額1,500円で毎月150ページ まで無料で受信できます。FAXという足かせから逃れられるなら割とリーズナブルな価格です。
まとめ
以上を整理すると、最も安いパターンで以下のとおり従業員1人あたり月額540円からテレワークを開始することができます。
- パソコン ・・・ 0円(すでにノートパソコンがある場合、無料レンタルする場合)
- ネットワーク ・・・ 0円(従業員が契約しているネットワークを活用する場合)
- クラウド ・・・ 540円(Microsoft Office 365 Business Standardプラン)
これに社内ネットワークへのアクセスが必要な場合は、リモートビューで月額800円から、社員2人以上で電話やFAX対応も必要ならナイセンクラウド が月額5,000円からeFAX が月額1,500円から、となります。業務アプリもクラウド化する場合はその料金が上乗せということになります。
これを高いと見るか安いと見るかは人それぞれですが、この先当分続くであろうコロナ禍のことや、今後の採用競争力(または従業員を維持すること)を考えると、割とリーズナブルな投資であるように見えます。「テレワーク=高コスト」というのは誤ったイメージです。実際には安くスタートすることもできます。
まだテレワークを始めていなかった、という方は是非ご一考頂ければ幸いです。テレワークを始めたいのでサポートして欲しいという場合は、当方にご相談頂くか、以下の中小企業庁が実施している「デジタル化応援隊事業」などを活用してみると良いでしょう。
以上、格安でいまから始めるテレワーク!という話題でした。テレワークは思ったより安いということが分かって頂けたかと思います。テレワークは短期的なコロナ禍対応だけでなく、長期的にも人々を幸せにするものではと考える次第です。
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