先日某社(製造業)の中期経営計画で「我が社は売上総利益率(グロスマージン)で70%以上を目指します!」というのがありました。これを聞いた人の多くは、「おっ、おう」という感じで、おそらく意味が分かっていないと感じました。ですが、それが世間一般の受け止めでしょう。
そこで、今回は売上総利益率について考えてみたいと思います。
目次
売上総利益率とは
数字の出し方自体は簡単で、「売上総利益÷売上」というだけです。売上高に占める売上総利益の割合です。
では売上総利益とは何か?というと売上高から売上原価を引いたものです。一般にはこれを「粗利」とか「粗利益」といいます。
では売上原価とは何か?というとこれは事業によって内容が変わってきます。もしその事業がモノを仕入れて売るのであれば、仕入に関する費用が売上原価です。モノを作って売るのであれば、原材料費や工場の人件費が売上原価です。ソフトウエアのような無形のモノを作って売る場合でも制作にかかった費用は売上原価です。
要するにモノを売るビジネスなら、そのモノを売れる状態になるまでにかかった費用ということになります。
一方、サービス業の場合は、「役務の提供」といってモノを渡しませんし、お客さんが来ても来なくてもサービスを提供するスタッフの人件費はかかってしまうので、売上原価とは考えないのです。
この辺の違いを理解すれば、売上総利益率の比較は同業他社でないと意味がないことがわかります。例えば「トヨタ」(製造業)と「電通」(サービス業)の売上総利益率を単純に比較しても意味がありません。
売上総利益率から何が読み取れるのか?
企業が提供する商品またはサービスの競争力、販売力、製造効率が分かります。
例えば、売上総利益率が同業他社と比べて低い、または経年でだんだん低下してきた、という状況であれば、次のことを疑います。
- 販売単価(客単価)が落ちてきているのではないか?
- 値引き合戦に晒されているのではないか?
- 商品・サービスの魅力(価値)が低下しているのでは?
- 高価格帯の商品より低価格帯の商品のほうが多く出ているのでは?
- 仕入単価が上昇しているのではないか?
売上総利益率をモニターすることで、このような兆候を掴むことができ、適切な経営判断に結び付けます。適切な経営判断は、状況により異なりますが、例えば次のようなことです。
- 値決めの見直し
- 値引きに関するルールの厳格化
- 商品・サービスの撤退や入れ替え
- 商品・サービスの品揃えの見直し
- 納入業者と価格交渉
標準的な売上総利益率はどのくらいなのか?
そういう訳で、標準的な売上総利益率も業界ごとに見るのが普通です。下図は製造業における標準的な売上総利益率です。
(出典:経済産業省ホームページ)
こちらを見ると、売上総利益率20-30%が製造業の標準であり、冒頭の「70%以上」がかなり無理な話と分かります。ただし、業態を製造業からサービス業にシフトさせることで、売上総利益率が上昇してくるということはありますので、そのような戦略の変更を企図している可能性はあります。
もっとも、「キーエンス」のような超高収益企業では、製造業であるにもかかわらず売上総利益率は80%を超えており、まったく無理な話ということではありません。要は高くても顧客が喜んでお金を払うようなモノ・サービスを売れば達成可能な数字です。
まあ、それが出来ればだれも苦労しない訳ですが。目指すべき姿ではありますね。
以上、売上総利益率(英語ではgross margin)とは?製造業の場合の目安とは?という話題でした。