【小さなビジネス応援】多くの人がうっかり間違える「みなし配当」についてわかりやすく説明

事業承継

みなし配当とは?

剰余金の配当ではないのに、実質的に株主に対する剰余金の配当と変わらない状態となったため、法人税法上の配当とみなすことをいいます。これを株主(個人)の側からみると、配当所得として所得税が課税されることになります。配当していないのに配当とみなすことから、法人においても株主(個人)においてもうっかり見逃しやすく、申告漏れ・誤りの原因になりやすい特徴があります。


みなし配当が発生する場合

みなし配当が発生する場合は下記のようにいくつかあります。発生頻度の点でいうと、(1)の自己(自社)株式の買い戻しがよくあるパターンです。例外的に(2)や(3)のパターンでもみなし配当が発生しますが、状況によりますし、このような特殊な場合は税理士などの専門家が対応しますので、あまり問題になりません。

(1)法人が自己株式を株主から買い戻す場合

(2)適格条件に該当しない合併や会社分割に伴って株主に金銭・株式を交付する場合

(3)解散して残余財産を分配する場合


事業承継との絡みで発生するみなし配当

事業承継においては、中小企業のオーナーが持っている自社株の評価額が高いと、多額の贈与税や相続税を払う必要があります。下記の記事のとおり平成30年の法改正により、これを実質無税とする方法が出来ましたが、この制度を活用しない(できない)場合は、やはり多額の贈与税や相続税がかかってきます。

このため、以前からよく使われる節税スキームとして「社員持ち株会」を使ってオーナーの自社株評価額を下げる、という方法があります。これは急に対応できるスキームではありませんが、従前から計画的に社員持ち株会を設立して、オーナーから一定の自社株式を社員持ち株会に譲渡しておくことで、贈与税や相続税の課税対象から除く、という考え方です。

ただし、社員持ち株会を持って運営することはやっかいな点もあり、事業承継のあとで、会社が社員持ち株会から再び自己株式として買い取ろうとすることがあります。この場合、みなし配当が発生することがあるので注意が必要です。(これが忘れやすいのです)


みなし配当金額の計算方法

みなし配当を認識したら、いくら配当したことになるのか算出します。この算出は簡単で、次の式で求めます。

みなし配当=交付金銭等の額 - 1株あたりの資本金等の額 × 所有株式数

ここで、「1株あたりの資本金等の額」とは資本金と資本剰余金を合算して発行済株式総数で割った値です。要するに株主に対する出資の払い戻しを超える部分の金額が配当とみなされるのです。


法人側でやること

みなし配当を行った法人側では税務上主に二つのことをする必要があります。(1)源泉徴収と納付、(2)支払調書の提出、です。

源泉徴収については、通常の配当と同様に復興所得税を含む所得税と地方税を源泉徴収し、翌月の10日までに納付します。また、支払確定日から1ケ月以内に、「配当等とみなす金額に関する支払調書」を作成し税務署に提出し、同時に株主に対しても通知の目的で支払調書を送付します。


株主側でやること

株主(個人)側ではみなし配当金額の通知を確認して、これを所得税の配当所得として認識・申告します。法人側で源泉徴収したものは所得税の税額控除が適用され、また配当所得に対しては配当控除の適用があります。さらに、株式を法人に譲渡した際に譲渡損益が出ていれば分離課税として所得税の計算上考慮することになります。


以上、多くの人がうっかり間違える「みなし配当」についてわかりやすく説明、という話題でした。




━━…━━…━━…━━…━━…━━
サンクプランズ・コンサルティング
━━…━━…━━…━━…━━…━━
個人・中小事業者のお客様を対象に会計サービス、コンサルティング、デジタルコンテンツ販売、セミナーなどを行っています。
詳しいプロフィールを見る
会計サービスについて
コンサルティングについて
デジタルコンテンツ販売について
セミナーについて
お問合わせはこちら