この記事は「今年仕事が順調で利益が大きくなりそうです。何か良い節税方法はないでしょうか?」といった疑問に答えます。
目次
急に利益が増えた場合に使える節税方法
今回はお問い合わせの多い個人事業主(フリーランス)や小規模法人が活用できる節税の方法についてご案内します。
節税するためには個人事業の事業所得または法人の所得を減らせば良いので、一般的には 経費を増やすことで所得を減らして所得税額を少なくするということがあります。
ですが経費を使うと同時にお金も失うので、結果的にお金が手元に残らないというジレンマがあります。そこで「将来的にお金が返ってくるようなもの」にお金を使って節税するという考え方をお勧めしています。
多くの方が活用している方法として以下の3つがありますのでご紹介します。
(1)小規模企業共済
小規模企業共済は国が運営している個人事業主や中小企業の経営者のための「退職金制度」です。特に個人事業主の場合には会社員のように退職金という概念がありませんので、自分でお金を積み立てて将来に備える必要があります。これをサポートする制度です。
メリット
・掛金は全額が所得控除(所得からマイナスできる)となりその分節税効果があります
・月々の掛金は1,000~70,000円まで設定が可能で、加入後も増額・減額できます
・廃業・死亡・65歳で共済金(固定額)が受け取れます
・共済から掛金の範囲内で事業資金の貸付制度を利用でき万が一の助けになります
・前納が可能で最大で7万円x12か月=84万円の経費化が可能
デメリット
・毎月払い続けなければいけない
・中途解約もできますが、掛はじめから20年未満ですと共済金は掛金合計を下回ります
・共済金を一括受取なら退職金として、分割受取なら公的年金等として課税されます
・手続きや振替のタイミング(当月分は毎月18日まで)に注意
詳しくは以下よりご確認ください。
https://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/
(2)経営セーフティ共済
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)は、取引先事業者が倒産した際に、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度です。これも国が運営しています。
メリット
・掛金は全額が所得控除(所得からマイナスできる)となりその分節税効果があります
・掛金月額は5,000円~20万円まで自由に選べ、増額・減額できます。
・取引先が支払困難になったときに共済から無担保・無保証人で掛金の10倍まで借入れることができます
・中途解約した場合、40か月以上納めていれば、掛金全額が戻ります
・前納が可能で最大で20万円x12か月=240万円の必要経費化が可能
デメリット
・毎月払い続けなければいけない
・総額800万円が積立の上限です
・開業日から継続して1年以上事業を行っていないと加入できない
・解約手当金は事業所得(法人なら雑収入)として課税される
・手続き(毎月5日まで)や振替(毎月27日)のタイミングに注意
詳しくは以下よりご確認ください。
https://www.smrj.go.jp/kyosai/tkyosai/index.html
(3)iDeCo(イデコ)
iDeCo(個人型確定拠出年金)は文字通り「年金」制度です。年金なので法人ではなく個人が利用するものです。個人事業主の場合国民年金に加入していますが、これはいわゆる年金制度の1階部分でしかなく、老後の保障として若干心細いものがあります。
そこで国民年金を補完するものとして、iDeCoが誕生しました。iDeCoも国が認めた制度ですが、運用は民間の証券会社などを通じて行ないます。
SBI証券などの証券会社に専用の口座を開設して、iDeCoの適用ができる銘柄に投資して自分で将来の年金を作ることになります。このため自分でどの投資商品に投資するか選ぶ必要があります。
メリット
・掛金は全額が所得控除(所得からマイナスできる)となりその分節税効果があります
・ 自分で好きな投資先を選べる。運用結果も自分次第(自己責任)です
・掛金は個人事業主の場合、月額5,000円から68,000円まで(国民年金基金の掛金または国民年金の付加保険料との合算で)
デメリット
・開始手続きが面倒(だいぶ簡略化されてきましたが)
・毎月払い続けなければいけない。前納はできない。
・掛金の変更は年1回だけ(投資先の変更は自由にできる)
・投資商品による運用なので元本割れしてお金を失う可能性もあります
・受取時は退職所得(退職金)または雑所得(公的年金等)として課税される
詳しくは以下よりご確認ください。
https://www.ideco-koushiki.jp/
まとめ
以上が「将来お金が返ってくる」節税策としてお勧めのものです。
完全に税金がゼロになる訳ではなく、ひとまず今年の所得を減らして節税しますが、お金が返ってきたときに結局課税される点にご留意ください。ただし、その金額が事業所得ではなく退職金や年金などと性格が変わることで税金を安くすることができるので、一生涯としてみると税金を減らすことができるものです。
「今年利益がたくさん出るので減らしたいな~」というときに、掛金を増額して必要経費を増やし所得を減らすということができます。小規模企業共済と経営セーフティ共済を合わせると年間で最大324万円の必要経費を増やすことができます。
ただし、もちろんそれだけの現金を用意して払い込まないといけませんので、手元の現金が無くなってしまう問題があります。この辺のバランスをどうするか?もポイントです。
それぞれの手続きはご自身で行っていただくようになりますが、ご相談などありましたらスポット相談を以下より承ります。
以上、急に利益が増えた場合に使える節税方法のメリットとデメリット、という話題でした。よく税金を取られるくらいなら経費を使いたい、という話がありますが、結果としてお金が残らないと意味がないことが多く、紹介したような将来お金が返ってくるものを検討されることをお勧めします。
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