【小さなビジネス応援】親父の会社(非上場)を継いだらいくらかかるのか?非上場企業株式の評価方法を3分でわかりやすく解説

事業承継

 

事業承継にはコストがかかる

親父の会社を継いだらいくらかかるのか?と言われると、「えっ?コストなんてかかるの?」と思ってしまう人も多いはずです。高度経済成長期に起業して今の社長一代で会社を大きくしたものの、そろそろ代替わりして自分の子供に会社を継がせよう、となったときに会社の株主としての立場を子供に移転すると、そこで贈与または相続という問題が発生します

その会社の株主が社長ひとりだった場合、全ての株式を二代目社長に名義変更することが、事業の安定運営の観点では望ましいのですが、これは株式を贈与(先代社長が亡くなった場合は相続)することになり、贈与税(相続税)というコストが発生します。

ただし、平成30年の税制改正で「事業承継税制」がかなり拡充されたため、実質的に「無税」のまま株式を移転させることも可能になりました。こちらについては下記の記事を参考にしてください。

ですが、原則はあくまで、贈与税(相続税)がかかりますので、その場合具体的にいくらくらいかかるのか?はざっくりで良いので把握しておく方が良いでしょう。事業承継に関する様々な準備をする上で基礎情報のひとつだからです。


上場していない会社の株式

会社が株式市場に上場している場合は、原則としてその株式の時価総額がその会社の評価額です。これはクリアでわかりやすいです。ところが、上場していない会社の株式はどうやって評価するのか?という話になります。

実は法人税の計算の基礎となったいろいろな数字をもとに、相続税法の定めに従って株式の評価額を計算するルールが緻密に出来上がっています。概要は下記に示したとおりですが、完全にプロの世界です。素人が勉強して対応できる内容ではないですので、もし「親父の会社いくらだろう?」と思ったのであれば、税理士や公認会計士のようなプロにお願いする方が良いです。

会社の規模によって評価方法が違う

非上場の会社といってもその規模は様々です。従業員100人というところもあれば、1人のところもあります。このように規模の違いに応じて適切な評価方法を用いるルールになっています。

評価方法としてはつぎの3つがあります。

(A)純資産価額方法式

(B)類似業種批准方式

(C)配当還元方式(特例評価)

もし、評価する会社が「大会社」(総資産10億円以上、または従業員50人超、または取引金額20億円以上)なら、「AとBの低い方」が評価額です。

「中会社の大」(総資産7億円以上、または従業員50人超、または取引金額14億円以上)なら、「A x 0.1 + B x 0.9  と A の低い方」が評価額です。

「中会社の中」(総資産4億円以上、または従業員30人超、または取引金額7億円以上)なら、「A x 0.25 + B x 0.75 と A の低い方」が評価額です。

「中会社の小」(総資産5000万円以上、または従業員5人超、または取引金額8000万円以上)なら、「A x 0.4 + B x 0.6 と A の低い方」が評価額です。

「小会社」(総資産5000万円未満、または従業員5人以下、または取引金額8000万円未満)なら、「A x 0.5 + B x 0.5 と A の低い方」が評価額です。

(A) 純資産価額方法式

純資産価額方法式では「その会社を相続開始時に時価で売ったらいくらか?」で算定します。算定の式は次のとおりです。

時価純資産価額 - 法人税相当額

法人税相当額は、「(時価純資産価額 - 簿価純資産価額)x37%」で求めます。

なおそれぞれの言葉の意味は次のとおりです。

時価純資産価額・・・資産を時価で評価した価額 - 負債の価額

簿価純資産価額・・・資産を法人税法上の簿価で評価した価額 - 負債の価額

簿価は会計上の簿価ではなく、法人税法上の簿価を使います。

(B)類似業種批准方式

類似業種批准方式とはその会社と「似た」上場企業の株価をもとに算定します。「似た」というのがアバウトですが、そこには厳格なルールがあってかなり複雑な計算をします。

「似た」上場企業の株価の出し方もルールがありますが、ここではざっくり時価とします。この時価に「批准割合」と「調整額」を掛けてその会社の評価額に修正するイメージです。

「批准割合」の計算には、その会社の「1株あたり配当金額」(B)、「1株あたり利益金額」(C)、「1株あたり純資産金額」(D)、「似た」会社の「1株あたり配当金額」(B’)、「1株あたり利益金額」(C’)、「1株あたり純資産金額」(D’)の6個の要素が必要となります。なお、ここでB・C・Dの3つは計算上、資本金等の金額÷50円 で算出した株式数を使います(実際の発行数ではなく)。

「似た会社」のAとB’・C’・D’は、国税庁から発表される「類似業種株価等通達」に記載されているので、国税庁ホームページで検索して探しあてることになります。この際に業種が「大分類」「中分類」「小分類」に分かれて掲載されていますが、該当するものが「中」なら「大」を、「小」なら「中」の数字を使うことができます。少しでも評価額が下がるほうを選べるのです。

各要素の数字が決まったら、下記の算式に代入して類似業種批准方式による評価額を出します。

(C)配当還元方式(特例評価)

配当還元方式は同族株主以外の少数株主が持っている株式を評価する特例的な評価方法です。これらの株主は会社の経営には関与しておらず、原則的な評価方法で評価額を計算してしまうと、高くなりすぎて不公平ということで、「特例」という位置づけになっています。特例というだけあって、安い評価額になるので、配当還元方式が適用できそうな場合は、必ず適用するようにします。

評価方法自体は難しくなく、次の計算式になります。

評価額 = (1株あたりの過去2年の平均配当額)/ 10% x (1株あたりの資本金等の額) / 50円

ここでいう、「1株あたり」の株数は上記同様実際の発行株数でなく、法人税法上の資本金等の金額÷50円で出した数字です。

もし配当をしていない場合は、ゼロになってしまうので、この場合は1株あたり2.5円で評価することになります。

このように配当還元方式では評価額が下がる、すなわち贈与税・相続税が下がりますので、これを活用する節税テクニックというのも存在します。例えば従業員持ち株会を活用した方法などが知られていますが、専門的でありかつ妥当性を確保するためには長期に渡る準備期間が必要です。

以上、小さなビジネスオーナーのための、親父の会社(非上場)を継いだらいくらかかるのか?非上場企業株式の評価方法を3分でわかりやすく解説、という話題でした。もし、本格的に評価額の算定が必要な場合は、プロにお願いしましょう。下記の税理士ドットコム から相続に強い税理士の紹介を受けることができます。

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