高齢者と所得税・住民税に関する話題
目次
高齢者を扶養している場合の所得控除
高齢者を扶養している場合の高齢者とは70歳以上の方のことをいいます。70歳以上の高齢者を扶養していると、所得からより多くの所得控除を受けることができます。ここで適用可能な所得控除には二つあって、一つは配偶者控除(老人控除対象配偶者)、もう一つは扶養控除です。
老人控除対象配偶者の配偶者控除
配偶者控除の場合は、自分の配偶者が70歳以上のときに通常の配偶者控除38万円に代えて48万円を控除できます。例えば、奥様が70歳以上であれば配偶者控除が38万円ではなく48万円になる可能性があります。
ただし、本人の所得金額(収入ではありません)が900万円以下で、配偶者の所得金額(同じく収入ではありません)が38万円以下である必要があります。本人の所得金額が950万以下なら、配偶者控除は32万円に、1000万円以下なら16万円に低減されます。平成30年から1000万円超では配偶者控除は受けることができません。
また、70歳以上の配偶者が障がい者である場合には、配偶者控除の他に障がい者控除27万円(特別障がい者の場合は40万円、同居特別障がい者の場合は75万円)を控除することができます。
扶養控除
扶養控除の場合とは、たとえば親を扶養に入れる場合に適用されます。税金の計算上、「扶養に入れる」ためには生計を一にしていること、親の年齢が70歳以上であること、親の所得金額(収入ではありません)が38万円以下であることが必要です。
生計を一にしているとは、同居である必要はなく、別居でも仕送りによって生活を支えている場合には適用可能です。(ただし、その証明は必要です)
所得税の扶養控除の金額は、同居しているときは58万円、別居しているときは48万円、となっています。この金額が所得控除されます(税額控除ではありません)。また扶養控除は住民税の計算上も適用されて、同居しているときは45万円、別居しているときは38万円が所得控除されます。
なお、以上は「税金」についての話です。混同しやすい話として「公的医療保険」制度の話がありますが、こちらとは別ですので、ご注意ください。
年金所得者に対する所得税
年金収入は、通常、雑所得となります。公的年金等を受け取った場合の雑所得は、収入金額から公的年金等控除額を差し引いて計算します。そして、この公的年金等控除額が65歳以上かどうかでだいぶ変わる特徴があります。
公的年金の支給開始年齢が原則として65歳に引き上げられているため、それより前に受給開始すると、控除額は少なくなる(つまり所得税が高くなる)ようになっています。
例えば、年金額150万円の場合、65歳以上であれば、雑所得は
1,500,000 – 1,200,000 = 300,000円
ですが、65歳未満であれば、雑所得は
1,500,000×75% – 375,000 = 750,000円
となり、所得金額が倍以上違う設計になっています。65歳未満で年金を受給開始するとかなり不利です。
参考:国税庁ホームページ 公的年金等の課税関係
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1600.htm
年金所得者の確定申告
そもそも年金所得者は確定申告をする必要があるのか?というと、公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつ、公的年金等に係る雑所得以外の各種の所得金額が20万円以下である場合には、確定申告をする必要はありません。
逆に公的年金等の収入金額が400万円を越える場合、または公的年金等の収入金額は400万円以下でも家賃収入があるとか他の所得が20万円を超える場合は、確定申告が必要です。
ただし、確定申告する必要が無くても、医療費控除や寄附金控除を受けたい(税金を還付してほしい)といった場合には、確定(還付)申告をしなければなりません。また、公的年金でも一定の金額(65歳未満の場合は108万円、65歳以上の場合は158万円)を越えると源泉徴収されるのですが、会社員時代と違って年末調整されないので、自分で確定申告して精算する必要があります。
確定申告の要不要(損得)は毎年良く検討してみることをお勧めします。
年金受給者と住民税
年金受給者であっても年金を所得として住民税(県民税と市民税)がかかる場合があります。住民税は自治体によって異なる場合がありますが、原則として均等割(一律5,000円)と所得割(課税所得金額×10%-税額控除等)の合計額となります。
この均等割と所得割の両方が課されない、住民税が非課税となる所得金額(前年の)は、扶養家族が無い場合で35万円以下となります。これはすなわち65歳以上の場合では年金収入が155万円以下ということになります。
扶養家族が1人居る場合では、住民税が非課税となる所得金額(前年の)は、91万円以下となり、これはすなわち65歳以上の場合では年金収入が211万円以下ということになります。
本人が障害者や寡夫・寡婦(配偶者を亡くしている)の場合には、住民税が非課税となる所得金額(前年の)は、125万円以下となり、これはすなわち65歳以上の場合では年金収入が245万円以下ということになります。
このように年金受給者であっても収入金額と家族構成によって住民税が非課税になる場合とならない場合があります。住民税が課税となると社内保険庁等が年金から天引きで源泉徴収する仕組みとなっていますので、年金受給者が自ら自治体や金融機関に納めに出向く必要はありません。
また、所得金額によっては、所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告が必要、という場合もあります。注意しましょう。
詳しくは各自治体のホームページ等をご確認ください。
以上、高齢者を扶養している場合、または自分が高齢者である場合の所得税と住民税に関する話題でした。
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