普通に株式市場で売り買いできる株のことを、「上場株式等」といいます。株式を売って利益が出ると、それを「譲渡益」といって、所得税の課税対象となります。
先日米国の株式市場で株式を売却したのですが、その際に証券会社が行った「譲渡益」の計算方法が、日本のやり方と違っていて「あれ?」となりました。
この記事では、株式を売却した場合の「譲渡益」の計算方法について、説明します。
目次
米国で株式を売っても日本の税金がかかる
日本の居住者であれば米国で株式を売却したとしても日本の所得税がかかります。まあそのぶん米国では課税されません。これは日米間の租税条約によって決まっているのです。
譲渡益の計算方法がどう違っていたかと言うと、米国の証券会社ではどうやら先入先出法と言われる方法に基づいて取得原価を計算しているようです。おそらく税法の違いによるものと推察されます。
譲渡益の計算方法
取得原価というのは、その売却した株式を買った時にいくらで買ったかと言う元手を指します。つまり譲渡益は次の式で求めることができます。
売却金額 - 取得原価 - 手数料 = 譲渡益
ここで証券会社の手数料が必要な場合には手数料は差し引くことができます。取得原価と手数料を引いた結果がマイナスになればそれは譲渡損となり他の売却時の譲渡益と通算して打ち消すことができます。当然ですが、もし通算した結果も譲渡損になれば課税はされません。
総平均法に準ずる方法
譲渡益が大きければ税金も大きくなってしまいますので、なるべく取得原価が大きい方が有利ということになります。このため取得原価の計算方法は、さじ加減が入らないように所得税法できっちり決まっています。それが「総平均法に準ずる方法」というものです。
国税庁ホームページによると、次の計算方法となります。以下引用です。
株式等の譲渡による譲渡所得の金額及び雑所得の金額の計算において、同一銘柄の株式等を2回以上にわたって購入し、その株式等の一部を譲渡した場合の取得費は、総平均法に準ずる方法によって求めた1単位当たりの金額を基に計算します。総平均法に準ずる方法とは、株式等をその種類及び銘柄の異なるごとに区分して、その種類等の同じものについて次の算式により計算する方法を言います。
(算式)
(A+B)÷(C+D)=1単位当たりの金額
A=株式等を最初に購入した時(その後既にその株式等を譲渡している場合には、直前の譲渡の時)の購入価額の総額
B=株式等を最初に購入した後(その後既にその株式等を譲渡している場合には、直前の譲渡の後)から今回の譲渡の時までの購入価額の総額
C=Aに係る株式等の総数
D=Bに係る株式等の総数
ずいぶんややこしく見えますが、要するに基本は総平均法です。総平均法というのは、買った株式の総額を全部足して、買った株式の総株式数で割って単価(1株あたり)を出す考え方です。この単価に売った株式数をかけると取得原価が出てきます。
「準ずる」と言っている部分は、2回目以降の売却については1回目の売却時点で計算した単価x売り残りの株式数と、1回目の売却時点以降に新たに取得した株式の総額を、その時点で持っている株式数で割って単価を出すということです。
分かりやすく言えば(分かりにくいかもしれませんが)、計算の基本は総平均法なのですがすでに売ってしまった部分の取得原価は除くという発想方法になります。考えた人は頭がいいと思います。
取得原価の計算方法が違う
これに対して米国では先入先出法を使うようですので、株価の推移によってば取得原価が大きく変わってきてしまいます。先入先出法では購入した株式を購入した順番に売ったと考えて、取得原価を集計します。
私が今回売却した株式は当初の株価が低かったために、先入先出法で計算してしまうと取得原価が小さくなってしまい、結果として譲渡益が大きくなることがわかりました。
このまま確定申告しては不利ですので、日本の税法に合わせて総平均法に準ずる方法で計算し直して税額を譲渡益を算出しています。
総平均法に準ずる方法を知らないと損する場合も
これを知らずに、米国の証券会社から送られてくる資料だけを見て、確定申告してしまうと非常にもったいないこととなります。
もし同じような境遇の方がいましたら、ぜひ取得原価が正しく計算されているか、どうかチェックしてみることをお勧めします。 ちょっとよく分からないよ、という方はご相談ください。
必ず確定申告をしましょう
またこのようにして外国の株式市場で株式を売却した場合には、日本の証券会社を使った売却とは異なり、自分で分離課税の確定申告をする必要があります。
日本の証券口座であれば、特定口座(証券会社が税金を払ってくれる)や、NISA口座のようにそもそも課税されないものがありますが、米国の証券会社を使って売却した場合にはそのようなサービスはありませんので、自ら確定申告をするということになります。
その場合には上場株式等の譲渡益にかかる所得税として20%の定率課税が行われます。外国だから分からないかな、と思って申告しないと、ほぼ確実に税務署にバレます。
今の時代は租税当局も国際ネットワークを張りめぐらしていますので、無視して通り過ぎることはできません。必ず確定申告をしないと、あとでペナルティを課されて痛い目にあいますのでご注意ください。
以上、外国の市場で株を売った時の所得税、取得原価の計算にご注意ください、という話題でした。無申告だと忘れたころに税務署がやってくるので怖いです。よく分からない方はこちらより税理士に相談されると良いです。
━━…━━…━━…━━…━━…━━
サンクプランズ・コンサルティング
━━…━━…━━…━━…━━…━━
個人・中小事業者のお客様を対象に会計サービス、コンサルティング、デジタルコンテンツ販売、セミナーなどを行っています。
詳しいプロフィールを見る
会計サービスについて
コンサルティングについて
デジタルコンテンツ販売について
セミナーについて
お問合わせはこちら