【やさしい経理(1)】会計帳簿の作成義務と会計ソフト【開業したての個人事業主・社長へ】

この記事は「開業したばかりなのですが会計帳簿とは何ですか?なぜ必要なのでしょうか?どうやって作成すれば良いですか?」といった疑問に答えます。



起業したら待っている会計帳簿の作成義務

個人事業主・フリーランスにしろ、法人の「ひとり社長」にしろ、起業して事業を開始したら法律の定めに従って会計帳簿を作成する義務を負うことになります。本業だけでも忙しいのに会計帳簿の作成などという未経験のことまでしなければならなくなるのです。





会計帳簿を作成する方法

この問題を素早く解決できる方法は主に2つあります。ひとつは会計ソフトを利用する方法、もうひとつが税理士に依頼する方法です。

この2つの違いはコストと手間です。クラウド会計の「freee」弥生会計の「弥生会計クラウド」といった会計ソフトを導入すれば、freeeの場合年額23,760円から、弥生クラウドの場合26,000円から(いずれも法人の場合)と安価に済みますが、自分で記帳し管理する手間がかかります。

ただし銀行口座の履歴などから自動入力する機能も改善されて、だいぶ楽に記帳できるようになっています。詳しくは以下より公式サイトをご参照ください。

一方税理士に依頼する場合、以下の「ベンチャーライフ」のような紹介会社を使えば月額15,000円程度から税理士に丸投げすることも可能です。費用がかかりますが、自分で入力する手間はありません。開業したてであればなるべく費用をかけたくないので、こういった格安サービスもお勧めです。

会計ソフトなら会計帳簿は自動作成されて必要に応じて印刷するだけですし、税理士に依頼すれば税理士のほうで会計帳簿を準備してくれます。どちらを選ぶかはそれぞれの事情によるでしょう。



会計帳簿とは?

そもそも会計帳簿とはどんなものか?というと、次のように様々なものがあります。

  • 仕訳帳
  • 総勘定元帳
  • 現金出納帳
  • 売上帳
  • 仕入帳
  • 売掛金元帳(得意先元帳)
  • 買掛金元帳(仕入先元帳)
  • 固定資産台帳

このうち、仕訳帳と総勘定元帳は「主要簿」といって法人の場合は会社法で作成が義務付けられています。必ず作成して備え付ける必要があります。これは個人事業主の場合でも青色申告の要件となっており、同様に必要となります。

それ以外は「補助簿」といって作成の義務は無く、それぞれの事業の内容に合わせて作成するものです。中でも「現金出納帳」や「固定資産台帳」は多くの場合作成されるものです。

また、これ以外にも税理士が日記帳をつけてください、とお願いする場合があります。日記帳とは子供の頃つけた「お小遣い帳」のようなもので、日付・金額・簡単なメモ程度のものです。

これがあると税理士側での毎月の記帳や確認がやり易く、「この出費は何ですか?」といったやり取りを減らすことができる効果があります。お互いのスムーズな仕事のために作成した方が良いでしょう。

以下に主な会計帳簿について説明します。



仕訳帳

事業で行われる様々な取引を記述するルールを簿記といいます。簿記のルールに従って記述するのが「仕訳(しわけ)」です。

一般的には簿記の中でも「複式簿記」というルールが使われており、例えば「ノートを100円で買った」という取引は次の仕訳で表されます。

事務用品費100現金100

この仕訳とその取引日、摘要(取引相手や目的などのメモ)を記録していくのが仕訳帳です。仕訳帳を見れば、その事業の全取引が分かることになり、前述のとおり必ず作成する必要があります。

会計ソフトでは仕訳を直接記録するタイプと、以下の補助簿を記録して自動的に仕訳帳を作成するタイプとがあります。私が作成して無料で提供している「シンプル経理ツール」は仕訳を直接記録するタイプです。このタイプの場合、簿記の知識が多少必要となりますが、慣れれば扱いやすいものです。



総勘定元帳

総勘定元帳は各勘定科目ごとに仕訳帳から仕訳を抽出したものです。仕訳帳が単に時系列での取引の流れであるのに対して、総勘定元帳は特定の勘定科目に絞って取引を抽出したイメージです。

上の例では「現金」勘定科目の取引が1年間のうち「いつ」「いくら」発生したのか、結果として残高がいくらなのか、を概観することができるようになります。

特定の勘定科目について分析したり追跡したりするときに役に立ち、総勘定元帳は必ず作成する必要があります。





現金出納帳

今の世の中はキャッシュレス化が進んでいますが、まだまだ現金で直接やりとりする取引も多くあります。この現金の出し入れだけに特化して記録する帳簿が現金出納帳です。

現金出納帳は、日付、相手の勘定科目、金額、摘要を仕訳帳から抽出して、残高を記載するのが一般的です。

現金出納帳を作る最大のメリットはこの「残高」にあります。銀行預金であれば、いつでも口座残高を確認できますが、現金の場合「今手元にいくら持っているのか?」が意外と分かりにくいものです。現金出納帳を見ることで一目で現金の残高を把握することができます。

個人事業主の場合は特に「個人の現金」と「事業の現金」がごちゃ混ぜになりやすく、これらを分けて整理する意味でも役に立ちます。



売上帳・仕入帳

文字通り売上と仕入についてその日付、商品名、個数、単価、金額、摘要(相手方名など)といった情報を記載していきます。仕訳帳よりも詳細な情報を記載します。

これも売上や仕入の概観性一覧性を良くするためのものです。持続化給付金の申請で「売上台帳」の提出が求められましたが、普段から売上帳を作っておけば、そのまま提出して使うことができました。

仕入は商品販売などの事業でないと発生しませんが、売上は全事業に共通なので、売上帳は準備しておいたほうが良いです。





売掛金元帳(得意先元帳)・買掛金元帳(仕入先元帳)

売上や仕入のうち、「掛け取引」となって後日入金・出金する未収・未払のものを管理するために使います。売掛金(未収金)と買掛金(未払金)をそれぞれ得意先・仕入先ごとにまとめて記載することで、その得意先・仕入先に対して未回収または未払いとなっている金額がいくらなのか?を把握することができます。

得意先・仕入先に倒産などのリスクが高まったときに迅速に分析できるメリットがありますが、得意先・仕入先の数が多くなければ、特に作成しなくても良いものです。



固定資産台帳

自動車や備品といった固定資産は決算において減価償却の対象となり、また固定資産税の対象となりますので台帳を作って管理します。

各固定資産ごとの資産名(例:自動車の車種やナンバー)、資産の種類(例:車両)、 取得日、取得価額、償却方法(例:定額法)、法定償却年数、償却率、減価償却費、期末残高、といった情報を記載します。

以下の記事で紹介したように令和3年についてはコロナ対策として固定資産税の減免措置があります。その際に固定資産台帳があれば手続きが速いですので、もし台帳の準備がなければ早めに準備しておきましょう。



以上、会計帳簿の仕組みと会計ソフト、という話題でした。最低でも「仕訳帳」と「総勘定元帳」は法的に必要ですので、ここは外さないようにしましょう。一般論として起業したばかりの個人事業主やひとり社長にとって最適解としては、やはり税理士に丸投げすることです。ある程度慣れてきた時点でクラウド会計ソフトなどで自分で経理し、会計帳簿も自動作成するという方法があります。慣れるまではミスが怖いので、税理士にお願いすることをお勧めします。

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