【やさしい経理(2)】 年(事業年度)の開始のときに行う経理【開業と開始仕訳】

この記事は「いよいよ事業をスタートしますが、経理はどのように開始したら良いでしょうか?始め方が分かりません」といった疑問に答えます。



年(事業年度)の開始のときに行う経理

開業してさて事業を始めましょうとなった場合に、「経理」はどのように開始したらよいでしょうか? いきなり取引の仕訳から始めるのかと言うとそうではありません。

まず開始手続きがあるのでそこから始めることになります。経理の開始手続きについて以下に説明します。





開業時の仕訳

事業を開業したその瞬間には、その事業で扱うお金は一銭もないという状態からスタートします。個人事業や会社といった言わば「箱」だけがある状態です。

そこでこの箱にお金を入れてあげるという取引をまず仕訳します。 

個人事業主であれば次のような仕訳をします。

普通預金1,000,000元入金1,000,000

この元入金(もといれきん)というのは会社の資本金に相当するいわゆる「元手」です。上の例では100万円というお金を事業主が事業に拠出したという意味になります。これで100万円を使って事業を開始することができます。 

法人であった場合も同様な考え方で次のような仕訳をします。

普通預金1,000,000資本金1,000,000

つまり資本金100万円で会社を設立しましたという意味になります。この100万円を使って会社の取引がスタートすることになります。

また、開業時には金融機関から事業資金を借り入れることが多いです。多くの起業者が利用するのが政府系金融機関の日本政策金融公庫の「新規開業資金(新企業育成貸付)」です。

個人でも法人でも低金利で投資資金や運転資金の融資を受けることができます。

例えば1千万円の融資を受けた場合には、次のように仕訳をします。

普通預金10,000,000借入金10,000,000

これ以外にも親族や第三者から資金を得て開業するパターンもあります。ですが、基本的には上記と同じ仕訳となり、その方からの出資であれば「資本金」、借用書を書いた借り入れであれば「借入金」となります。

さらに、個人で所有していた固定資産を法人名義に変更して事業の用に供したときは「現物による出資」と考えて、次のように仕訳をします。

車両1,500,000資本金1,500,000

この仕訳は今まで個人で持っていた自動車の名義を法人に変更した場合です。価格(取得価額といいます)は新車購入価格から一定の償却費(減価した価値)を差し引いて求めた金額になります。



開業前の費用の扱い

ここでふと疑問に思うことは「開業前にも色々な出費があり費用がかかっているのでそれをどう扱うのだろうか?」ということです。 例えば、株式会社の場合、定款認証のために公証人の手数料として5万円、印紙代として4万円がかかりますし、法務局で行う法人登記の登録免許税が15万円ほどかかります。

こういった費用は個人の持ち出しになってしまい会社の経費にできないのか?と言うとそうではなく、開業費として後からまとめて経理することができます。開業のために必要となった費用は次の仕訳をします。 

開業費240,000現金240,000

この「開業費」は「費」となっていますが、実は費用ではなく「繰延資産」として扱います。この意味は開業から数年にわたって効果のある費用なので、効果の及ぶ期間で少しずつ費用化してくださいということです。こういった性質の費用を繰延資産といいます。

一般には開業費は5年で均等に費用化されます(この費用化のことを償却といいます)。つまり上の例では決済時に1年あたり48,000円ずつ償却します。

ただし、繰延資産でも開業費については「任意償却」が認められており、1年目で全額償却してしまうこともできます。いつ開業費を償却するかは、利益・損失の状況によって自由に決めることができます。





開始仕訳

ここまでは開業した年(事業年度)の話でしたが、 例えば2年目(2期目)だったらどのように始めるか、が次の話題です。

1年目(1期目)が終了するとその年(事業年度)の収益(売上)と費用(経費)を集計して、利益や損失の金額が確定されます。ですが、資産や負債、資本金(元入金)については残高が残りその次の年へと引き継がれます

つまりこれらの一定の勘定科目については、2年目(2期目)以降は、開始にあたって初期設定をしなければならないということになります。この仕訳のことを「開始仕訳」といいます。



期首残高の設定

開始仕訳でまず必要なのは期首残高の設定です。

2年目(2期目)以降に引き継がれていく勘定科目には次のものがありますので、これらの期首の残高を設定する仕訳をします。

  • 現金
  • 普通預金
  • 固定資産(土地、建物、備品、車両など)
  • 繰延資産
  • 借入金
  • 資本金・元入金

仕訳自体は簡単で、「期首残高」を相手科目として、それぞれ次のように期首時点での残高(有高)を仕訳します。例えば、期首の時点で現金が145,633円あった場合には、次のようになります。この金額は前期決算書の貸借対照表に記載されている金額そのままです。

現金145,633期首残高145,633

同様に、普通預金の期首残高が557,480円なら、次のように仕訳します。この金額は口座残高(通帳の数字)とも一致している必要があります。

普通預金557,480期首残高557,480

それ以外についても次のように仕訳します。開業費は1年目に償却した残高です。車両も1年目に減価償却した残高です。借入金は返済した元本を引いた金額です。いずれも貸借対照表から持ってくるだけです。

開業費192,000期首残高192,000
車両1,250,000期首残高1,250,000
期首残高9,880,000借入金9,880,000


経過勘定の扱い

開始仕訳についてあともう1点注意すべき点があります。それが「経過勘定」の扱いです。(広義の)経過勘定とは何かというと、一時的に使う仮置き場のような勘定科目です。

例えば、何か商品やサービスを期末に売ったとして、その代金がまだ未収であれば次のように「未収金」(または「売掛金」)という勘定を使って仕訳します。

未収金31,000売上31,000

まだ代金を受け取っていませんので、現金や普通預金ではなく未収金とします。この未収金が仮置き場としての経過勘定です。売上が期末に計上され場合、翌期になって代金を回収したら次の仕訳をして、未収金はゼロになります。

普通預金31,000未収金31,000

つまり、未収金があるなら、開始仕訳においてその期首残高を設定しなければいけません。これは次のように仕訳します。

未収金31,000期首残高31,000

なぜ、こんな面倒なことをする必要があるのか?というと、「売上」のような収益は発生した年(事業年度)に計上しなければいけないルールになっているからです。代金を受け取った年(事業年度)ではなく、発生の年(事業年度)です。これを発生主義といいます。

このためいったん「未収金」という仮置き場を用意して、売上を計上し、その後代金を受け取ったときに仮置き場をゼロにする、ということを行います。

同じことが「費用」にも言えます。費用も発生主義で認識するので、年(事業年度)をまたいだ場合は、「未払金」(または買掛金)のような仮置き場にいったん置くということをします。

このような仮置き場となる経過勘定には次のようなものがあり、いずれも発生と入手金のタイミングのずれを吸収するために使います。それぞれ開始仕訳においてその期首残高を設定し、いずれも金額は前期の貸借対照表から持ってくれば良いです。

  • 未収金(売掛金)・未払金(買掛金)
  • 前払金・未払金
  • 前受金
  • 預り金
  • 未収利息




以上、年(事業年度)の開始のときに行う経理、という話題でした。開始仕訳について意外と知らない方も多く最初につまずいてしまう、ということがよくあります。開業時とあとは毎年(毎期)1回だけの作業ですが、作業自体は簡単ですので、頭の片隅に置いておくと便利です。

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