【法人成り】個人事業主が事業を「ひとり社長」の会社にする方法【必要な手続きが分かります】

この記事は「これまで個人事業主・フリーランスでやってきたのですが、会社にするためにはどんな手続きが必要ですか?」といった疑問に答えます。



法人成りにはメリットがあります

個人事業主またはフリーランスという立場で事業を開始して、その後「会社」に変更することを「法人成り」すると言います。法人成りをするメリットは、社会的な信用を得るといったこともありますが、一番大きいのは節税効果です。

場合によって異なるので必ずそうなるとは言えませんが、同じ事業をしていても個人事業主として行うよりも「ひとり社長」の会社として行うほうが税金や社会保険料といった出費を抑えることができます。個々の場合にどのくらいの費用削減効果があるかはシュミレーションしてみる必要があります。そのやり方は以下の記事に書きました。



個人事業主が法人成りする方法

今回はシュミレーションの結果、法人成りを決心したという前提で、個人事業主がひとり社長で法人成りする場合の手続きについてご紹介します。

手続きの流れは実施の順番で大まかに言うと次のようなものです。

  • 会社設立の手続き
  • 社会保険関係の手続き
  • 税金関係の手続き
  • 銀行口座の開設手続き
  • その他の手続き

以下にそれぞれ説明します。



会社設立の手続き

法人の形態を決める

会社設立にあたっては、株式会社を作るのか合同会社を作るのか、もしくはNPO法人や一般社団法人といった形態にするのか、という選択から始まります。事業の内容により最適な形態を選ぶようにしましょう。詳しくは以下の記事を参考にしてください。

多くの事業では株式会社か合同会社を選ぶでしょう。この場合、まずは出資者(株主)と代表者(役員)を決める必要があります。ひとり社長という前提では出資者=代表者ということになります。

法人の所在地を決める

次に会社の住所を決めます。自宅をそのまま会社の住所にする方が多いかと思いますが、ここで注意すべきは賃貸住宅の場合にはそのまま法人の所在地とすることが認めらない場合があるということです。

賃貸契約を確認して、法人の所在地として登記しても良いかどうか大家さんに交渉する必要があります。

また、賃貸の契約者を個人から法人に名義変更をしても差し支えないかも大家さんに確認します。もし法人契約が認められた場合には家賃は法人の費用として認められますので、節税効果があります。

ただし、社長がその賃貸住宅に住み続けていますので、社長は社宅負担金を会社に対して払うということが必要となります。会社に負担させてタダで住んでいると税務署から指摘されますので注意しましょう。

代表者印(実印)の作成

今後の手続きに向けて、代表者印(実印)の作成をします。代表者印はネット上のはんこ屋に注文して安く作れば充分です。印鑑ができたら社長個人の実印と役所で印鑑証明を入手し、法務局に行って印鑑届書を提出し実印の登録を受けます。

定款の作成と認証

次に会社の定款(ていかん)を作成し公証人役場で認証を受けます。定款とは会社の憲法のようなもので、法人登記する際に必要となります。定款は司法書士に頼むと作ってくれますが、それなりに高くつく(数万円)ので、雛形を参考に自分で作ることもできます。

雛形はネット検索で出てきますが、自分の場合はKnowHows(ノウハウズ)というサイトを良く利用します。ユーザー登録(無料)すると弁護士が監修した各種雛形を無料でダウンロードすることが出来てこの先も便利です。公式サイトにてご確認ください。

定款を作ったら、株式会社の場合は公証人役場に行って認証を受けます(手数料プラス印紙代がかかります)。定款を紙でなくデータファイルのままにしておけば印紙代はかかりません。また、合同会社なら定款の認証自体が不要となり費用もかかりません。

法人登記する

定款の認証を受けたら、いよいよ法務局に行って法人登記します。登記が終わると法人が設立されたことになります。登記の日が設立の日です。

法務局ではこの先各所で使う法人登記簿謄本も合わせて取得しておきます。



社会保険関係の手続き

会社を設立したら、設立の日から5日以内に年金事務所に行って、社会保険関係の手続きをします。この時間がタイトなので気をつけましょう。

健康保険と厚生年金の申請

次の3つの届出書に法人登記簿謄本を添えて、健康保険(多くの場合は協会けんぽ)と厚生年金に加入申し込みします。

  • 健康保険・厚生年金保険新規適用届
  • 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
  • 健康保険被扶養者(異動)届 (ひとり社長の家族について届け出ます)


税金関係の手続き

税金関係は国税については税務署、県税については県税事務所、市税については市役所がそれぞれ手続き先となります。設立から2ヵ月以内に以下の届出を行う必要があります。ここも時間がタイトなので気をつけましょう。

主に次の4つの届出を所轄の税務署に出します。消費税関係などをこれ以外にも届出が必要となる場合がありますので、税理士のアドバイスを受けるようにしてください。

  • 法人設立届出書
  • 個人事業の廃業届出書(個人について)
  • 所得税の青色申告の取りやめ届出書(個人について)
  • 青色申告の承認申請書(法人について)

法人設立届出書は県税や市税についても必要ですのでそれぞれ手続きします。



銀行口座の開設手続き

会社設立において意外なハードルとなるのが銀行口座の開設手続きです。個人の場合と違って法人の銀行口座開設はなかなか承認を受けることができません。審査があるので2週間くらいかかるのが普通です。

メガバンクよりは地方銀行や地元の信用組合といったところの方が法人名義の口座開設が容易ですし、後々の融資の相談などもしやすいので、そういった金融機関へ行きましょう。

ただ、法人名義の銀行口座は必ず必要というわけではありません。取引先から指摘されない限り、しばらくの間個人名義の銀行口座を使っていても特に問題はありません。

なお、法人名義の銀行口座を設立するには法人登記簿謄本に加えて法人設立届出書の控えも必要となります。従って税金関係の手続きをした後でなければ口座開設の手続きをすることができません。



その他の手続き

上記の手続きに加えて法人成りしたときにはさらに追加の手続きが必要になる場合があります。例えば業種別の許認可手続きがあります。飲食業なら保健所、建設業なら都道府県に法人として許認可の手続きをする必要があります。

また営業車両などの固定資産名義を個人から法人に変える場合にはこの名義変更手続きも必要となります。

さらに個人事業主としてクラウド会計ソフトを使っていた場合には、ライセンス契約を個人向けから法人向けに変更する必要もあります。 例えば「やよいの青色申告オンライン」は個人向けなので、法人向けの「弥生会計オンライン」に変更する必要があります。

弥生会計オンラインは記事執筆時点で初年度無料キャンペーンを行っています。 セルフプランが1年間26,000円のところ2020年12月31日までの申し込みで1年間無料で使えるお得なキャンペーンです。詳しくは以下の公式サイトからご確認ください。



以上、個人事業主が事業を「ひとり社長」の会社にする方法、という話題でした。法人成りのデメリットは株主総会等の運営手続きが複雑になること、決算と法人税申告が所得税に比べて難しいことです。このため法人成りに伴って「税理士」をつけることをお勧めします。コストはかかっても税理士のサポートを受けて本来のビジネスをさらに伸ばしていけば充分に元がとれるものです。


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