【設備投資・事業承継】中小企業経営強化税制について整理

この記事は「中小企業経営強化税制とはどのような内容ですか?適用するための注意点とは?」といった疑問に答えます。

中小企業経営強化税制とは

「中小企業経営強化税制」とは中小企業や個人事業主が設備投資や事業承継を行った場合に税制面で優遇する制度です。設備投資の場合は歴史的な経緯で似たような制度が2つあり、かつ対象も様々であることから割と見落としやすいものです。そこで今回はその内容を整理しておきたいと思います。





対象その1:設備投資の場合

中小企業者等が一定の設備投資をすると減価償却費を上乗せして所得を減らし税額を低くしたり、税額を直接マイナスしたりすること(税額控除)ができます。いずれも設備投資をして経済の活性化に貢献した中小企業者にご褒美をあげるものです。

設備投資の対象としては機械装置、ソフトウエア、備品や工具、建物附属設備です。機械装置や備品工具は製造業の方が工場で使うようなイメージです。ソフトウエアはパッケージソフトだけでなくホームページの制作費なども含みます。建物附属設備はアパート経営の方が例えば駐輪場のような設備を付ける場合も含みます。私のお客様では民泊にコインランドリー設備を付けたような場合が建物附属設備に該当した事例があります。

この場合、使える税制には2つあり、ひとつは中小企業経営強化税制で、もう一つは中小企業投資促進税制です。この2つの違いは下の図の通りですが、最大の違いは中小企業経営強化税制では原則として投資する前に経済産業局という役所から経営力向上計画の認定を受けておく必要があるということです。

中小企業経営強化税制

(出典:中小企業庁ホームページ)

認定を受けておけば、即時償却といって全額をいっぺんに減価償却費に計上できたり(その分所得を減らせる)、税額控除も最大10%までという特典があります。

認定を受けていないと、減価償却費は30%の特別償却しか上積みできず、税額控除も最大7%までの特典になります。

認定の有無以外の注意点としては、2つの税制で対象となる資産の種類が違うことです。中小企業投資促進税制では機械装置とソフトウエアだけが対象になっています。また、もう一つの注意点としては、対象者となる中小事業者には個人事業主も含まれるという点です。個人事業主でも認定を受ければ中小企業経営強化税制の適用を受けることができます。





対象その2:事業承継の場合

経営者の高齢化が進む中、事業承継ができずに廃業してしまうという事例が多くなっています。こうした状況に対する支援策として、事業承継により土地や建物を取得した場合の不動産取得税を軽減する措置があります。 

不動産取得税とは、不動産を買うというその資金力に担税力を見出して都道府県が課税する税金で、不動産を取得(登記)してから半年後くらいに納税通知書が来るものです。

この不動産取得税の軽減措置も中小企業経営強化税制の一部で、設備投資と同様に事前に経営力向上計画の認定を受けておく必要があります。認定を受けると以下の図のような特例の適用があります。

中小企業経営強化税制

(出典:中小企業庁ホームページ)

不動産取得税というどちらかというと隅っこの論点なので見落としがちですが、元の不動産が高額の場合それなりの金額になるので注意が必要です。

注意すべき点としては、合併、会社分割又は事業譲渡を通じて他の中小企業者等から不動産を含む事業用資産等を取得する場合に限られるという点です。例えば個人事業主の法人成りに際して行われる不動産の譲渡は含まれません(中小企業庁に電話して確認しました)。

さらに事業承継に関して、中小企業経営強化税制では「中小企業事業再編投資損失準備金」の損金算入を認めています。これは事業承継を行うと買収資金などで一時的に多額の現預金を支払うことで経営上のリスクが生じてしまうため、そのリスクヘッジとして準備金を損金算入して所得を減らし法人税を少なくして良いですよ、というものです。これは法人税だけの扱いに限られます。

やはり事前に経営力向上計画の認定を受けておく必要があり、これも知っていると知らないとは大違いになるものなので注意が必要です。

中小企業等経営強化法に基づく支援措置には他にも金融支援や法的支援がありますが、ここでは割愛します。





以上、中小企業経営強化税制について整理という話題でした。詳しい情報は、中小企業庁の以下のページが詳しいです。手引きなど見て頂ければと思います。分からない場合は「中小企業税制サポートセンター」に電話すると丁寧に教えてもらえます。

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/index.html

当事務所では「経営革新等支援機関」の認定を受けて、経営力向上計画の作成をサポートしています。お力になれることがありましたら、以下よりご相談頂ければと思います。