【やさしい相続税(1)】ざっくり分かる相続税の基礎の基礎【まずはこれを知っておこう】



この記事は「相続のことが心配です。基本から相続税を理解したいのですが、何から始めれば良いでしょうか?」といった疑問に答えます。



相続とは?

相続とは亡くなった人がいて、その人の財産を引き継ぐことをいいます。亡くなった人のことを「被相続人」と呼び、財産を引き継ぐ人のことを「相続人」と呼ぶ決まりになっています。

財産を引き継いだということは、「タダで」もらう訳なので、語弊はありますが「得した」ことになります。この「得した」という事実に着目してその一部を税金として国に払ってください、というのが「相続税」です。

つまり、たとえ相続があったとしても、「得していない」なら相続税はかかってきません。得しないパターンとは次ような場合です。

  • 「相続人」にならなかった、つまり何ももらっていない場合
  • 得したけど、その金額が少なかった場合
  • 相続の結果、逆に損した場合(後述します)

このため、相続税を考える時には、次のことを明確にすることが重要となります。

  • だれが「被相続人」なのか?
  • だれが「相続人」なのか?
  • どんな財産をもらったのか?その価値はいくらなのか?

こういった諸事情を考慮して本当に得しているかどうか、相続税を払う必要があるのかどうか、払うならいくらなのか?を法令に従って明らかにしていくことになります。





相続税とはいくらぐらい払うものなのか?

相続税は2015年に大きな法改正があり、課税の対象となる人が増えたと言われています。相続税は相続財産の価格が一定の金額以下であれば課されることがありませんが、その基準となる金額が引き下げられたため、従来であれば相続税を払う必要なかった人が、新たに課税されることになったのです。

とはいえ、実際には発生した相続の10%ぐらいで相続税の申告が必要になっていると言われます。つまり、相続はあったけど、何ももらっていない、金額が少なかった(相続税はかかからない)人が圧倒多数です。

また、申告したとしても税額がゼロとなる場合がありますから、実際に相続税を納めている人は更に少ないということになります。 

では相続税を払う場合には、いくらぐらい払うものなのでしょうか?

国税庁の統計資料(平成29年)によると、相続において相続財産の金額(課税価格)が5千万円超1億円以下であった層が最も多いのですが、その場合相続人1人あたりの納税額は約75万円です。

ですが、これが次に多い層である3億円超5億円以下になると、1人あたりの納税額は約2,000万円となっています。まあ3億円超を「タダで」もらうわけですから、2,000万円は妥当な金額かもしれませんが、いざ払うとなるとかなりの負担感です。

特に相続税は現金による一括納付が基本ですので、これだけの現金を用意しなければなりません。

また、同資料によると平成29年に100億円超の相続を受けた人も50人ほどおり、こうなると相続人1人あたりの納税額は約31億円となっています。ほとんど異世界ですね。 



財産とは?

次に「財産」について説明します。一般に相続財産と言うと思いつくのは預貯金などの金融資産と自宅などの不動産です。

実際にこれがメインですが、すべてではありません。この他にも例えば有価証券がありますし生命保険や自動車、絵画、骨董品、ゴルフ会員権といったものも財産です。

また有価証券の中には上場株式だけでなく、非上場株式もあります。中小企業の多くの場合は株式を上場していませんので、非上場株式ということになり、上場株式のように時価がはっきりしていません。被相続人が中小企業の社長であったときに、その非上場株式の財産価値がいくらなのかは常に難しいポイントです。

さらにこれらだけでなく、借入金やローンといった負債も相続財産と考えます。預貯金がプラスの財産とするなら、借入金はマイナスの財産という訳です。

そして相続税を計算する上においては、このプラスとマイナスを相殺して相続財産の純額を求めることになります。もしもマイナスの方が金額が大きい場合はどうなるのか?というと、上述に照らせば「得して」いない訳ですから相続税がかからないということになります(申告も不要です)。





相続の放棄とは?

前述のように相続ではプラスの財産だけでなくマイナスの財産も引き継ぎます。被相続人に借入金があった時は、その返済義務が相続人に引き継がれてしまうのです。

このため、もしもプラスの財産よりもマイナスの財産の方が大きければ、相続人は相続税は払う必要はありませんが、被相続人が残した借金を返さなければいけないということになります。

こうなると完全に「もらい事故」という感じになり、たまったものではない話です。

そこでこのような場合に民法では2つの逃げ道を用意しています。

ひとつは「限定承認」という方法です。限定承認とはプラスの財産の範囲でのみマイナスの財産を引き継ぎます、という限定的な相続をすることです。

つまりプラスの財産でマイナスの財産を返済し、それで全部チャラにすることができます。お金を貸した方としては取りっぱぐれになってしまうのですが、相続人を守るために民法が認めている制度です。ただし限定承認する場合には相続人が全員で合意して裁判所に申し立てる必要があります。

もう一つの逃げ道は「相続放棄」という方法です。相続放棄とは、プラスもマイナスも両方の財産を一切引き継ぎません、ということです。これにより負債を引き継ぐことはありません。

相続の放棄は、放棄する本人がひとりで決めて家庭裁判所に手続きをするだけで済ませることができます。他の相続人の同意は必要ありません。

限定承認にしろ相続放棄にしろ、相続の開始を知ってから3ヶ月以内に裁判所で手続きが必要です。これをやらずに3ヶ月が経過すると自動的に財産を引き継いだことになってしまうので注意が必要です。 



相続税は自分で申告できるか?

相続税の申告は相続の開始があってから10ヶ月以内に各相続人が税務署に行わなければなりません。よくある質問は、税理士に頼ることなく自分で申告できますか?というものです。

この答えは「場合によります」としか言いようがありません。

非常にシンプルな場合(相続人が1-2名で財産が金融資産と自宅だけなど)で財産の金額も小さい場合であれば、市販の書籍などを参考にしてご自身で申告することもできるかもしれません。あるいは、税理士に丸投げするのではなく単発相談の形でコンサルティングを受けつつ自分で申告するということも可能かと思います。

シンプルではない場合つまり相続人の数が多い場合、その関係性が複雑な場合、特殊な財産(山林や農地)がある場合、財産の金額が高額である場合、などは税理士(場合によっては弁護士も)に依頼する方が無難です。

これは問題の難易度が高いからだけでなく、10ヶ月以内に申告しなければいけないというタイムレースの側面があるからです。問題がもつれているうちに時間切れというケースがあるのです。 






以上、ざっくり分かる相続税の基礎の基礎、という話題でした。まずはこちらの内容で相続税がどんなものなのか?なんとなく分かって頂ければ幸いです。親の財産を自分が相続するパターンだけでなく、自分の財産を子供に相続するパターンも視野にいれて、ご自身の「相続プラン」を考え始めましょう。

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