この記事は「これからひとりで起業するのですが、そんな自分にも使える資金調達の方法はありますか?」といった疑問に答えます。
目次
創業時の資金調達方法
税理士という仕事柄、お客様の「創業」に立ち会うことが多いです。お客様によって事情は様々で、個人事業主としてある程度基礎があって法人成りするパターンや、まったくゼロから会社を登記して始めるパターンなどいろいろです。
どういったパターンにせよ事業を始めるにあたってどうしても一定の資金は必要になるものです。自己資金にも限りがありますから、資金調達の方法について悩むことになります。
現在は創業する人よりも廃業する人の方が多い状況なので、様々な公的機関が創業しようとする人を支援していますが、この種類が多すぎてかえって分かりにくい状況になっていると感じます。
零細な中小企業の場合、自己資金以外に資金調達の方法は大きく分けて以下の3つがあります。
- 金融機関から借りる
- 自治体に助けてもらう
- 補助金・助成金を獲得する
これらの一つまたは複数を組み合わせて資金調達することになります。
以下にそれぞれを説明します(記事執筆時の情報です)。
金融機関から借りる
政府系の金融機関
起業する人の多くが最初に思いつくのが日本政策金融公庫の「新創業融資制度」でしょう。これから創業する人、創業してから2期目を終わっていない人が対象です。 個人でも法人でも対象となります。
日本政策金融公庫は国の公的金融機関です。従って利用しやすいものになっています。
具体的には担保と保証人が不要で運転資金なら1500万円までを借りることができます。この担保と保証人が必要ないというところがこれから事業を始める人にとっては大変ありがたいことです。
利息は年利2.06~2.45%と低いものです。保証料もかからないメリットがあります。
ただし通常は借入額の10分の1以上の自己資金があることが条件です。1000万円の融資希望なら自己資金100万円が必要です。さすがにその程度の資金を用意してから起業してくださいという訳です。
非常に使い勝手の良い公的融資制度ですが、注意すべき点もあります。ひとつは、しっかりした創業(事業)計画書を立てる必要があるということです。創業計画書のテンプレートは公式サイトのここのページにありますので、記入例を参考にしてしっかりした計画書を作成しなければ審査に通りません。
また安全に審査に通るためには資金繰り表も作成しておいた方が良いです(同じページにテンプレートがあります)。
創業計画書の作成は初めての方には難しく手間がかかるものなので、できれば税理士など専門家に手伝ってもらって作る方が良いです。当事務所でも創業計画書や資金繰り表の作成を一緒に作成しています。必要な方は以下よりお問い合わせください。
あと最近聞く話として、融資審査が以前に比べて厳しくなっているということがあります。社長(事業主)が自分の言葉で計画書を説明できるないと審査に落ちる可能性もあります。このため質疑対応の練習を事前にするなど準備が必要です。
民間の金融機関
民間の金融機関の場合、基本的に日本政策金融公庫のような公的金融機関よりさらに厳しく借りにくいです。事業の実績がない会社への融資ですから当然と言えば当然です。
また創業融資を行ってるところと行なっていないところがあり、行なっているところでも公庫の公的融資がOK の場合に追加でなら融資をしますというところもあります。また利率や保証料も高くなります。
従って創業融資を考える場合には民間の金融機関は優先順位が低くなります。あくまで補完的な位置付けです。
考えられる対応としては、 法人名義の銀行口座を開設する際に、創業融資を行なっている地元の金融機関(信用金庫や信用組合など)を選ぶことです。地元の金融機関であればメガバンクなどに比べて法人口座の開設の難易度も低く、創業時だけでなく後々融資が必要となった場合に備えて早い段階から関係構築しておいた方が良いからです。
自治体に助けてもらう
意外と知られていないのが市区町村など自治体に助けてもらう方法です。
自治体も地域振興のために中小企業に対して融資制度を持っているところが多いのです。これを一般には「制度融資」といいます。
お住まいの自治体名と「制度融資」で検索するとパンフレットなど案内を見つけることができるはずです。
制度融資を使って自治体から様々な優遇を受けることができます。 例えば「品川区 制度融資」で検索をすると、融資あっ旋制度の案内が出てきます。 この案内によると、限度額(融資の種類により異なります)までの融資に対して、品川区が利子の補給と保証料の補助を出すとあります。
融資そのものは信用保証協会が保証して、民間の金融機関から融資を受けるもので、その際の保証料と利子を一部品川区が負担してくれるというものです。 新規創業支援については案内によれば利息の補給は1.6%以内、保証料は全額を区が負担とあります。
自治体の助けをかりて普通に民間金融機関から借りるよりは有利になることが分かります。
補助金・助成金を獲得する
創業時に利用できる補助金・助成金があります。補助金も助成金も返済する必要がなく、ただでもらえるお金です。補助金は件数や予算に上限があるもの、助成金は条件に合致しさえすればほぼもらえるものです。
国や自治体などを様々なところが様々な補助金・助成金を出していますが、例えば新規創業について東京都が行なっている「創業助成事業」があります。
創業助成事業
https://startup-station.jp/m2/services/sogyokassei/
創業後5年未満の中小企業者等が必要としている賃借料、広告費、器具備品購入費などに対して、300万円(下限100万円)を上限として3分の2を助成するものです。
もちろん誰でも申し込めるわけではなく、一定の要件を満たす必要があります。例えば、上記の自治体の制度融資の利用者であること、とか認定特定創業支援事業により支援を受け、過去3か年の期間内に都内区市町村長の証明を受けたこと、などです。他にも種々の要件があります。
ですが逆に言うと、本気で創業を考えて行動している人であれば、わりと条件に当てはまってくる可能性が高く、そうであれば利用しない手はないものです。
創業者向け補助金・給付金の一覧表(都道府県別)は以下にあるので、是非チェックしてみて頂ければと思います。
創業者向け補助金・給付金(都道府県別)
https://j-net21.smrj.go.jp/support/covid-19/sogyo.html
以上、これだけは知っておきたい創業時の資金調達方法、という話題でした。実際には自分のお金だけでなんとか賄おうとして苦労している方が多いです。すこしがんばって資金調達のハードルを超えれれば順調にローンチできそうな方がいて、そういった方を支援できるのは喜びだったりします。
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