【2021年頭に考える】AIは税理士の仕事を奪うか



AIは税理士の仕事を奪うか

しばらく以前にオックスフォード大学の発表で会計士(税理士)の仕事がAIに奪われるだろうという予測が出て以来、はたして実際のところはどうなのだろうか?という議論があります。2021年はAIがさらに一歩先へ進むはずの年であり、年頭にあたって再びこの疑問について考えてみます。

この疑問への私自身のショートアンサーは「はい、奪われます」です。税理士という立場で税理士にひいき目になったとしてもやっぱり税理士の仕事はAIに奪われてしまうと思う。

しかも奪われるまでの時間は意外と短く、おそらく2020年代の終わりまでには奪取終了という感覚です。あと10年ももたないでしょう。





GTP-3の衝撃

そのように考える一番大きな理由は2020年に登場したGTP-3の存在です。

それまではAIといっても実際にはパターンマッチングに毛が生えた程度の「知能」しか無かった訳です。犬と猫の画像を大量に見せて学習させることで、どちらが犬か猫か判定できるといった程度のものです。

それはそれで多くの箇所で利用価値があり、たとえば人物を特定したり、病巣を判断したり、コンビニを無人化したり、といったことが出来るようになりました。すごいことです。

ですが、だからといって税理士の仕事を奪うか?と言えば、いやいやそんな簡単なものではないでしょう、はるかにもっと複雑ですよ、と高をくくってきた訳です。ところがOpenAIが公開したGTP-3にはちょっと次元の違う量子跳躍(カンタムジャンプ)のようなインパクトがあります。

特に衝撃的だったのは自然言語処理の飛躍的な進展です。GTP-3ではインターネット上にある様々な文書をデータソースとして学習し、自然な文書を作成することができるようになりました。

イメージとしては「Aという話題について文書を作成して」といえば、インターネット上で学習したデータソースをもとにそれなりの文書を作成できるようになりました。途中まで書きかけの文書を渡して「続きは書いといて」と言えば、自然な感じで最後まで文書を仕上げてくれます。

「マジかよ・・・」という感じです。凄すぎです。さらに言えば、犬猫の判定からここまでくるスピードの速さに驚きます。まさに加速度がついた状態でぐいぐい進歩してきています。AIに対するこれまでの認識や将来見通しを変えざるを得ないほどの衝撃感です。





税理士業務は今後10年でどうなるか?

自然言語処理は税理士にとって「頭脳労働」とされる部分であり、すなわちそう簡単にAIで置き換わるはずがないものでした。それがそうもいかないという状況に(すでに)なっています。

たぶん自分の予想では現在の税理士業務は10年以内に次のようになるでしょう。

  • 記帳代行 →今は中途半端な自動取り込み機能も完全にAIが自動化。くちゃくちゃの現金払いレシートもスキャンで完全に記帳できるようになる。というか、現金払い自体が消滅する可能性も。
  • 月次試算表の作成とお客様への説明 →AIが自動化。AIが数字を読んでその解釈を平易な言葉遣いでお客様に説明してくれる。
  • 決算申告業務 →AIが自動化。データだけを税務当局に渡すようになり「申告書」という概念が消える可能性も
  • 法令規定を読んで解釈する仕事 →AIが自動化。質問したらAIが過去の判例まで読んで適切なアドバイスをしてくれるようになる

こうなってしまうと全国に7万人以上いる税理士はどうなるでしょうか?おそらく大半の税理士は失業すると思う。仕事の柱をAIに奪われてしまった結果仕事が無くなります。



希望はなくはない

ですが、まったく希望が無いかといえば、そうでも無いです。このような状況でも次のような仕事は残るのではないか?と(少なくとも現時点では)考えるからです。

  • 将来の事業計画を考える仕事 →AIでは過去に起きたことをベースに仕事する(データ処理する)力は圧倒的ですが、まだ起きていない将来のことを仕事にすることは難しいのではないか?来期どのように事業展開すべきか、どのような新規事業を育成すべきか、など将来のことを考えてお客様にアドバイスする仕事は残ると思う。経営参謀というかクリエイティビティの世界です。
  • AIの仕事にミスがないか監査する仕事 →最後は人の目で見て確認ということで無理やり制度として税理士関与を残す可能性はあります。本末転倒感もありますが。
  • 税理士AIを作り維持する側の仕事 →失業してしまう税理士にとっては悪魔のような存在ですがAIに税理士業務を実装するための仕事は残っていくと思う。各種の法改正はAIがやらないはず(たとえテクニカルに出来ても)なので、それをAIが実務処理できるようにするための仕事はあり得るはずです。ただしもはや税理士業務ではなくエンジニアの仕事かもしれませんが。

逆に言うとこれくらいしか税理士の仕事としては残らない可能性が高いです。「いやいやそんなのだいぶ先でしょ」などと侮るなかれ。驚くほどのスピードでやってくるでしょうし、少なくともそう思って今のうちから準備しておくことが必要なのかなと考える次第です。

では具体的にどんな準備をしたら良いのか?テクノロジーの進展を見つつ、それを考えるのが2021年の個人的なミッションです。





以上、AIは税理士の仕事を奪うかという話題でした。現代は資本主義とテクノロジーが引っ張る時代です。それらの少し先を見つつアクションプランを考えていきます。ただし失業は残念ですが、失業したとしてもベーシックインカムなどで働かなくても暮らしていける社会になる可能性もあります。そういった社会への備えもまた必要です。

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