目次
7つの士業
先日次の各士業の登録者数が増えているのかどうか確認したいと思い、人数動向を調べました。
- 税理士
- 弁護士
- 司法書士
- 行政書士
- 公認会計士
- 社労士
- 宅建士
登録者数(会員数)は新規に登録した人がプラス、登録を辞めた人がマイナスされて、正味の人数となっています。登録者数は各団体から公式発表されているものを使っています。公認会計士だけは探し方が悪いのか2013年から5年分のデータしか見つからず、そのまま使いました。また、中小企業診断士も調べたのですが、古いデータしか見当たらず、割愛しました。
データがあるものについて2008年から2018年までの人数の動向は次のとおりでした。宅建士だけは人数が非常に多いので、グラフを分けて表示しています。
(各団体資料より筆者作成)
(各団体資料より筆者作成)
この結果から分かることは次のとおりです。
- 調査した7つの士業では「宅建士」の人数が飛び抜けて多い。2018年には10万人を超えている。日本の労働人口が6700万人程度なので、労働者の700人に1人は宅建士という状況
- 宅建士は除くと人数が多いのは「税理士」。2018年の人数は約77000人
- 調査した7つの士業すべて2008年から人数が増えてきている。減っている士業は無い
人数の増減の割合を見るために、2008年を「1」としたときにどのように変化しているかをグラフにしたものがこちらです。
(各団体資料より筆者作成)
こちらから分かることは次の通りです。
- 「弁護士」の伸び率が非常に大きい。2008年から60%も増えている
- 「公認会計士」も短期間に急増してる
- 「税理士」は人数の絶対数が多い分、伸び率は低い。2008年から9%程度の増加
- それ以外の士業はいずれも20%前後の増加
士業は食えるか?
士業資格は安定的な収入を得るための切符のようなイメージがあり、そのせいで人数の増加傾向があるのでしょうが、現在では様変わりしているようです。特に弁護士は増え方が急すぎて、すでによく言われるように弁護士になっても仕事がないという状況でしょう。司法改革のために必要と考えたのかもしれませんが、生活できなければはじまりません。
税理士も人数が多く、顧客となる事業者数が減っていくなかで過当競争となっています。新しい顧客は税理士どうしが取り合う形となり、今後ますます価格競争で1件あたりの儲けが出にくい状態になるでしょう。
宅建士は他の士業より比較的合格しやすいですが、今後の人口減少で長期的にはニーズが減ってくるものと思われます。その他の士業も今後レッドオーシャン化して、厳しさを増すはずです。
さらに悪い話として、フィンテック、不動産テック、リーガルテックといったIT技術による自動化やAIの活用でさらに仕事が減るものと予想されます。
従って、結論としては、これらの士業では将来食えない可能性が高い、ということになります。
士業に価値はないのか?
市場を無視した人数の急増は、これらの資格が「足の裏の米粒」(取っても食えない)と揶揄される所以です。ですが、それにも関わらず毎年新規参入者が続くのは何故でしょうか?いくつか理由があります。
(1)能力証明になる
別にこれらの資格試験に合格したら必ず独立開業しなければいけない、という訳ではりません。普通に一般の会社員として勤務を続けるという選択肢もあります。その場合に、その勤務先に対して、または転職する場合には新しい会社に対して、「能力証明」として効果があります。特に難関試験であればあるほど、その価値はあります。その会社の中でそれなりの仕事をやらせてもらえたり、報酬アップにつながる可能性もあります。
(2)組み合わせに価値がある
士業資格1つでは上述のとおり厳しい状況です。他の人から顧客を引き継がない限り、いきなり新規参入で開業しても仕事が無い可能性が高いです。ですが、だから士業に価値なしということはなく、2つ以上の資格を組み合わせると、「スキルの掛け算効果」が出て、自らを希少価値化することが出来ます。
例えば、「税理士x中小企業診断士」という人に何人かお目にかかったことがありますが、コンサルタントスキルがある税理士ということで強力です。「税理士x中小企業診断士x宅建士xFP」という人も知っており、かなりのオンリーワン化が可能となります。
この「スキルの掛け算効果」は何も士業のみに留まらず、「税理士xITエンジニア」とか「税理士x英語ペラペラ」または女性なら「税理士xサロネーゼ」のように多様な組み合わせでオンリーワン化して自分の価値を上げることができるでしょう。
かなりニッチな組み合わせでもネット時代の現代では、情報発信すれば検索で見つけてもらえます。これからは1つの資格で大きなビジネスを、といより、小商いをいくつもやって、自分なりの「仕事ポートフォリオ」を育てていく方が時代に合っています。士業はそういったポートフォリオの1つにすればまだまだ価値があります。
(3)引退後の備えになる
もう一つの士業を目指す理由は「引退後の備え」です。60歳とか65歳で会社人生を終えて、外に出るとしても丸腰ではまずいです。何かしらのスキルがあったほうが、何も無いよりは良いということになります。資格があれば良い仕事があるに違いないと思っているのです。
しかしこの考え方も現実には厳しいかもしれません。なにせどの士業も人数過多ですから、同じ雇うなら若い人を雇うでしょう。お客様も60歳過ぎて開業した人のところになかなか来ないです。つまり、1つの士業だけで将来に備えたつもりでも目論見が外れる可能性が高いです。
やはり(2)で述べたように、引退後に備えてもスキルの掛け算ができるように準備しておく必要があります。そのためにはなるべく早く50代のうちから準備することをお勧めします。この内容についてはこちらの記事にも書きましたのでご参照ください。
おまけ:士業を顧客にすると成長産業
これだけ士業の人数が増えているということは、逆に考えると「士業を顧客にすると成長産業」だと言えます。10年で20%以上伸びている市場ですから、士業を相手にすればビジネスになります。
例えば、「開業や集客のノウハウ」を教えたり、「営業トーク」を教えたり、「IT活用のノウハウ」を教えたり、などなど、ほかにもいろいろあるでしょう。すでにこういったビジネスも当然にあると思いますが、成長産業なので参入の余地があるでしょう。
以上、士業は時代遅れ?7つの士業について登録者数動向の比較をしてみた、という話題でした。スキルの掛け算、複数の小商いで仕事のポートフォリオ化、といった考え方は時代にあったものです。こちらのような書籍でも学べます。よかったらどうぞ。
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