【失業保険】スペインで見かけたゴキゲンな失業者にみる日本との違い【日本で失業したらなるべく早めに再就職】



スペインで見かけたゴキゲンな失業者

2019年10月にスペインを旅行しました。具体的には大西洋に面した北部のバスク地方と地中海に面したバルセロナです。

どちらの街でもバルと呼ばれる大衆居酒屋に行くと、観光客に混じっておそらく現地の人と思われる人たちが、平日の昼間からビールを飲んで大声で話しているのを見かけました。多くは失業者なのだろうと思います。

以下のようにスペインはひところに比べれば失業率(2019年8月時点で13.8%)は低下していますが、他のヨーロッパの国々と比べると依然として失業率が高く、20代の若者について言うと、2人に1人が失業者であると言われています。

スペインの失業率

(出典:ユーロスタット)

彼らの明るさはラテン人の陽気な気質によるところが大きいと思いますが、スペインの失業者を支える制度が日本とかなり異なっていることも大きいようです。一般にスペインでは失業者に対しておおらかですが、日本では厳しいという現実があります。

この記事ではスペインと日本を比較して、もし終身雇用制が崩壊しつつある日本で失業の危機が迫ったらどのような対応したら良いか?について説明します。



失業したらなるべく早く次の仕事を見つける

トヨタ自動車の社長が終身雇用制度を維持できないと発言し話題になりました。ですが、これはもう皆がわかっていたことを改めて言っただけ、という受け止めが一般的です。

このように現代の日本では解雇や失業がかなりリアルな問題となっています。この数年会社都合の解雇による失業者は常に20万人程度いる状態になっています。問題はそれが自分に起きたらどうするかということです。

日本の失業者数

(出典:総務省統計局 労働力調査)

もちろんフリーランスになって独立したり、自分の力で食って行ければそれに越したことはありませんが、多くの人はそうもいかないでしょう。 まずは雇用保険から失業手当を受けて生活しつつ、次の仕事を探すということになります。

しかし、日本の失業手当はスペインと違って必ずしも十分とは言えず、次の仕事を見つけるまで生活を支えることができない可能性があります。したがってなるべく早い段階から(場合によっては失業する前からでも)再就職支援サービスを使うことをお勧めします

支援サービスの例として、東京都の委託を受けて民間団体が行っている「東京しごとセンター」があります。 こちらの「正社員就職応援プロジェクト 」は無料で就職決定までの様々なプログラムやサポートを受けることができます。

もし、失業してしまった場合や失業しそうな場合は、こういった支援サービスを活用するようにしましょう。




日本は失業者に厳しい国

なぜ早く再就職を決めるべきかというと、それは日本が失業者に厳しい国だからです。もし同じ条件の人が日本で失業した場合とスペインで失業した場合にどのくらい違うのか?以下で比較しています。

失業手当の金額だけでもけっこう違い、びっくりします。確かに、スペインの失業者が昼間からバルで飲んでいられる訳です。

さらに、解雇の際の「金銭解決」についても、スペインにはしっかりと法律で定められた制度があります。金銭解決とは言わば「手切れ金」で、日本には制度が無いため、各企業が独自に定めていますが、倒産など経営破綻するとゼロになる可能性があります。実際には、割増退職金などが支払われるのは大手企業など一部しかないでしょう。

スペインでは法律で金額の算出基準まで決まっていて、経営破綻の場合でも賃金保証基金という国の基金から支払われる安心設計になっています。

日本の労働者が不遇過ぎです



スペインと日本の失業保険比較

次に具体例を使って、同じ条件の人が日本で失業した場合とスペインで失業した場合で失業手当にどのような差があるか見てみましょう。

具体例:
年齢30~35歳、家族持ち子供1人、10年間働いた会社を会社都合で解雇された、とします。

日本の場合:
失業手当は、最後6ヶ月の給与額に応じて、その50~80%を210日間にわたって支給されることになります(ちなみに自己都合退職なら120日間しかありません)。支給額の上限は日額7155円であり、1ヶ月あたりでは約21万円が支給されます。

よって、限度額で支給された場合、210日間の支給総額は約150万円となります

ただし、所得税や市民税は非課税であり、健康保険料の計算上、所得割額からも除外されます。

スペインの場合:
失業手当は最初の180日までは最終給与の70%、181日から720日までは50%が支給されます。支給額の上限は月額で1242.52ユーロ(約15万円)となっています。

よって、限度額で支給された場合、720日間の支給総額は約360万円となります

さらに、上述のとおり解雇の際の「金銭解決」により解雇時に支給される手当は、この例では約200万円となります。

以上のように、この例では、日本では約7か月間に150万円が、スペインでは約2年間に560万円が支給されます。まったく違うのです。

スペインに限らずラテン系の国では、「働くことは貧しさの証明」とか、「働くために生きているのではなく、生きるために働いている」という労働観があり、日本の「勤労=美徳」という労働観とはだいぶ異なります。

どちらが良いかではないのでしょうが、日本で生活していく場合は、のんびり失業しているわけにも行かないのが現実なのです。



リストラの音が聞こえてきたら再就職支援を検討しよう

最近では電機業界や銀行なのでリストラの話が多く上がっています。もし皆さんの職場でリストラの音が聞こえてきたら、なるべく早く対策することをお勧めします。

上記で見てきたとおり日本の失業者への対応は非常に厳しく、企業の経済的な理由による解雇であっても金銭解決の方法が法制化されていませんので、非常に不安定です。

先に紹介した再就職支援サービス「正社員就職応援プロジェクト 」などを活用すると良いでしょう。 

以上、スペインで見かけたゴキゲンな失業者にみる日本との違い、という話題でした。終身雇用制の崩壊は「働き方改革」の裏側(または不都合な真実)だったりします。これから解雇に関する法整備がもっと進むでしょうが、待っていても損するだけなので、行動あるのみですね。