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法人営業チームの業績評価
B-to-Bの法人営業チームの業績をどのように評価したらよいか?という問題があります。B-to-Bの営業活動の場合、通常数十社から数百社の法人顧客を相手に営業をしており、各顧客ごとの売上高は次のような分布になるのが普通です。
一年間の営業努力の結果これが下図のように変わったとして、その努力の成果をどのように評価したらよいのでしょうか?
今回はこういった営業チームの努力の成果の評価方法と、効果的な戦略について説明します。
よくある成果の評価
上の2つの図を見比べてみると、「ほとんど同じ」に見えます。というか、この例では実際に中身の数字は同じです。
このため、営業チーム全体の総売上高は同じですし、仮に顧客1社あたりの平均売上高を計算しても同じになります。そうすると、結論として、「努力の成果は出ていない」とか、「営業はがんばってない」とか、の評価になりがちです。
ですが、それですとすこし短絡すぎで、もう少し掘り下げて考える必要があります。
実際、1年後のデータをよく見るとR社の実績が躍進していますし、B社とC社の順位が入れ替わっています。こういった変化を評価することも重要です。
パレート分布の特徴
その前に上のようなデータの分布のことをパレート分布と言いますが、パレート分布の特徴について知っておきましょう。
パレートとは、8対2の法則で有名なあのパレートです。 パレート分布はべき分布の1種類で、自然現象によく出現するデータ分布であると言われています。例えば、災害の発生や株式の騰落値幅がパレート分布に従うと言われています。
図を見ると分かる通り、最頻値から急激に下がり、右側に長く小さな値が続きます。これを 尾っぽに見立てて「ロングテール」と言います。
このような形状がパレート分布の特徴です。
パレート分布の評価方法
パレート分布に従うデータを分析したり評価する時には、通常データ評価で使うような平均値や分散(ばらつき)、または 有意な変化があったかどうか調べるT検定といった統計学の検定手法を使うことができません。なぜならこれらの考え方は、そのデータが正規分布に従っていることを前提にしているからです。
そもそもの前提が違うので、こういった従来の評価方法が使えなくなってしまうというわけです。したがって顧客1社あたりの平均売上高などを算出して比較しても意味がありません 。
ではどのような方法で評価したら良いかと言うと、ひとつにはデータのトータルで評価するという方法があります。つまり上記の例では営業チームの総売上高です。
総売上高が増えたか減ったかを見ることで、その営業チームの努力の成果を評価することができます。
もうひとつの評価方法は、分布の形状で評価するというものです。つまりパレート分布が尖っているのかなだらかなのか、ということです。
この2つの評価方法を営業戦略とリンクして考えることが重要です。
営業戦略へのリンク
パレート分布に従う顧客別売上高を前提とした場合に、どのような営業戦略が考えられるでしょうか。顧客の特徴という点で、下図のように「重要顧客」と「ロングテール顧客」に分けて考える必要があります。この例では総売上高の8割を占める顧客を重要顧客としています。
重要顧客は文字通り取引高が多く重要なお客様、ロングテール顧客は取引高少ないお客様です。顧客をこのように2つに層別して営業戦略を考えます。
2つに分ける理由は費用対効果の観点から営業のアプローチがまったく異なるからです。
重要顧客については営業の担当者を置き、顧客に入り込んで問題解決のための提案を軸とした営業活動を行います。一方ロングテール顧客に対してはなるべくコストのかからない営業方法になります。例えばネットを使ったEC(ウェブサイトによる販売)やインサイドセールスによる電話営業、販売店などを使った間接営業、といった営業方法です。
その会社の営業目標が重要顧客からさらに受注することを目指すのか、ロングテール顧客を開拓して裾野を広げていきたいのか、によって戦略が異なります。もちろん両方できれば良いのですが、限りある経営資源を有効に使うには、多くの場合どちらか選ぶことになります。
そしてその戦略がうまくいったかどうかは前述の二つの方法で評価します。すなわち営業チームの総売上高が増えたかどうか、パレート分布の形状がどのように変化したか、ということです。
重要顧客に注力した場合
重要顧客に注力したのであればその成果は次の図のようになって現れるでしょう。
重要顧客とされる各社の売上高が伸びて、ロングテール顧客の売上高は伸びませんので、パレート分布はより尖ったような形状になります。
これを数値で評価する場合は次の2つの指標を見ます。
(1)営業チームの総売上高。これは単純に各社の売上高を合計するだけですのでエクセルで言えば「SUM関数」などを使えば良いでしょう。総売上高が増えていれば、ビジネスが成長したと考えることができます。
(2)パレート分布の尖度(せんど)。パレート分布のとがり具合はエクセルでは 「KURT関数」を使って調べることができます。より尖った状態ではKURT関数の結果は小さくなりますので、1年前に比べて数値が小さくなっていれば重要顧客に注力した戦略は成果が出たと考えることができます。
ロングテール顧客に注力した場合
ロングテール顧客に注力したのであればその結果は次の図のようになって現れるでしょう。
ロングテール顧客とされる各社の売上高が伸びて、重要顧客の売上高は伸びませんので、パレート分布はよりなだらかな形状になります。
この場合も、数値で評価する場合は次の2つの指標を見ます。
(1)営業チームの総売上高。前述と同様に総売上高が増えていれば、ビジネスが成長したと考えることができます。
(2)パレート分布の尖度。よりなだらかな状態ではKURT関数の結果は大きくなりますので、1年前に比べて数値が大きくなっていればロングテール顧客に注力した戦略は成果が出たと考えることができます。
結局どちらの戦略が良いのか?
では、重要顧客への注力とロングテール顧客への注力ではどちらが良いのかと言うと、それぞれの市場や商材によって判断は異なりますが、一般的に言うと重要顧客への注力の方が費用対効果の点では効率が良いと言えます。
既に取引がある馴染みの顧客からさらに注文をもらう方が、全く馴染みのない顧客をゼロから開拓して注文を増やすよりも簡単である、というのは直感的にわかることです。おそらく営業担当者の多くもそう感じるでしょう。
直観的にも、これまで実際に経験したシミュレーションでもそのような結果になりがちです。
しかし、だからといってロングテール顧客を無視するような戦略をとると痛い失敗を味わうことになります。なぜなら上の例で突然R社の取引高が増えたように、今年のロングテール顧客が来年もロングテール顧客のままとは限らないからです。
従ってロングテール顧客に対しても継続的にコミュニケーションを行い、ニーズの変化を敏感に汲み取るような仕組みを作ることが重要です。ロングテール顧客への戦略立案にはクリス・アンダーソンの書籍「ロングテール‐売れない商品を宝の山に変える新戦略」もおすすめです。
以上、パレート分布(べき分布)の場合の営業戦略の考え方、という話題でした。実際の営業現場では、重要顧客とロングテール顧客に「上手に」リソース配分して、取りこぼしが無いように運営します。この「上手に」が難しく、いつも悩みの種ですが。また、特に対ロングテール顧客では、Webサイト運営などマーケティング担当者との連携も重要だったりします。
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