【やさしい相続税(7)】相続税申告書の書き方【自分で書くならこのやり方】



この記事は「相続税の申告書を自分で書いてみたいのですが、どうしたら良いでしょうか?」といった疑問に答えます。



相続税申告の全体像

相続があった場合で、相続税の申告が必要となるときは、その相続開始の時(被相続人が亡くなったことを知った日)から10ヶ月以内に相続税の申告を行わなければなりません。

この10ヶ月の間に何をしなければならないかの全体像については、以下の記事に書きました。

今回はそのうち相続税の申告書の記入に特化した説明です。申告書の記入の前に最大の難所である財産の評価は終わっている前提です。財産の評価についてはこちらの記事もご参照ください。

相続税の申告書作成は後述する通り、通常はソフトウェアで行うものですが、自分で手書きして作るとしたらどのような手順で作るか以下に説明します。





相続税申告書の作成手順

法人税の申告書は大きなくくりで第1表から第15表の15個の表で構成されています。 この中には必ず作成するものと、場合により作成するものがあります。

必ず作成するものの代表例は、第1表の「相続税の申告書」、第2表の「相続税の総額の計算書」、第11表の「相続税がかかる財産の明細書」、第15表の「財産財産の種類別価額表」といったものです。これらの作成手順はおおよそ以下の順番になります。

相続税 申告書作成の流れ

大まかな流れとしては、まず各財産の集計を行い財産価額の変動が生じるものについて調整を行います。次に財産価額を整理してそれを申告書に転記していきます。これで申告書の課税価格の計算までが終了です。

次に課税価格に基づいて相続税の総額を計算します。総額が求められたらそれを各人に配分して、各人の状況によりそれぞれの税額を算出します。最後に納付税額を申告書に記載します。

このように財産の全体の価格から相続税の総額をいったん計算したうえで、それを各人に配分し調整した後、最終的な納付税額を確定させるという流れがポイントとなります。 



第11表「相続税がかかる財産の明細書」

第11表はタイトルの通り、財産の内訳と詳細を記載します。

例えば、土地であれば、宅地といった地目、自用地といった利用区分、所在地を記載します。有価証券であれば、株式や社債といった種類、会社名などの名称銘柄、証券会社名を記載します。現金預金であれば、現金や普通預金といった種類、銀行名を記載します。

さらにこれらの財産が誰にいくら分配されるかも示します。

書面は以下のようになっています。

相続税 第11表


第15表「財産財産の種類別価額表」

第15表は、第11表で記載した明細のうち、各財産の種類ごとの合計金額を抽出して、整理したものです。「各人の合計」欄の一番下が「課税価格(40)」となっており、これを集計する目的で作成します。

書面は以下のようになっています。

相続税 第15表

この段階で、以下の第1表「相続税の申告書」の「課税価格の計算」欄までを埋めます。

相続税 第1表




第2表「相続税の総額の計算書」

課税価格の合計額が求まったら、次に相続税の総額を計算します。

基本的な流れは、まず課税価格の合計額から基礎控除額を引いて、課税遺産総額を出します。これを法定相続分で各人に配分し、各人ごとに税率を掛けて「相続税の総額の基礎となる税額」を出します。

これを合計したものが「相続税の総額(8)」です。この額を納める訳ではないのでご注意ください。

書面は以下のようになっています。

相続税 第2表

この段階で第1表「申告書」の中段部分「各人の算出税額の計算」が埋まります。

相続税 第1表

この後、第4表〜8表の各人ごとの税額調整を必要に応じて行います。配偶者の税額軽減(第5表)、2割加算(第4表)もここで行います。これらについては以下の記事もご参照ください。



第1表「相続税の申告書」

各人の税額がきまったら、最後に第1表「申告書」の下段部分「各人の納付・還付税額の計算」を埋めていきます。

各人の一番下の「申告納税額(24)」欄の金額が実際に納める金額です。この金額を納付書に記載して払います。

相続税 第1表

以上で申告書が完成しました。



申告書作成ソフト

相続の内容がシンプル(財産が金融資産のみ、相続人が1〜2人など)であれば用紙に手書きして申告書を作成することも充分に可能でしょう。

ですが、現在では多くの場合ソフトウェアを使って申告書の一式を作成しています。代表的な相続税の申告書作成ソフトは、こちらの記事に紹介されていますのでご参照ください。

無料で使えるものからプロ用のものまで様々あります。 ソフトウェアであればエラーチェック機能があり、ミスの防止に役立ちますし、訂正などもやりやすいです。

相続税の税理士報酬はそれなりに高額になるので、こういったソフトウェアを使いつつ分からない所だけ税理士に単発で相談したり、あるいはセカンドオピニオンとして結果のチェックだけ依頼するといったやり方も考えられます。

ですが多くの場合、相続税がかかりそうかどうか?税額が発生しそうか?だけを自分でざっくり確認して、実際の準備は税理士に依頼いただく方が安心でしょう。






以上、相続税申告書の書き方、という話題でした。実際には、相続発生から様々な役所手続き、書類集め、遺産分割協議、といった重たい作業項目が事前にあり、相続税の申告書にたどり着く頃にはくたくたに疲れているものです。無理をして体調を崩しても意味がありませんから、早い段階から専門家のサポートを受けるようにした方が無難です。

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