【やさしい経理(3)】収益と費用を仕訳する 【普段の経理はほとんどこれです】

この記事は「日常的に取引を仕訳するというのは、どのようなことをするのでしょうか?直ぐに役立つ具体的なことを教えてください」といった疑問に答えます。



収益と費用を仕訳する

この前の記事(やさしい経理(2))で説明した開始仕訳をしたら、その後は通常の業務から生じる取引についての仕訳を行っていくことになります。通常業務では一般に次のような取引があります。

  • 収益と費用
  • 現金の預け入れと引出し
  • 資産の購入
  • 給料の支払い
  • 社会保険料や税金の支払い

このうち、今回は収益と費用の仕訳についてよくあるパターンをご紹介します。「経理」や「仕訳」と聞くと難しく感じますが、実際には1年のほとんどはこの収益と費用の仕訳をひたすらにやっていくことになります。

しかも毎月同じような仕訳の繰り返しですから、慣れてしまえば負担は少ないですし、以下の記事で紹介した「シンプル経理ツール」ならエクセルなので仕訳をコピーして日付と金額だけ変えるといったやり方で省力化することも可能です。





よくある費用と仕訳のパターン

以下によくある費用についての仕訳パターンを列記します。費用の代金の払い方は「現金」で統一していますが、銀行振り込みであれば「普通預金」、未払いであれば「未払金」などに変更してください。

また勘定科目はお使いのシステムやツールによって異なる場合があります。また事業の内容によって細分化したりする場合もあります。勘定科目の使い方には厳密な決まりはなく、意味が分かれば良いのです

取引: 商品を仕入れた

仕入1,000現金1,000

取引: 文房具を買った

事務用品費1,000現金1,000

取引: 電気代(水道代)を払った

水道光熱費1,000現金1,000

取引: 電話代(携帯電話料金)を払った

通信費1,000現金1,000

取引: 切手(はがき)を買った

通信費1,000現金1,000

取引: 収入印紙を買った

租税公課1,000現金1,000

取引: 住民票を取得して手数料を払った

租税公課1,000現金1,000

取引: 銀行で振込手数料を払った

支払手数料1,000現金1,000

取引: 駐車場(コインパーキング)料金を払った

旅費交通費1,000現金1,000

取引: 高速道路(ETC)料金を払った

旅費交通費1,000現金1,000

取引: ガソリン代を払った

車両費1,000現金1,000

取引: コピー用紙を買った

消耗品費1,000現金1,000

取引: 得意先にお中元を送った(接待した)

接待交際費1,000現金1,000

取引: 従業員と会食した

福利厚生費1,000現金1,000

取引: コピー機のリース代を払った

リース料1,000現金1,000

取引: ホームページのサーバー代を払った

支払手数料1,000現金1,000

取引: 材料を買った

材料仕入1,000現金1,000

取引: 作業を外注して代金を払った

外注加工費1,000現金1,000

取引: 事務所のエアコンをクリーニングしてもらった

雑費1,000現金1,000

取引: 業務で使う書籍を買った(新聞代を払った)

研究図書費1,000現金1,000

取引: 事務所の家賃を払った

地代家賃1,000現金1,000

取引: 借入金の利息を払った

支払利息1,000現金1,000




よくある収益と仕訳のパターン

収益の場合は次のように「売上」で仕訳することが多くなります。

取引: 商品・サービスを売った

現金1,000売上1,000

同じ売上でも建設業などの場合には「完成工事」といった勘定科目を使います。

取引: リフォーム工事を終えた

現金1,000完成工事1,000

その他の収益としては次のような取引があります。

取引: 公的機関から補助金(助成金)を得る通知を受け取った

未収入金1,000雑収入1,000

※ 実際に振り込まれた際に 普通預金 / 未収入金 の仕訳をします。

取引: 銀行預金に利息が付いた

普通預金1,000受取利息1,000

取引: 不要になった機械を売った

普通預金1,000機械装置700
減価償却費100固定資産売却益400

※ 固定資産の売却については別の記事にて詳しく説明します



個人事業主の場合の家事按分

個人事業主の場合には費用の仕訳で注意すべき点があります。それは水道光熱費や通信費といった費用は個人のためのものと事業のためのものとが混在しているため、支払金額のすべてを事業の費用とは出来ないという点です。

この場合、「合理的な割合」で按分した金額が事業の必要経費として認められます。何をもって合理的とするかは各自の事情によるので、一概には決めることができませんが、一般的には以下のような基準を使います。

要は税務署から問い合わせを受けたときに、説明できるような妥当なものであれば良いのです。

家賃賃貸物件の面積のうち、事業に使っている部分の面積の割合
水道光熱費使用時間や使用量、使用するコンセントの数、使用日数など
通信費使用時間や使用量、使用日数など
車両費走行距離、使用日数など

なお、この按分比率は月ごとに変えるなど細かく変動させることもできますし、1つ1つの取引ごとに変えることもできますが、実際には相当手間がかかり複雑になります。このため、一般的には通常の仕訳はそれぞれの「全額」(領収書やレシートの金額どおり)で行い、決算において勘定科目ごとに一定の割合を乗じて事業用と生活用を区別するということをします。

通常(期中)の仕訳

通信費1,000現金1,000

決算時の仕訳

事業主貸400通信費400

例えば通信費(携帯電話料金など)の事業割合が60%とすると、この決算時の仕訳により事業としての通信費(60%)と生活としての通信費(40%)とに区別されることになります。

「事業主貸」という勘定科目は生活費との調整に使う勘定科目です。左側(借方)に書くときは「事業主貸」を使い、右側(貸方)に書くときは「事業主借」を使います。「事業主貸」と「事業主借」はいずれもプライベートのお金ですから、翌期首の開始仕訳で相殺してゼロにし、残高を「元入金」に加減算します。

例えば期末に「事業主貸」が70,000円、「事業主借」が30,000円の残高であれば、翌期首の開始仕訳で次のように仕訳します。

事業主借30,000事業主貸70,000
元入金40,000


以上、収益と費用を仕訳する、という話題でした。通常の経理はほとんど収益と費用の仕訳をする、ということになります。簡単な単純作業ですので、2-3か月も経験すれば誰でも慣れてしまうものです。唯一勘定科目の選択が迷うポイントですが、インターネットで検索すれば大抵の仕訳パターンは分かりますので、最初のうちは検索しつつ仕訳し、慣れてきたら前述のとおりざっくり1ヶ月分の仕訳を前月からコピーして日付や金額だけ修正していく、という進め方が速く処理するコツです。



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