【空き家問題】空き家を抱えるといくらかかるか?維持にかかる費用をシミュレーションで解説



空き家問題が顕在化

空き家問題が徐々に顕在化しているようです。東京近郊でも駅からバスに乗らないとならないような不便な場所では、高齢化が進むと次第に住む人が居なくなった空き家として放置される物件が増えています。

先日も東京都八王子市の八王子駅からバスで20分くらいの場所を見る機会がありましたが、30分ほど歩いて廻っただけでいくつか空き家らしき一戸建て家屋を目にしました。

この記事では空き家を抱えてしまうとどのような維持費用がかかるのか?シミュレーションしてみます。



空き家の想定

上記の東京都八王子市の八王子駅からバスで20分程度の土地100平米の土地に木造2階建ての住宅(築40年)がある場合でシュミレーションします。 



(1)土地の固定資産税

家を持っていることで必ずかかってくるのが固定資産税です。固定資産税は市町村が課税する地方税であり、土地と建物それぞれに課税されます。その税額の合計額が1年に1度納税通知書を通じて所有者に送付されるようになっています。

土地に対する固定資産税額はその土地の固定資産税評価額に基づいて計算されます。固定資産税評価額というのは地方自治体が3年に1度定める評価額です。

ややこしいのですが土地の値段には実は4種類あります。実勢価格(時価)、公示価格(国土交通省による評価)、相続税評価額(国税庁による評価)そして固定資産税評価額(自治体による評価)の4種類です。

固定資産税評価額は自治体が定めて固定資産課税台帳に記しています。どのような評価額がついたかは納税通知書を通じて知ることができるほか、役所に行けば台帳を見せてもらうこともできます。

この例では平米単価16万円としてシミュレーションします。それと固定資産税評価額は次のように求まります。 

固定資産税評価額 (平米単価16万円) 
100平米 x 160,000 =16,000,000円

ここで200平米以下の宅地については、課税標準額の特例があり評価額が1/6になります。ここに税率1.4%をかけて税額を出します。

固定資産税額
16,000,000円x1/6  x 1.4% = 37300円

さらに都市計画税を算出して固定資産税額に合算します。固定資産税というのは固定資産税と都市計画税の合計なのです。 都市計画税も課税標準額の特例があり評価額が1/3になります。ここに税率0.3%をかけて税額を出します。

都市計画税額
16,000,000円x1/3  x 0.3%% = 16000円

実際にはさらに複雑な計算があるのですが、ここでは簡略化のため単純にこの2つを合計して年間で53,300円となります。これが土地に対する固定資産税額ということになります。

注意しておきたいのは、もし空き家を壊して更地にしてしまうと課税標準額の特例が適用されなくなることです。このために評価額が1/6や1/3となる計算が使えず、固定資産税がいきなり高くなることになります。



(2)建物の固定資産税

建物の固定資産税の元になる評価額は、自治体が評価した建物の再建築価額に基づいて算出されます。再建築価格というのは、もし今同じ建物を現在の材料費・人件費で作り直したらいくらかかるだろうか?という推定値です。

この推定された再建築価額に経年減点補正率という率をかけて評価額を出すことになっています。この経年減点補正率というのは、建物の築年数によってその痛み具合の評価から評価額をマイナスするためのものです。

再建築価額×経年減点補正率=評価額

これらは役所が決めますので、建物の評価額は納税通知書または固定資産税課税台帳によって確認するよりほかありません。

また時として役所が評価を間違えているということが起きえます。私にも経験があるのですが、おかしいと感じたら役所に相談することが重要です。

シュミレーションでは簡略化のため評価額が300万円であったとします。従って固定資産税額と都市計画税額はそれぞれ次の通りとなります。

固定資産税額:3,000,000 x 1.4% = 42,000円

都市計画税額:3,000,000 x 0.3% = 9,000円

従って合計額は51,000円となります。これが建物に対する固定資産税額ということになります。 新築であれば軽減措置もあるのですが、築年が経っている場合、そのまま課税されます。再建築価額が経年で上がるので、築年が経過しても税額がなかなか下がらないという問題もあります。



(3)火災保険

空き家とはいえ家屋である以上、万が一に備えて最低限の火災保険に入っておく必要があるでしょう。

保障内容により異なりますが、年額10,000円から30,000円程度は必要です。



(4)空き家管理サービス

空き家

空き家をそのまま放置してしまうと老朽化していきます。また無人になりますと犯罪の温床になったりという危険もあります。さらに、庭木や雑草が生い茂ってご近所迷惑ということもあります。

従って空き家とはいえ一定の管理を行わなければなりません。そのための維持費用がかかります。

空き家管理サービスは様々な会社が提供しており、その内容により料金もかなり幅があります。見回りだけであれば月額100円というところから、換気や除草など、様々なメンテナンスのサービスを付加するとそれなりのサービス料金になります。

中でもお勧めしているのはセコムのようなホームセキュリティの会社が提供している空き家管理サービスです。 一番大事な防犯がしっかりしていますし、様々なオプションサービスを提供しているからです。

セコムの例でいいますと、基本的な不法侵入対策と火災対策の実施で月額6,800円(記事執筆時)となっています。無料の資料はこちらより入手することができます。

選ぶなら、セコム・ホームセキュリティ

これに月1回の見回りや換気・通水と言ったサービスを付加すると追加の料金がかかる仕組みになっています。なかでも特に換気・通水を行ってくれるサービスはできれば受けた方が良いです。これをやることでだいぶ家屋の老朽化を防ぐことができます。



(5)特定空き家の指定によるコスト

特定空き家というのは2015年2月に施行された空き家対策特別措置法に基づき、市町村が倒壊などの危険がある空き家を「特定空き家」に指定した場合のその空き家のことです。

特定空き家に指定されると、上記(1)の固定資産税における課税標準額の特例を 使うことができなくなり、評価額を1/6や1/3にすることができなくなります

また、管理のために所有者は月に一度程度現地に赴いてメンテナンス作業しなければなりません。それが出来なければ、上記(4)のような空き家管理サービスを利用せざるを得なくなります。



活用の見込みが無ければ早めに売却したほうが良い

以上見てきましたように空き家には税金のほか管理維持費がかかり、特定空き家に指定されてしまうとそのコストが増大することになります。

かといって家屋を取り壊す場合には解体費用(木造で坪単価4-5万円くらい)がかかりますし、すでに説明した通り更地にすると固定資産税も高くなります。

したがって、将来にわたって活用の見込みがない空き家については、なるべく早めに売却してしまった方が良いということになります。長年住み続けた実家であり、思い出があって名残惜しいということはありますが、経済性を優先させれば早期売却の方が理にかなっていると言えます。

売却を検討する場合には不動産業者を介してということになりますが、この時には不動産業者に払う仲介手数料が結構高くつきます。仲介手数料は法律で売買価格(400万円を越す部分の場合)の3%プラス6万円を上限とすると定められており、そこにさらに消費税がかかります。



以上、空き家を抱えるといくらかかるか?維持にかかる費用をシミュレーションで解説、という話題でした。空き家問題の顕在化は予想より早く起きている印象です。売却するにしても早めに行動しないと売りにくくなっていくでしょう。

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