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過剰債務になったら
企業が過剰債務の状態になってしまったら、どうなるでしょうか?普通はいわゆる「倒産」ということになり、事業を再生しようとするのか、清算して消えて無くなるのか、ということになります。
従業員や取引先、融資した金融機関への影響は大きいですから、なんとか事業を再生したいということになります。ですが、事業再生も簡単な話ではなく、一定の債務を減免して(チャラにして)もらい、一旦過剰債務の状態をリセットするプロセスが必要となります。
法的整理と私的整理
この場合に取りうる方法として従来からある会社更生、民事更生といった法的整理に加えて、「事業再生ADR」という私的整理の方法を利用することができます。法的整理では裁判所が介在して進めますので、手続きに時間を要する問題がありますし、裁判所側もさばききれない、という問題があります。
そこで事業再生ADRでは公平な第三者(特定認証紛争解決事業者と言います)にはいってもらい、債務者と債権者で債務の減免について合意を図ります。これで利害関係者全員が合意すればそれで整理が成立します。もし一人でも合意しなければ、止むを得ず法的整理に進むことになります。
事業再生ADRは迅速さが売り
特定認証紛争解決事業者は2週間程度で債権者集会を招集し説明を行い、その後も短期間のうちに事業再生案を決議しますので、裁判所に比べると相当な迅速性ということになります。だれも時間を要することを望んでいませんから、多くの場合では全員合意となります。
下表は上場企業の適用事例ですが、多くが「成立」(全員合意)となっています。
(出典:平成29年経済産業省 事業再生ADR制度について)
事業再生ADRにはメリットがたくさん
事業再生ADRのメリットは全体の迅速性だけではなく、次のような点もあります。
(1)紛争解決事業者の介在により、事業再生ADRプロセス中に必要となるつなぎ融資が受けやすくなる。中小企業基盤整備機構の債務保証を受けた上で、事業再生円滑化関連保証を受けることができます。
(2)事業再生ADRが成立したあとの事業再生においても融資が受けやすくなる。中小企業信用保険法の特例を受けることができます。
(3)税制面での優遇がある。債務の免除を受けると免除益が法人税の課税対象となってしまいますが、ここに期限切れ欠損金を充てて損金参入することができます。それでも足りなければ青色欠損金を充てて、免除益を相殺することができます。債権者の側では、免除した債権は寄付金に該当せず損金算入となります。
(4)その後の法的整理の簡便迅速化。事業再生ADRを経たあとで、なお事業が再生せず、法的整理に進んだ場合には、すでに行われた資産評定結果等が考慮されるため、裁判官のみで手続きが進むなど、迅速な再生が可能になります。
事業再生ADRの利用方法は?
特定認証紛争解決事業者は、事業再生実務家協会(JATP)という民間団体が選任した弁護士、公認会計士、税理士などの専門家です。事業再生ADRの利用を検討している場合には、JATPにて無料の事前相談を受けることができますので、問い合わせてみると良いでしょう。
事業再生実務家協会(JATP)
http://www.turnaround.jp/
以上、新しい再出発のやり方「事業再生ADR」、という話題でした。さらに詳しく知りたいという方は、次の書籍をお勧めします。
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