この記事は「プロジェクト・マネージャーが作成するプロジェクト計画書とはどんなものですか?内容を簡単に教えてください」といった疑問に答えます。
目次
プロジェクト計画書の書き方
某外資系企業にてかれこれ20年ほどプロジェクト・マネージャーとして仕事しています。プロジェクト・マネージャー業務の中身にはいろいろありますが、中でもプロジェクト計画書の作成は重要なものです。
プロジェクト・マネージャーになりたての方またはこれからプロジェクト・マネージャーを目指そうという形にプロジェクト計画書の作成方法をご案内します。
プロジェクト計画書とは
プロジェクト計画書は一般的には次のような内容を含むものです。 主に5W1Hに沿って、プロジェクトの概要を記述します。
- 目的と理由
- チーム体制
- 責任範囲
- タイムライン
- 会議体
- 情報共有
- 管理指標
- 予算
- リスクと対応策
- コミュニケーション
以下にそれぞれの内容を説明します。
目的と理由
文字通りこのプロジェクトが何を目的として、なぜ実施する必要があるのか、を記載します。プロジェクトは多くの場合は組織の上長によって実施が決定されます。何らかのビジネス上の理由があってプロジェクトを行いますので、その理由を書くことになります。
もしくは、私の経験ではプロジェクトマネージャー(私)からプロジェクトを提案して実施することもあります。その場合には後で説明するプロジェクト・スポンサーと関係者が理解できるように詳しめに説明します。特に「理由」を明記することが重要です。
チーム体制
このプロジェクトを成功に導くためにどのようなメンバーが必要か?を記載します。具体的な名前が決まっていればその名前を、決まっていなければ「TBD」(To be decidedの略で未定の意味です)として、各人のタイトル、役割、責任、推定される必要工数などを明記します。
タイトルはプロジェクト・マネージャーのほか、プロジェクト・スポンサー、アナリスト、レビューアー、などのプロジェクト内でのタイトルです。スポンサーとは、文字通りプロジェクトにお金を出す人、決裁権がある人で通常は組織のトップの方です。
アナリストは業務の分析や設計を担当し、プロジェクトの中核となるメンバーです。レビューアーは関係組織の方でプロジェクトの進行を理解し、また自分の組織とプロジェクトとの橋渡し役になる人です。
責任範囲
プロジェクトチームの責任範囲を定義します。何が範囲に含まれ、何が範囲に含まれないか、最初に明確にして、かつ更新していきます。
プロジェクトを行っていると範囲の境界線が曖昧になり、ずるずると責任範囲が広くなっていくということがよく起こります。これを避けるために責任範囲を明確化するようにします。
タイムライン(スケジュール)
プロジェクト計画書におけるタイムライン(スケジュール)を概要のレベルで記載します。プロジェクトは通常はいくつかのフレーズに分かれて行いますので、フェーズ1がいつからいつまで、フェーズ2がいつからいつまでといったことを明確にします。
まだタイムラインの中には主要なイベント(マイルストーンと言います)を記載します。例えばプロジェクト開始日、運用開始日、プロジェクト終了日といった主要な日付を記載しておきます。
プロジェクトによっては進行によって先に進めるかどうかマネジメントか判断するということを行います。つまり一定のところまで進めて、その結果によって次のフェーズに進むかどうかを意思決定するということです。この判断のことをGo/No-Go判断といい、これをいつ行うかもタイムライン上に記載します。
プロジェクトによっては WBSといった詳細なプロジェクトスケジュールを作成しますが、私の場合は詳細スケジュールはプロジェクト計画書には盛り込みません。詳細スケジュールは更新頻度が高いためです。作成しても別途管理することが多いです。
会議体
プロジェクトの進捗をすり合わせるためにプロジェクトメンバーとは定期的にミーティングを行います。またスポンサーに対しても月に1回ぐらい進捗報告のミーティングを行います。
どのようなミーティングを誰とどのくらいの時間、頻度で行うのか、あらかじめプロジェクト計画書に記載します。私の場合は最近では、無駄な会議が増えないように定例でスケジュールせずに話題がたまった時点でスケジュールしたりしています。
情報共有
プロジェクトメンバー間の情報共有の仕組みについて記載します。例えば Microsoft 365を契約しているのであれば、SharePointサイトをを使います。
新しいサイトを準備してメンバーにアクセス権を与え、各種ファイルを格納するためのフォルダなどを準備しておきます。こういった管理仕事もプロジェクト・マネージャーの仕事です。
保存場所の具体的なURLや、フォルダーの構造、使い方のルールなどもプロジェクト計画書に盛り込んでおき、プロジェクトの開始にあたってメンバーに説明するようにします。
管理指標
このプロジェクトが何を持って成功したと考えるのか、 具体的で計測可能な管理指標決めます。管理指標は最終的にスポンサーと合意して、進捗報告のミーティングで毎回報告することになります。
管理指標に何を用いるかはプロジェクトの内容により全く異なります。単純に進捗割合パーセントとすることもありますし、対象とする業務のエラー率(歩留まり)だったり、従業員やお客様の満足度だったりします。
予算
プロジェクトは通常一定の予算で行うものであり、予算をどのように使うのかを検討してプロジェクト計画書に記載します。
プロジェクト予算については開始の時点でまだ決まっていないということも多くあります。そのような場合には、プロジェクト開始後にスポンサーや経理部門と一緒にプロジェクトの予算の割り付けを決めることになります。
またプロジェクト開始後は予実管理を行って、当初の見積もり通りにプロジェクトが進行できてるかどうかを確認するようにします。
リスクと対応策
プロジェクトは通常何らかの変化を起こすものであり、変化によって当初予期していないことが起こることがあります。このリスクをできる限り事前に想定して、それが起きた場合の対応策をあらかじめ練っておきます。
対応策についてはそのリスクの起こりやすさに応じて精密さが変わります。最初からかなり高い確率で起きることはわかってるリスクについては、ある程度細かく対応策を協議して決めておく必要があります。
反対に相当に低い確率でしか起きないリスクについては、大まかな対応策だけ記載しておけば十分です。これはそういうリスクもありうることをスポンサーに知らせることが主な目的だからです。
コミュニケーション
最後にコミュニケーション方法について記載します。この場合のコミュニケーションとは主に社内向けのコミュニケーションです。
プロジェクトの対象となる部署、及びその関係部署に対して定期的なコミュニケーションを行う必要があります。なぜなら、これから起きる変化を前振りしておく必要があるからです。これを怠るとサプライズになってしまい、後で必ず反発を招きます。
プロジェクトをスムーズに着地させるためには、十分なコミュニケーションが欠かせません。コミュニケーションのやり方はいくつかありますが、私が一番使うやり方はニュースレターです。
ニュースレターを1月に一度など定期的にメールで送信して今何が起きているのか、これから何が起きるのかといったことを伝えてきます。
ニュースレター以外にも、全体会議で発表したり、最近ではビデオを撮ってYouTubeなどにアップして視聴してもらったり、といったことも行います。あまり長文のメールを送ると読まれませんので、ビデオを使ったやり方は複雑な内容を伝えるのに役に立ちます。
いずれの方法にせよ、問い合わせ窓口を明確にして、相手方からの発信を受け取る仕組みも準備することが重要です。時にはネガティブな意見を受けることもありますが、そういった場合でもQ&Aを隠さず全社員に公開するようにしましょう。透明性が無いと不信感が増幅しやすいためです。
以上、プロジェクト計画書の書き方、という話題でした。昔はSE30歳定点説ということが言われ、それは嘘だと思いますが、一定の年齢でマネジメント職へのステップアップはアリだと思います。プロジェクト・マネージャーは課長・部長といった組織上のマネジメントとは違い、「職人」のようなところがあり、そこが自分では気に入っているところです。
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