【コンサルの裏技】変化が激しい時代のチェンジマネジメント方法論

20年ほどプロジェクトマネージャーとして多くのチェンジマネジメント案件を扱ってきました。経験から学んだチェンジマネジメントのやり方について説明します。



Change or Die 変わるか滅びるか

創業から長く続く企業に共通する特徴のひとつは、「変わり続けることを変えない」ということです。周囲の全てのものが変わっていく中で、自ら変わり続ける姿勢だけは変わらない、という感じです。

変化が激しいビジネスの世界では自然と適者生存のルールが働きますので、自らが変わらなければ簡単に淘汰されてしまうから、です。

生き残りたいなら変わるしかないですし、つまりは「Change or Die」(変わるか滅びるか)という考え方が備わっていることが企業が長続きする条件となります。





変化を起こす側と受ける側

変化には必ず「起こす側」と起きた変化を「受ける側」とがあります。多くは経営者や管理職といった人たちが変化を起こす側、一般従業員がその変化を受ける側です。

例えば新規事業への参入や既存事業からの撤退といった変化を経営者が起こし、それによる変化を従業員が受けます。

問題は、このときに変化を受ける側がすんなりと「受け入れる」ことはなく、どちらかというと拒否反応を示してしまうことです。人間は普通変化を嫌いますし、恐怖の対象だったりしますので、まず拒否や批判から入ります。「やりたくありません」とか「やってもダメだと思います」という感じです。

ここにプロジェクトマネージャーの出番があります。





プロジェクトマネージャーの役割

プロジェクトマネージャーの仕事は文字通りプロジェクトを管理することなのですが、それだけでは充分な貢献はできません。

プロジェクトは通常変化を起こすものですから、その変化をスムーズに導入できるように道筋をつけて、利害関係を調整するのも重要な役割です。

このため、変化を起こす側と受ける側の間に入って双方の橋渡しをします。ここで使うのがコミュニケーション戦術です。

この橋渡し役としてのプロジェクトマネージャーが存在していなかったり、機能しなかったりすると、変化の導入は失敗してしまうことが多いです。なんとなくうやむやになって元のやり方に戻ったり、最悪は企業が淘汰されてしまったりします。

経営者など変化を起こす側の当事者がこの役割を担っても良いのですが、当事者よりも中立的な立場にいるプロジェクトマネージャーの方が客観性を担保する意味で望ましいです。





コミュニケーション戦術

コミュニケーション戦術では「何をどう伝えるのか?」という話になります。

「何を」の部分については次のようなポイントを伝えることが重要です。

  • 変化の内容。そもそもどのような変化が必要とされているのか?
  • 変化の理由。なぜ今変わる必要があるのか?
  • 経営者の覚悟。変化を起こす側は何を捨てて何を取ろうとしているのか?
  • 動機付け。変化を受ける側へのモチベーションの提示

変化の内容については、そのままです。何がどう変わるのかをわかりやすく伝えます。

変化の理由はなぜ「今」なのかという観点で説明します。どうして来年ではなく今このタイミングで変わらないといけないのか伝えます。

経営者の覚悟は、主にトレードオフ(取捨選択)について語ります。物事は全てを総取りにはできないのが普通ですので、何かが欲しいなら何かを諦めなければいけません。

例えば、新規事業に注力するために既存事業の不振には目をつぶるとか、新システムの導入のために顧客対応の品質低下には目をつぶるとか、変化を起こす側からみて何が優先事項なのか、はっきりと伝えます。

最も大事なのは「動機付け」です。最終的に変化を受ける側がやる気になってもらわないと成功しませんので、そうなるように仕向けます。

仕向け方はいくつかありますが、経験上一番効果的なのは、「この変化はあなたたちで無ければ成し遂げられない」という承認要求を刺激する方法です。「成功したらボーナスを払います」のような金品で釣る方法は長続きしません。

「他の誰でもなくあなたたちだからこの変化にチャレンジできるのです」というメッセージを伝えます。



コミュニケーション方法

どうやって伝えるのか?」という部分については、手を変え品を変え上記の「何を」の分を繰り返し伝える、ということになります。その場合の媒体として使うのは次のようなものです。

  • 管理職説明会。管理職(マネージャー)クラスに対して社長などトップから変化の内容を若干詳しく説明します。従業員からの質疑応答に対応できるように次のトップからのメッセージに先立ち行われます。
  • トップからのメッセージ。社長など変化を起こす側のトップからの「宣言」です。内容は概要に止めて詳細は載せません。影響を受ける人全員に向けて変化の方向性を示すのが目的です。
  • 全体説明会。変化の影響を受ける社員に対して各部署の長やプロジェクトマネージャーから具体的に内容を説明します。
  • 社内Webサイト。社内の情報共有用にWebサイトを準備します。変化の内容説明や質疑応答事例(FAQ)などを全体で共有します。
  • 定期的なアップデート。プロジェクトが開始したら進捗状況について定期的に全体へお知らせします。お知らせ方法は以前はメールが主でしたが、最近ではビデオや音声メッセージが使われます。メールよりも「体温」が伝わって理解されやすいためです。




レジスタンスとの戦い

どのような変化でも必ず「抵抗勢力」が生まれます。社内レジスタンスです。

社内レジスタンスとの戦いは想定の範囲に含めて、あらかじめ準備します。一番いけないのは変化を起こす側が反対意見をスルーしてしまうことなので、「あなたたちの声も聴いていますよ」という仕組みを作ることが必要です。

メールであれ、社内Webサイトのお問い合わせフォームであれ、何らかの窓口を設定します。問い合わせや反対意見については冷静に回答し、それを全社に共有します。ただし質問者は匿名で。

反対意見の中にはむしろ理にかなっているものや、グッドアイデアというものもあります。こういったものは積極的に採用して、変化を起こす側も柔軟性を示すことが重要です。こうすることでレジスタンスを「仲間」に取り込むことができるからです。

ただ、どうしても「言うことを聞かない人」はいるので、そういう場合は上長から話をしてもらったり、最悪の場合は「業務命令です」として対応するのですが、そうならないように対話を重ねるようにします。

ただし働き方改革の折、従業員への過度な負担や多残業など違法な状態にならないように、指標をモニターして注意する必要があります。プロジェクトマネージャーはそこまで配慮します。

以上、変化が激しい時代のチェンジマネジメント方法論、という話題でした。変化が必要なことは誰でも頭では分かるのですが、本当にそれが自分に起きるとつい反発から入ってしまうものです。それを最初から計算に入れて、PDCAを高速で回転させるのこと、そのプロセスを全体へ共有していくことが成功への秘訣となります。

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