【事業計画書】「コロナがおさまったら」という危険な想定

この記事は「これから先の事業計画をどのように考えたら良いか分かりません。なにか考え方の指針は無いでしょうか?」といった疑問に答えます。



事業計画書の作り方

新型コロナウイルス問題もワクチン接種がゆっくりですが徐々に広がりつつある昨今ではあります。そうした中、自分のお客様の「事業計画」について考える機会があり、自分の個人的な考えをすこしまとめておこうかと思います。

なお事業計画の書き方自体は以前に以下のの記事にて説明しており、書き方から学びたいという方はぜひご一読いただければ幸いです。





3つのシナリオ

まずは事業計画を考えるにあたり想定すべきシナリオについて説明します。

通常は以下の3つのシナリオを想定して、それぞれに対応した事業計画を考えていきます

  •  ベストのシナリオ(最も楽天的なシナリオ)
  •  悪夢のシナリオ(最も悲観的なシナリオ)
  • 通常のシナリオ(最も可能性が高いシナリオ)

以下にそれそれ見て行きましょう。



ベストのシナリオ

ベストとは「最も良い」という意味で、事業計画を考える側にとって最も都合のよい将来予測をベースにしています。つまり最も楽天的なシナリオということです。

現在の状況で言えば、「新型コロナウイルスの蔓延は終息してパンデミック前の生活や社会の状態に戻る」というものでしょう。飲食業のような現在大きな影響を受けている業種では、願望としてこのシナリオを設定したいかと思います。

そして現実に自分のお客様の事業計画を伺うと、このシナリオしか持っていないということがあります。つまり、「終息するまで待つしかない」といった考え方をしておられます。

自分はこれは非常にまずいと考えており、以下で説明する通常のシナリオを採用して、それに対応した事業計画を練り直すようにご案内しています。

なぜこのシナリオがまずいかと言うと、確率論的に起きる可能性が低いからです。

自分は医師でもパンデミックの専門家でもありませんが、専門家が出している色々な論文や記事を読んでいると、そう簡単に終息するということにはならないと考えています。もちろん希望としては早期に終息して元に戻ってほしいわけですが、ビジネスの計画を考えるうえでは不十分なものです。





悪夢のシナリオ

ベストのシナリオの対極にあるのが悪魔のシナリオです。つまり最も悲観的なシナリオです。

悪夢のシナリオでは例えば「変異ウイルスの出現に対応することができず、感染者数も死亡者数も一方的に伸びていく」といったことがあるかと思います。

これもまた考えにくいシナリオです。mRNA型ワクチンといった新しい技術の登場でワクチン開発のスピードが高速化しており、今後さらに速くなっていくと予想されています。変異ウイルスの出現はおそらく続くと思いますが、新しいワクチンの登場によって重症化が拡大していくといった事態は起きにくいものと考えられます。

従って、このような絶望的なシナリオに基づいて事業計画を考える必要もありません。



通常のシナリオ

では通常のシナリオ、すなわち最も可能性の高いシナリオとはどんなものでしょうか?

情報をもとにした自分の予想では、感染者数が爆発的に増えた地域から今後も変異ウイルスが出現してくるはずです。ウイルスの変異は頻繁に起きているので、確率論的に感染者が多い所ほどさまざまな変異で起きており、そういった変異株のなかから時として凶悪なものが世界に広がっていくでしょう。

現時点でWHOが認定した変異株はイギリスから出たアルファ型、ブラジルから出たベータ型、インドから出たガンマ型ですが、多分今後も続くと考えるのが普通です。

ただ変異型に対してもワクチンの開発はされるはずで、しかもその開発期間は短くなっていきます。開発から治験があり使用承認される必要がありますが、これもだんだん高速化していくと考えられます。

また今後はワクチンだけでなく、治療薬の開発や使用も加速度的に増えていくでしょう。 

すると、現時点で最も可能性の高いシナリオは「今後も定期的に変異株によるパンデミックが起こって、その度に一定の感染防止策が求められ、定期的に新しいワクチンを摂取するといった暮らしが常態化する」というものです。さらに「治療薬の登場によって、だんだんに新型コロナウイルスはただの風邪になっていく」と考えられます。

問題はその「だんだん」がどのくらいの期間か?ということです。まだこれについてはっきりした見解を見たことがありませんが、事業計画が3~5年先くらいを見ていることを考えると、その間は「変異ウイルス→行動制限→新しいワクチン接種」のサイクルが続くであろうと個人的には想定しています。

これが最も可能性の高いシナリオと想定して、ビジネスの計画を立てることをお勧めしています。



事業計画への反映

事業計画書への落とし込みを考える場合には、当然ですが最も可能性が高いシナリオをベースにして作っていきます。つまりベストのシナリオは一旦忘れて、最も可能性が高いシナリオの場合に市場性や資金繰りがどうなるか?を考えます。

その場合に結論として、単にコロナの終息を待って現在の事業をそのまま継続していくという考えが通用しないと分かることもあるでしょう。悲しい現実ですが、それを受け入れざるを得ません。むしろ早めに軌道修正する方が将来にとってプラスになるはずです。

もし想定外の事態により「ベストのシナリオ」が起きた場合には、それはそれで比較的簡単に軌道修正することができるでしょう。逆に「悪夢のシナリオ」に転じてしまったとしても、一定の対応は可能です。このように良いことと悪いことを両にらみでプランを立てておくことが重要です。 

私の方でも事業計画書の作成についてサポートしておりますので、お手伝いできることがありましたらご連絡いただければ幸いです。




以上、「コロナがおさまったら」という危険な想定、という話題でした。繰り返しますが、私はパンデミックの専門家ではなく個人的な見立てに基づいた意見に過ぎません。ですが、単に「コロナがおさまったら」と想定しているのはビジネスを考える上では危険なものだと思っています。

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