【やさしい経理(8)】税金を仕訳する【法人税・消費税・所得税などは経費になるのか?】

この記事は「法人税・消費税など各種税金は会社や個人事業主の経費になりますか?経費になる場合にはどのように仕訳すれば良いですか?」といった疑問に答えます。



消費税の扱い

税金の中でも最も馴染み深いのが消費税でしょう。普段購入する物やサービスのほとんどに消費税が課されているためです。

消費税の仕訳方法は税込経理と税抜経理という2つの方法があり、どちらでも良いことになっています。下記の例ではそれぞれ1,000円で商品を仕入れて、10%消費税の100円と合わせて支払ったものです。

取引: 商品を現金で仕入れた(税込経理)

仕入1,100現金1,100

取引: 商品を現金で仕入れた(税抜経理)

仕入1,000現金1,100
仮払消費税100

取引: 商品を現金で販売した(税込経理)

現金1,100売上1,100

取引: 商品を現金で販売した(税抜経理)

現金1,100売上1,000
仮受消費税100

税込経理では文字通り消費税込みの金額で1行の仕訳を行います。これに対して税抜経理では支払った消費税は仮払消費税として、受け取った消費税は仮受消費税として分けて仕訳します。

それぞれ細かなメリット・デメリットはあるのですが、他に理由がなければ税込経理をお勧めします。その方が仕訳が簡便だからです。

現在は軽減税率が導入されたこともあり、税抜経理の方が消費税を明示的に仕訳けするためわかりやすいという面もあります。ですが、会計ソフトやクラウド会計システムを使うのであれば、最終的にソフトウェアが消費税を自動計算しますので、あえて税抜経理をする必要もありません。

消費税の課税事業者となるほど売上規模があれば、会計ソフトやクラウド会計システムを使った方が経理全体の効率が良いですので、結果的に税込経理の方が理にかなっています。



法人税、住民税及び事業税の計上と支払

法人の場合は決算で事業年度の所得を計算して、法人税、住民税及び事業税の金額を計算します。この法人税、住民税及び事業税の金額はその事業年度の利益に対してかかるもので、費用ではありません

費用ではないのですが、会計処理上は一旦次のように費用として仕訳をします。

取引: 法人税、住民税及び事業税の金額を見積計算して計上(決算時)

法人税等1,000未払法人税等1,000

この「法人税等」という勘定科目は会計上は費用の科目なのですが、前述のとおり費用ではないので、法人税の申告書上は別表四という書類で損金に不算入とし、当期の所得を増やす調整を行います。

また、この法人税等に含まれるもののうち「事業税」だけは支払ったときに費用とすることが認められているため、前期に見積計上した事業税額は翌期に別表四で損金に算入とし、所得を減らす調整を行います。

翌期になって法人税、住民税及び事業税を納付したら、次の仕訳をします。

取引: 前期の法人税、住民税及び事業税を納付した

未払法人税等1,000普通預金1,000

さらに法人税は中間納付として期の途中で前期の納税額から計算された一定の金額を納めて分割払いするルールになっています。これを支払ったときの仕訳は次のようになります。

取引: 法人税、住民税及び事業税の金額を中間納付した

法人税等500普通預金500

中間納付も一旦は費用として計上しますが、費用ではないので最終的には別表四で損金に不算入とし、当期の所得を増やす調整を行います。

こうして1事業年度が終わると再び決算で法人税、住民税及び事業税の金額を見積計算して計上します。この繰り返しを毎年行って行きます。背景はいろいろ面倒ですが、経理としてはこの3パターンだけ抑えれば大丈夫です。法人の税務は複雑ですから、あとは税理士に任せる方が良いです。





消費税の計上と支払

消費税については前述のとおり税込方式または税抜方式によって、取引の都度支払った税額または受け取った税額を経理していきます。期中の通常の取引についてはそれだけで、特別なことはありません。

ただ消費税の場合は取引の内容によって課税(10%)、軽減税率適用(8%)、免税(0%)、非課税(法律で非課税と定められているもの)、不課税(課税対象外であるもの)といった区分があり、これも合わせて記録する必要があります。

さらに消費税の計算方法には本則課税と簡易課税があり、本則課税でも場合により計算方法が異なるなど、かなり複雑になっています。会計ソフトやクラウド会計システムの場合、消費税の区分はあらかじめ設定されているものを選択して使ったり、自分で設定したりして自動的に税額計算できるようになっていますが、個人事業主や法人が対応するのはなかなか難しいものです。

現実的には、以下の記事で紹介したフローチャートで消費税の課税事業者になると分かったら、早めに税理士にお願いして税額計算と申告をしてもらう方が賢明です。

消費税額の金額さえ出てしまえば仕訳そのものは次の通り簡単なものです。

取引: 消費税を計上した(税込方式)

租税公課1,000未払消費税1,000

取引: 消費税を計上した(税抜方式)

仮受消費税3,000仮払消費税2,000
未払消費税1,000

税込方式では消費税額は「租税公課」の勘定科目で仕訳し、相手科目はまだ計上しただけなので「未払消費税」です。税抜方式の場合は、預かった消費税(仮受消費税)と支払った消費税(仮払消費税)を相殺して、差額を「未払消費税」とします。

どちらも消費税を納付したときに、次のように仕訳します。

取引: 消費税を納付した

未払消費税1,000普通預金1,000

また、消費税の場合、支払った消費税が預かった消費税より大きければ差額が「還付」されます。その場合は次のように仕訳します。

取引: 消費税が還付の見込みとなった(税込方式)

未収消費税1,000雑収入1,000

取引: 消費税が還付の見込みとなった(税抜方式)

仮受消費税2,000仮払消費税3,000
未収消費税1,000

税金の還付は「雑収入」として仕訳します。還付される予定の金額は「未収消費税」の勘定科目で仕訳して、入金時に次のように処理します。

取引: 消費税が還付された

普通預金1,000未収消費税1,000

なお、消費税については法人税や住民税と異なり、納付の場合は損金の額に算入(費用として扱う)し、還付の場合は益金の額に算入(収益として扱う)ことにご留意ください。





固定資産税の支払

固定資産税または償却資産税は法人または個人事業主の事業用の固定資産や償却資産に課せられます。固定資産とは土地や建物、償却資産とは土地や建物以外の資産で、例えば機械装置、一定額以上の備品があります(自動車は自動車税を払うため含まれません)。

固定資産については市町村などが固定資産税評価額に基づいて固定資産税額を計算し、毎年5月頃納税通知書を送付してくるので、申告する必要はありません。

一方、償却資産については毎年、1月1日現在でその市町村に所有する償却資産の状況等について、1月末日までに申告する必要があります。申告用紙等は通常12月頃に送られてきます。

申告をすると、償却資産の場合も固定資産税の納税通知書が5月上旬に送られてきます。ただし償却資産のみで課税標準となるべき額が150万円に満たない場合は、免税点未満となり償却資産税は課税はされません。

この毎年1月の償却資産の申告は忘れやすいので、注意が必要です。

なお、固定資産税の支払時の仕訳は次のとおりとなります。

取引: 固定資産税を納付した

租税公課1,000普通預金1,000

固定資産税も損金の額に算入(費用として扱う)されます。



自動車税の支払

自動車税または軽自動車税は自動車・軽自動車の所有者が年に1回納める税金で、毎年4月1日時点の車検証上の所有者(実際だれが使っているかに関わらず)に対して課税されます。 

5月ごろに納税通知書が郵送されてくるので納付します。事業で車両を使っている場合は、次の仕訳をします。

取引: 自動車税を納付した

租税公課1,000現金1,000

勘定科目は「租税公課」を使う場合と「車両費」を使う場合があり、どちらでも良いです。車両に関する費用としてまとめて評価したい場合は「車両費」に計上します。

この「車両費」はガソリン代やオイル交換代その他の修繕代など車両のメンテナンスに関するものを計上して、自動車に係る費用を評価するために使います。

個人事業主で車両を家事用にも使う場合は、合計した「車両費」を家事案分して事業部分だけを必要経費とします。



収入印紙(証紙)の購入と使用

日本の商習慣では依然として「ハンコ」と「印紙」の紙文化が根強く、契約書や領収書といった書類(課税文書といいます)を作成したときには「収入印紙」を貼らなければなりません。ここで「印紙」は国に納める税金、「証紙」は地方自治体に納める手数料という違いがありますが、経理にとっての取り扱い上は同じで、次のとおり「租税公課」として仕訳し経費になります。

取引: 収入印紙(証紙)を購入した

租税公課1,000現金1,000

取引: 収入印紙(証紙)を貼って割印した

仕訳なし

収入印紙を購入の際にはいったん「貯蔵品」に資産として計上し、使用のときに「租税公課」に振替えて費用化するのが正式な方法ですが、面倒なので上記のように購入時に費用計上して良いルールになっています。

印紙については、そもそも必要なのかどうか?が迷いますし、必要と分かっても金額がいくらなのか?でまた迷います。この場合、こちらの記事を参考にしてください。

法律上、印紙を貼り忘れると「過怠税」というペナルティが課されますので、たかが印紙と油断せず注意して取り扱うようにしましょう。



個人事業主の税金の支払

個人事業主の場合、法人税に代えて事業所得に対して所得税が課税されます。事業所得単独に課税される訳ではなく、給与所得や不動産所得といった他の所得と合算して総合課税されます(一部の所得は分離課税されます)。

このように計算された所得税は事業の必要経費とすることはできないので、経理としては仕訳は不要です。単に納付して(または還付を受けて)それで完了となります。

また、個人事業主には個人住民税や個人事業税が課されます。個人住民税は必要経費にはなりませんが、個人事業税は必要経費になりますので計上もれにならないように注意しましょう。

取引: 所得税・住民税を納付した

仕訳なし

取引: 個人事業税を納付した

租税公課1,000現金1,000

また個人事業主が消費税を納付した場合も必要経費となります。

取引: 個人事業主が消費税を納付した

租税公課1,000現金1,000

事業の必要経費にならない各種税金を事業用の銀行口座から払った場合は、必要経費とならない部分は「事業主貸」で仕訳して決算でプライベートのお金と相殺するようにします。

取引: 個人事業主が所得税を事業用の銀行口座から払った

事業主貸1,000普通預金1,000




以上、税金を仕訳する、という話題でした。各種税金で自分で計算・申告するものは可能であれば税理士にお任せ頂く方が安心です。ですが、金額さえ決まればその後の記帳はこちらで説明したとおり簡単なものです。記帳は自分で行うということは十分に可能です。

★★★人気記事★★★