【やさしい経理(4)】現金・銀行口座の引き出し・預け入れを仕訳する【個人事業主の方は注意】

この記事は「現金と銀行口座の取り扱いに関する仕訳をどのように経理したら良いでしょうか?基本的なところを教えてください」といった疑問に答えます。



現金を銀行やATMから引き出す場合

事業を開始すると銀行口座にお金を預けたり、引き出したりといったことが頻繁に起きます。キャッシュレス時代を迎えていますが、まだまだ現金の扱いが多いのが現実です。

銀行口座への現金の預け入れと引き出しは次の仕訳をします。銀行の窓口でもATMを使っても仕訳は同じです。

取引: 現金を銀行に預け入れた

普通預金1,000現金1,000

取引: 現金を銀行から引き出した

現金1,000普通預金1,000




時間外手数料を払った場合の扱い

ATMを使う場合時間外手数料がかかったり、コンビニのATMでは手数料がかかったりします。この場合仕訳としては次のようになります。現金の引き出しと手数料の支払の2つの取引が同時に発生した、として仕訳します。

現金1,000普通預金1,000
支払手数料220普通預金220


振込手数料の扱い

銀行口座から他人(他社)の口座へ送金すると、通常は振込手数料がかかります。この場合の、振込手数料の扱いについては注意が必要です。

それはその振込手数料がこちら側の負担なのか相手側の負担なのかという点です。日本の商習慣では振込手数料はお金を貰い受ける方が負担するという場合があります。

したがって仕訳としては次の2パターンが考えられます。

取引: 銀行から取引先に代金を振り込んだ(相手が振込手数料を負担)

材料仕入780普通預金780
材料仕入220普通預金220

この例では材料を仕入れた取引先が振込手数料を負担していますので、振込手数料220円は「材料仕入」の勘定科目で仕訳します。

 当社は振込手数料を含めた1000円の出金となりますが、取引先の銀行口座には手数料を負担したため780円だけが振り込まれます。「材料仕入」の対価は1000円のまま費用計上されます。

取引: 銀行から取引先に代金を振り込んだ(当社が振込手数料を負担)

材料仕入1000普通預金1000
支払手数料220普通預金220

この例では当社が振込手数料を負担していますので、振込手数料220円は「支払手数料」の勘定科目で仕分けします。取引先の銀行口座には請求金額通りの1000円が振り込まれます。

このように請求書をよく見てどちらが振込手数料を負担するのか確認し、仕訳パターンを変える必要がありますので、注意しましょう。



小口現金の管理をどうするか

「お金に色はついていない」と言いますが、事業の経理については「事業のお金」と「個人のお金」をしっかり分けて管理することが必要です。とはいえ、2つ財布を持って歩くのも非現実的ですから、「記録」することでこの2つを分けるようにします。

まず個人事業主の場合は、「事業主貸」勘定を使って個人用の支出を除外するようにします。

取引: コンビニで収入印紙(事業用)を買ったついでにタバコ(個人用)を買った

租税公課200現金700
事業主貸500

レシートに記載の金額は700円ですが、そのうち200円が事業で使う収入印紙代、タバコ代500円は「事業主貸」として、最終的に元入金と相殺するようにします。

次に法人の場合は、そもそも会社のお金を個人の目的で使えばそれは横領ですから、そういったことが起きないように管理します。昔からよくあるやり方はこういった手提げ金庫で現金を管理するやり方です。

社長や担当者がここに現金を出し入れして管理します。さらに勘定科目も「小口現金」を使って勘定の残高と現金の有高が一致するかどうか確認するようにすれば完璧です。

取引: 銀行から引き出した現金を小口現金として金庫に入れた

小口現金1000普通預金1000

取引: 小口現金で給湯室の洗剤を買った

消耗品費1000小口現金1000

ここまでやらない場合でも、以下の記事で説明した「日記帳(おこずかい帳)」をつけて事業用の現金払いを記録しておくことをお勧めします。私の経験ではこの日記帳は多くの小規模事業者がつけています。

日記帳はノートに手書きでもエクセルに記載でも何でもよい。ノートの場合にはこういったものを利用すると良いです。



複数の銀行口座がある場合

事業で使う銀行口座は一つとは限らず複数あることの方が普通です。そういった場合に「普通預金」という勘定科目をどうやって運用するか?というと、銀行口座ごとに勘定科目を分けて使う方法がおすすめです。

例えばA銀行の普通口座は「A銀普通」、B銀行の普通口座は「B銀普通」といった具合です。このように運用するとそれぞれの銀行の勘定の残高と通帳に記帳されている残高と一致しているかどうか確認しやすくなります。





積立をする場合

将来への備えとして毎月一定の金額を積み立てるということがあります。そのような場合には「定期積立」といった勘定科目を使ってお金を振替える仕訳をします。

取引: 普通預金口座から定期積立口座に振替えた

定期積立1000普通預金1000


個人事業主の銀行口座の扱い

個人事業主の場合に事業用の口座と個人用の口座を分けるべきか?という問題があります。事業の規模にもよりますが、原則としては事業用と個人用と分けるべきです。法律上の要請はありませんが、実務上分けた方が後々やりやすいのです。 

事業用の銀行口座を分けることで生活費と区別できるようになり、経理がしやすくなりますし、事業のお金の動きもより良く見えるようになります。 さらに屋号付きの個人口座を開設することで、取引先から見た信用もアップすることができます。

記事執筆時点において楽天銀行において「屋号+個人名」による口座開設が可能で、ゆうちょ銀行では「屋号」を別名とした口座開設が可能です。いずれもマネーロンダリング防止のため、開業届など事業を行っている証明が必要となります。



法人口座と代表者個人口座の違い

法人の場合は、会社のお金と個人のお金は完全に分けて管理します。これらを混同してしまうと自分の会社であっても横領になりますので注意しましょう。

法人口座は文字通り会社が法人名義で開設する銀行口座です。事業で必要となるお金の管理を行うのが法人口座です。

これに対して代表者の個人口座は代表者の生活のための銀行口座です。ひとり社長の場合は会社のお金は法人口座で、プライベートのお金は個人口座で管理するということになります。

ひとり社長が起業した場合の問題点として、この法人口座の開設が容易ではないということがあります。個人口座はネットや店舗で申し込めばすぐに口座開設できますが、法人口座の場合はやはりマネーロンダリング防止の観点から、登記簿謄本やその他の情報をすべて揃えて手続きする必要がありますし、その審査も少なくとも2週間ぐらいはかかります。

そして審査に落ちるという例も珍しくありません。このため法人口座が開設出来るまで社長の個人口座で代用して事業を行っていかざるを得ないということがあります。

この時に生活費と事業の費用とを区別して仕訳するように注意が必要です。

起業時の法人口座の開設について、一番良いのは地元の信用金庫や信用組合といった金融機関で開設することです。法人口座を開設すると融資の相談などがしやすくなり、 今必要でなくても将来を見越して地元の金融機関と関係を作った方が良いからです。

メガバンクや大手の地方銀行の方が見た目が良いですが、なかなか審査に通りませんし、個人の場合と違って口座維持のための手数料がそれなりに高くなります。また、ネット銀行ですと口座維持手数料や振込手数料が安いのが魅力ですが、 取引先からの信用という面で業種により若干問題があるかもしれません。このため、まずは地元の信用金庫や信用組合での口座開設をお勧めしています。 





以上、現金の出し入れを仕訳する、という話題でした。現金や銀行口座の扱いは仕訳としては簡単なものですが、様々な話題や注意点があります。まずはこちらで書いた内容をご理解頂ければ、大部分の経理に対応できるはずです。

★★★人気記事★★★