【やさしい経理(9)】固定資産の購入・売却・減価償却費を仕訳する【管理実務の基本を解説します】

この記事は「固定資産の購入や売却、減価償却などがややこしいので、経理初心者が最低限知っておくべきことだけ教えてください」といった疑問に答えます。

固定資産はそれだけで1冊の本になるくらい奥が深いですが、一般的な会社で経理初心者が知っておくべきことはそれほど多くありません。よく取り扱うであろう、自動車、土地建物、備品、リースといった話題を中心に解説します。



自動車の購入

事業で使う自動車を購入したときは、購入契約書の内容に従って仕訳をします。契約書には様々な金額が並んであり、どの金額をどの勘定科目にするべきか?が混乱しがちです。また消費税の扱いも要注意です。

基本的に以下の勘定科目の対応関係だけ整理してしまえば、仕訳そのものは単純です。

勘定科目含まれるもの消費税の扱い
車両運搬具本体価格(値引き後)、オプション、納車費用10%課税
保険料自賠責保険、任意保険非課税
支払手数料○○代行費用、○○管理費用など10%課税
支払手数料法定費用非課税
租税公課自動車重量税、自動車取得税不課税
預託金リサイクル預託金不課税

仕訳は次の通りとなります。

取引: 自動車を購入した

車両運搬具2,000,000現金2,400,000
保険料60,000
支払手数料40,000
支払手数料(法定)100,000
租税公課150,000
預託金50,000

一部をローンで払うときは貸方に「未払金」としてローン金額を計上します。

車両運搬具に計上する金額は「取得価額」と言われ減価償却の対象となります。つまり、最初は資産に計上して、決算時に徐々に費用化していきます。この費用のことを「減価償却費」といい、費用化する期間のことを「耐用年数」といいます。

耐用年数は固定資産の種類ごとに法律で決められており、同じく法律で決められている償却方法に従って減価償却費を計算します。例えば、普通自動車の場合6年、軽自動車の場合4年です。償却方法は定額法または定率法となります(個人事業主の場合は別途届出ない限り定額法が強制適用です)。





自動車の売却

自動車を売却した場合の注意点としては、(1)期首から売却日までの減価償却費を計上すること、(2)売却益または売却損を認識する(法人の場合のみ)こと、(3)リサイクル預託金の扱い、(4)法人の場合と個人事業主の場合では仕訳パターンが異なること、です。

仕訳としては次のようになります。

取引: 自動車を売却した(法人)

現金(売却代金)1,300,000車両運搬具1,200,000
減価償却費100,000預託金50,000
固定資産売却益150,000

ここで車両運搬具は期首時点での帳簿上の価額です。購入時の取得価額からすでに減価償却した分が引かれた金額です。減価償却費は期首から売却日までの日割り計算したものです。

リサイクル預託金は次の所有者へ引き継がれるため、購入時の金額のまま貸方に記載します。これらの差額が固定資産売却益または固定資産売却損です。損益計算上は固定資産売却益は特別利益、固定資産売却損は特別損失として扱います。

取引: 自動車を売却した(個人事業主)

現金(売却代金)1,300,000車両運搬具1,200,000
減価償却費100,000預託金50,000
事業主借150,000

個人事業主が自動車を売却したときは、固定資産売却益または固定資産売却損に代えて、事業主借または事業主貸を使います。それ以外は同じです。

これは個人事業主の場合は、固定資産の売却による損益は「事業所得」と考えずに、「譲渡所得」という別の区分で考えるためです。このため、売却時は事業主借または事業主貸で仕訳して決算で元入金と相殺します。



自動車の購入(下取り)

自動車の購入時にはこれまで使っていた自動車を下取りしてもらい買い替えるということが多いです。その場合どう考えるのか?というと、単に売却と購入を分けて仕訳すれば良いことになります。

いっぺんに仕訳しようとすると混乱しますから、「何をいくらで売って、何をいくらで買ったのか?」と分けて整理すると良いです。



中古自動車の場合

中古車の場合であっても購入時の仕訳は新車の場合と同じです。

取引: 自動車を購入した

車両運搬具2,000,000現金2,400,000
保険料60,000
支払手数料40,000
支払手数料(法定)100,000
租税公課150,000
預託金50,000

ただし、中古車の場合は減価償却費の計算方法が新車の場合と異なりますので注意が必要です。新車であれば、普通自動車なら6年、軽自動車なら4年が法定耐用年数として決まっており、これに基づいて減価償却費を計算します。

中古車の場合には「何年落ちか」によって耐用年数を次の式で計算します。

法定耐用年数-経過年数+経過年数×0.2=耐用年数

(1年未満の端数は切り捨て、計算の結果が2年以内の場合の耐用年数は2年)

例えば2年落ちの普通自動車であれば、

6 – 2 + 2 x 0.2 = 4.4 →4年

となります。

10年落ちの普通自動車であれば、法定耐用年数の6年を超えているので、次のように計算します。

6 x 0.2 = 1.2 →2年 (計算の結果が2年以内の場合の耐用年数は2年)

つまり定額法を採用していれば、利用開始が期首なら1年目に半額を減価償却して、2年目は1円を残した残額を減価償却します。

自動車に限らず事業で使い続けている有形固定資産は減価償却が終わっても「1円」を残すルールになっています。そのような固定資産があることを帳簿上に示す意図があります。

備品や機械などを中古で買った場合も上記の計算式で耐用年数を計算します。





土地建物の購入

事業用に土地を購入したときは、以下のものは取得のために要した費用として「土地」勘定科目として仕訳します。購入代金以外にも「土地」となるものがありますので注意しましょう。

  • 土地の購入代金
  • 不動産業者などに支払う仲介手数料
  • 未経過固定資産税
  • 土地を利用するための建物の取り壊し費用

「土地」は減価償却の対象とはならず、これらの費用は費用化されることはありません。

一方、次の費用は当期の費用とすることができます。

  • 司法書士の登記費用(支払手数料)
  • 登録免許税(租税公課)
  • 契約書に貼った収入印紙(租税公課)
  • 不動産取得税(租税公課)

仕訳パターンとしては次のようになります。土地の購入代金が消費税の非課税となる点にご注意ください。

取引:事業用の土地を購入した

土地20,000,000預け金(手付金)2,000,000
租税公課1,000,000未払金(ローン)13,700,000
支払手数料200,000現金5,500,000

建物の購入も基本的な考え方は同じです。建物の取得のために要した費用は「建物」勘定とします。建物は土地と異なり、一般に時間の経過で価値が減るため、減価償却の対象となります。

その耐用年数は構造や使用目的によって細かく決められているので、国税庁ホームページで確認しましょう。よく使う耐用年数としては鉄筋コンクリート造の住宅(マンション)で47年、店舗で39年、鉄骨造の事務所で38年、木造の住宅で22年などがあります。

土地と建物を一緒に購入した場合は、原則としてそれぞれ分けて仕訳します。マンションの購入などのように土地(区分所有権)と建物を一括購入した場合は金額の内訳が分からないことが多く、土地と建物の固定資産評価額を使ってを按分計算する必要があります。固定資産評価額は納税通知書に記載がありますが、通知書が未達であれば、役所で固定資産税評価証明書を取得すれば分かります。



備品の購入

備品を購入した場合にはその金額によって扱いが異なります。大まかに言って、10万円未満なら資産として計上する必要は無く当期で全額を費用化することができます。

20万円未満なら、三分の一を当期の費用にすることができます。30万円未満なら、青色申告を条件として全額を当期の費用にすることができます。

30万円以上であれば、通常通り固定資産として資産計上して減価償却の対象となります。

仕訳パターンとしては次のようになります。

取引:パソコン(8万円)を購入した

備品80,000現金80,000

ミスを防ぐために、いきなり費用計上せずにいったん「備品」に計上して、決算で費用に振り替えます。

取引:決算時に費用化した(8万円のパソコンの場合)

減価償却費80,000備品80,000

取引:決算時に費用化した(18万円のパソコンの場合)

減価償却費60,000備品60,000

取引:決算時に費用化した(25万円のパソコンの場合。青色申告)

減価償却費250,000備品250,000


リースした場合の扱い

複合コピー機などをリースして事務所に設置した場合、そのリース料の仕訳をどうするか?という問題があります。リースの場合は、おおまかに言ってリース期間が終わった時にその資産の所有権が貸し手と借り手のどちらに帰属するかによって仕訳パターンが異なります。

所有権が移転する場合は、「リース資産」と「リース債務」という勘定科目を使ってやや複雑な仕訳をします。

ですが、借り手が中小企業であり、リース期間が1年以内のリース契約もしくはリース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下の場合には、簡便的に次の仕訳で費用計上することが認められています。

取引:複合コピー機(100万円相当)のリース料を払った

リース料10,000現金10,000

簿記の問題集では「リース資産」と「リース債務」のパターンが多いですが、中小企業の実務ではほとんど簡便的な仕訳です。また、レンタルした場合も同様の仕訳となります。

取引:建築現場で重機をレンタルした

リース料10,000現金10,000


固定資産台帳(管理台帳)の扱い

固定資産台帳は会計帳簿の1つです。特に法律で作成が義務付けられている訳ではありませんが、作成しておくと便利であり、ほとんどの場合に作成します。

その項目は以下のようなものです。

資産名購入日使用開始日取得価額期首帳簿価額当期償却額期末帳簿価額摘要

固定資産台帳を持つメリットは(1)決算時に減価償却費の計算漏れを防げる、(2)毎年1月の償却資産税の申告漏れを防げる、などです。

なお、freeeのようなクラウド会計ソフトでは固定資産台帳を作成する機能があり、台帳に登録しておくと決算時に自動的に減価償却費を計算してくれる機能があります。固定資産の数が多い会社では非常に便利な機能です。





以上、固定資産の購入・売却・減価償却費を仕訳する、という話題でした。固定資産に関連する取引は日常的に扱うものではありませんが、金額が高額になることが多く、うっかりミスでも影響が大きくなりがちです。まずしっかりと実務の基本を押さえるようにしましょう。

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