【起業】はじめての給与計算。所得税や社会保険控除の基礎とおすすめのアプリ・ソフトを紹介します【初心者向け】



事業を起業して人を雇うと毎月給料を計算することになります。この給与計算は様々な法律に従って正しく行う必要があります。

この記事では、開業したばかりで給与計算のやり方がわからないので教えて欲しい、という質問に答えます。



給与計算の基本的な考え方

給与計算の基本的な考え方はシンプルで、基本給のほか様々な手当があればそれらの合計額から給料から控除されるものの合計額を差し引く、というだけです。

ですが、その内訳がけっこうややこしいですので、ここでは簡単な具体例を使って説明していきたいと思います。



具体例

事業:東京都の製造業(一般の事業)

給料を支払う相手: Aさん35歳 扶養家族2人(妻と子供)

基本給:30万円 残業手当:5万円 通勤手当:1万円



総支給額の計算

上記の例では総支給額は30+5+1=36万円となります。

ここで、残業手当についてはタイムカードなどの記録に基づいて時間を集計して求めます。求め方は基本給30万円から1時間あたりの単価を計算して、そこに残業時間数をかけます。1ヶ月の所定労働時間は(237日x7時間)÷12ヶ月=138.25時間とします(簡略化のため有給休暇は無いものとします)。

もし、1月の間に週40時間の法定労働時間を超えて残業した部分がある場合は、25%以上の割増賃金を払う必要があります。

休日出勤や深夜労働がある場合も割増賃金を払うルールがあります。こういったルールにそって計算する必要があります。



控除額の計算

社会保険や税金などの控除(天引き)金額を求めます。以下は法定控除の例です。これ以外にも財形貯蓄のような従業員との合意で天引きする場合もありますが、ここでは法定控除のみ扱います。

(1)雇用保険

雇用保険とは失業などの事態に備える保険で強制加入となります。

「一般の事業」における労働者負担の保険料率は平成31年について3/1000です。従って、雇用保険料は360,000 x 0.3% = 1080円となります。

(2)健康保険

健康保険は東京都の協会けんぽの保険料額表から求めます。仮に報酬月額を36万円とすると、表から健康保険料は20,934円と求まります

Aさんは43歳で40歳以上なので、介護保険も適用になり合わせて介護保険料を払うことになります。また、事業者と「半折」による支払いとなります。

事業者が大手の場合は協会けんぽではなく、健康保険組合に加入する場合があります。この場合はその組合の保険料率によります。

(3)厚生年金

会社員となりますと厚生年金に強制加入となります。厚生年金も(2)と同じ表を使って求めることができ、32,940円と求まります。やはり、事業者と「半折」による支払いとなります。

(4)源泉所得税額

次に所得税です。所得税は総支給額から(1)(2)(3)を控除した残額を基準として計算します。したがって、例では360,000 – 1,080 – 20,934 – 32,940 = 305,046円が基準です。

これを国税庁の源泉徴収税額表に当てはめて、税額を出します

Aさんには扶養家族が2人いて、あらかじめ税務署に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出してありますので、税額表の甲欄から5,370円と求まります

(5)住民税

住民税も給料から天引きして事業者が市区町村に納めますが、住民税はこれらの自治体から税額の通知があるので、その金額を控除することになります。例では仮に15,000円とします。

差引支給額を計算する

以上の情報がそろったら差引支給額を求めます。例では、以下の通りとなります。

360,000 – 1,080 – 20,934 – 32,940 – 5,370 – 15,000 = 284,676円

これらの金額を給与明細書に記載して本人へ提供します。また、支給日に284,676円をAさんに振込むことになります。



実際の給与計算はどうするか?

ここまでは理屈の上での給与計算のやり方でしたが、実際にはもっと複雑で人数も多くなってくると、忙しい事業経営の傍でやっていくのは難しくなってきます

それで多くの場合は、ITを使ったり外注したりする、ということになります。具体的には、次の4パターンがあります。

  • クラウドアプリ
  • インストール型ソフト
  • フリーソフト(エクセル)
  • アウトソーシング


給与計算方法のメリット・デメリット

この4つにはそれぞれにメリット・デメリットがあります。以下にまとめました。

ポイントはコストと法改正への対応です。いくら安くても間違えていたら意味がありませんので、毎年のように改正される法律や料率に正しく準拠することが重要です。


メリットデメリット
クラウドアプリコストが安い
豊富な機能
法改正に自動対応
インターネット接続が必要
インストール型
ソフト
根強い人気で利用者多い
昔から定番
法改正にアップデートで対応
アップデートは有償
フリーソフト
エクセルマクロ
無料である小規模事業のみ
法改正対応に不安
アウトソーシング丸投げで手間がかからない
法改正にしっかり対応
コストが高い



おすすめの給与計算方法

4つの方法それぞれにメリット・デメリットがありますが、それぞれからひとつおすすめするとすると、これというものを挙げてみました。


クラウドアプリインストール型フリーソフトアウトソーシング
具体例【人事労務freee】 やよいの給与明細 オンライン 給与計算Q太郎Fなし
特徴はじめての給与計算・労務管理で不安な方向け

給与計算のほか周辺事務に対応
サポート充実
売上実績 No.1

20名までの事業所向け

サポート充実

多くの税理士が対応
給与・賞与計算に限定

社員数10人まで
丸投げで対応してもらえる

代行業者、社労士など様々な受け皿がある
月額/価格の目安3名まで月額2380円
年間契約で月額1980円
4名以上は要相談
初年度27,000円

2年目以降23,000円(ベーシックプラン)
無料社員数10人まで

月額12,000円プラス1人あたり600円程度要見積
お勧め度★★★★★

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もし給与計算以外は税理士にお願いしているようなら、インストール型の「やよいの給与計算」も良い選択肢です。コストの面では、年間でみるとfreeeとあまり変わりません。ただ、毎年アップデートして法改正に対応する必要があるのがやっかいではあります。

フリーソフトやエクセルマクロは無料なのが良いですが、法改正への準拠などあくまで自己責任で使う必要があります。人事労務に不慣れな方にはおすすめしません。

アウトソーシングはもちろんもっとも手離れが良いですが、その分コストが高いです。ある程度事業が成長してから検討するのが良いでしょう。

以上、はじめての給与計算。所得税や社会保険控除の基礎とおすすめのアプリ・ソフトを紹介します、という話題でした。事業を起業したら、一度は給与計算事務を勉強しておいた方が良いです。こちらの本など目を通しておきましょう。

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