【社員の高齢化】ベテラン社員のノウハウを残すためのナレッジデータベースの作り方【知識が散逸する前に始めよう】



この記事は「ベテラン社員(職人)のノウハウが紙や各種データまたは本人の頭の中にバラバラに存在しています。これを若手にどうやって引き継いだら良いでしょうか?」といった疑問に答えます。



ノウハウを残すためのナレッジデータベース

中小企業の場合、仕事のノウハウが属人化してしまっているということがよくあります。特に製造業などで職人気質の文化があると、こういった事が起こりがちです。

社員の高齢化は中小企業において急速に進んでおり、ノウハウを集積する努力を早期に始めないと、従業員の退職とともにノウハウが散逸してしまう危険があります。ノウハウを効率よく集積して若手社員が検索しやすくするということが求められます。 

ノウハウを蓄積し検索できるようにしたツールのことを「ナレッジ(知識)データベース」といいます。今回は、このナレッジデータベースの構築方法について説明します。





ナレッジデータベースの一般的な要件

以下はナレッジデータベースの構築にあたってよくある要件です。皆さまの会社もこういった事情があるのではないでしょうか?

  • 既存のマニュアル(紙またはデータファイル)がある
  • 設計図面とそれに関連した情報がある
  • 材料・寸法・単価といった定型的な情報がある
  • 職人の感・顧客の声のような非定型な情報がある
  • 紙に手書きされた情報がある
  • 情報の多くは社員の頭の中にある
  • パソコンやスマホが苦手な人がいる

以下に、こういった要件に対する解決策を提案していきます。



Microsoft オフィスを使ったやり方

おそらく一番お手頃なやり方が、ExcelやWordと言った Microsoft オフィス製品を活用した方法です。ノウハウをExcelやWordあるいはPowerPointといったツールに記載し、これらのファイルをSharePoint(シェアポイント)というツールで管理します。

SharePoint

Microsoft 365を既にライセンス契約して使ってい場合には、SharePointは既に含まれており、追加で発生する費用はありません。この点が最大のメリットです。

 SharePoint を使うとブラウザ上からノウハウを登録したり、検索して参照したりすることができます。もしすでに既存のマニュアルがワードエクセルで作成されているならフォルダに整理するだけで登録が完了します。 次の動画でもイメージが湧くはずです。

SharePointを使う場合、上記の要点に要件に対する解決策は以下のようなものになります。

要件解決策
既存のマニュアル
(紙またはデータファイル)がある
Officeファイルはフォルダーを移すだけ。
紙はPDF形式にスキャンして保存。
設計図面とそれに関連した情報があるAutoCADならそのまま登録可能。
無理な場合は画像ファイルとして登録。
材料・寸法・単価といった
定型的な情報がある
ExcelやWordで定型フォーマット
を用意して整理・保存。
職人の感・顧客の声のような
非定型な情報がある
極力定型フォーマット化して保存。
無理な場合は、スマホでビデオ撮影する
などして保存。
紙に手書きされた情報があるPDF形式にスキャンして保存。
情報の多くは社員の頭の中にある情報投稿用のフォームを用意して保存。
パソコンやスマホが苦手な人がいるまずは利用者として慣れてもらい、
次第に情報提供者となってもらう。
利用にインセンティブを与える。

SharePointは文書だけでなく画像や動画など様々な形式のファイルをサポートしており、保存時のファイル名などを工夫することで内容を検索対象にすることも可能です。なによりもExcelやWordといったお馴染みのツールをそのまま活用できることが魅力ですし、その分ユーザーが新しいことを学習する必要が少なくて済みます。

ちなみに、ナレッジデータベースを作っても使われないというのは、教育や意欲の問題ではなくインセンティブが無いからです。情報の提供に対して1件100円でも支払うとか、そういった何らかの見返りがないと従業員の「面倒くさい」に勝つことが出来ないものです。



SharePointを使うならMicrosoft 365を契約

このように便利なSharePointはMicrosoft 365(旧Office365)に含まれるアプリケーションの1つです。法人向けの場合、下図のとおりライセンスは1ユーザーあたり月額540円からとなります。

Microsoft 365 法人価格

もし、まだMicrosoft 365を導入していないという場合、または買い切り型のOfficeパッケージを使っている場合には、まずはMicrosoft 365を契約するところからご検討ください。以下より公式サイトにて詳細を確認することができます。



専用のシステムを使ったやり方

最近ではクラウドを使ったナレッジデータベースの専用システムが幾つか出てきています。上述のSharePointを使った方法は簡単かつ安価ですが、パソコンやスマホに不慣れな人にとってはむしろナレッジデータベースの専用システムを使ったほうが馴染みやすいかもしれません。

そこで、ナレッジデータベースの専用システムを2つ紹介します。

  • Scrapbox(スクラップボックス)
  • Qast(キャスト)




Scrapbox

Scrapboxは昔の「カード型データベース」に近いイメージのものです。見て頂いた方が速いので、こちらから「活用事例集」をご参照ください。

https://scrapbox.io/InterestingProjects/

scrapbox

中には公開されているものがあります。例えば、こちらです。

https://scrapbox.io/rashitamemo/

1つ1つがカード型の「知識」(ナレッジ)であり、書き方のフォーマットを統一すれば、従業員同士の共有可能な「知識」となります。1つのページには以下のような情報を掲載することができ、また検索の対象とすることができます。

  • 箇条書き
  • リンク機能
  • 関連ページの表示
  • 画像貼り付け
  • 更新時期の可視化
  • 動画貼り付け
  • Google Maps貼り付け

Scrapboxは、1ユーザーあたり月額1,000円となっており、容量無制限で日々の業務で安心して使えるようになっています。この月額料金だけで100ページまで作成することができます(有償で300ページまで増やすことができます)。

見た目が使いやすい印象であり、パソコンやスマホが苦手な方でも直観的に使うことができるでしょう。詳しい情報は以下の公式サイトよりご確認ください。


また、Scrapboxの解説本「Scrapbox情報整理術」が出ていますので、興味がありましたら、ご一読頂ければと思います。



Qast

Qast(キャスト)は社内の情報共有のためのシステムで、シンプルな使い勝手でQ&A(よくある質問)やメモといった形で、ナレッジデータベースを構築していきます。

Qast

予めテンプレートを保存して、質問/メモを作成できますので、特に定型情報の整理を漏れなくすることができます。メモにはPDF、Word、PowerPoint、Excelを添付することができ、これらのファイルの中の文字も検索の対象とすることができるので、ノウハウの検索・再利用を促進することができます。

料金はユーザー5人で月2,250円からとなっており、Scrapboxよりは安くなっています。30日間無料のトライアルプランがあるので、しばらく触ってみて使い勝手を確認してみると良いでしょう。






以上、ベテラン社員のノウハウを残すためのナレッジデータベースの作り方、という話題でした。もし私がコンサルするなら、SharePointを使ったナレッジデータベースの構築を推薦します。すでに何回か実績があり、使い勝手の良さを実感しています。

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