会社の経営を評価するうえで重要な観点のひとつはその会社の安全性です。安全性とは支払能力があるかどうか、何かあったときに簡単に倒産したりしないかどうか、ということです。自身が会社を経営する場合はもちろん、取引先を見たり投資先を見たりする場合にもこの安全性をみて、適切な経営が行われているかどうかチェックします。
この安全性についてはいろいろな書籍やWebサイトで解説されていますが、今回は「1秒で財務諸表を読む方法(実践編)」で紹介されていた内容について、自分自身の備忘も兼ねてまとめます。詳しくはこちらの書籍を参照なさってください。
目次
安全性の分析指標
まず、安全性の分析指標について。以下の4つがあります。
- 手元流動性
- 当座比率
- 流動比率
- 自己資本比率
そして短期的な安全性を示す手元流動性から長期的な安全性を示す自己資本比率まで、1→2→3→4の順番で検証していきます。
手元流動性
手元流動性(比率)は、(現預金+すぐに現金化できる資産+すぐに借りられる与信枠)の合計をその会社の月商で割った値です。つまり、1か月分の売上に対して、すぐに支払いに回せるキャッシュがどれくらい(何か月分)あるのか?ということになります。中小企業の場合、これが1.7ヶ月程度を超えていれば安全とされます。
当座比率
当座比率は、当座資産を流動負債で割った値です。当座資産は(現預金+売掛金+受取手形+有価証券-貸倒引当金)の合計額です。これらは比較的容易に(1年以内に)現金化が可能な資産で、手元流動性の場合と異なり、売掛金・受取手形・有価証券など多少のリスクが伴う資産も含みます。つまり、比較的容易に現金に換えられるものが1年以内に返済予定の流動負債をどれだけカバーできているか?ということになります。中小企業の場合、これが90%程度を超えていれば安全とされます。
流動比率
流動比率は、流動資産を流動負債で割った値です。流動資産は上記の当座資産に棚卸資産を加えたものです。棚卸資産は主に在庫や原材料ですので、現金化まで時間がかかります。このため、棚卸資産を考慮した流動比率はより長期的な安全性ということになります。中小企業の場合、これが120%程度を超えていれば安全とされます。
自己資本比率
自己資本比率は、純資産(自己資本)を総資産(自己資本+他人資本)で割った値です。自己資本とは社長が自分で準備した元手、株主から出資を受けた資金です。これに対して他人資本とは主に銀行からの借入金などです。借入金はいずれ返済する必要がありますので、自己資本比率とはつまり総資産のうち、中長期的にみて当面返済の必要が無い金額の割合ということになります。中小企業の場合、どうしても借入が多くなりますので、これが20%程度を超えていれば安全とされています。ただし、投資先や出資先を選定する場合は相手先の自己資本比率が50%程度を超えていることが望ましいとされています。