日本人の生産性はなぜ低いのか

今日は3月18日。家族旅行で箱根に来ています。一泊二日で温泉ホテルに宿泊しています。世の中景気が良いのか、ホテルは満室のようで非常に混み合っており、みんな遊んでいるなあと思うわけです。ホテルに来る前には御殿場のアウトレットモールに寄りましたが、そちらもお客さんでいっぱいでした。外国人の観光客の方もたくさんいてとても賑わっていました。

温泉の休憩所にて

 

働き方改革とか裁量労働制とか

今巷では働き方改革とか裁量労働制をめぐる話題が賑やかですが、私の場合もう10年以上裁量労働制というのか高プロというのか、そういう形態で勤務しており、その立場から少し考えを書いてみます。

この議論には働きすぎを抑制したいという点と、人口減少による人手不足を担いたいという点の矛盾した二つの論点が入り混じっているのが特徴のように思います。

人口減少により働き手が少なくなるという問題に対しては、特に女性が働きやすい職場を作ることが大事で、このため働き方改革行なって仕事と家庭の両立を目指すという考え方があると思います。

ですが、働き手が増えたとしても長時間労働になってしまうしまうと結局長続きしないということになりますから、裁量労働制を導入してある程度自由の利く時間の使い方ができるに使用できるようにしよう、と言う発想になるのだと考えます。

ところが裁量労働制は雇う側から見ると「定額働かせ放題」という面があり、この結果この制度を悪用して結局のところを長時間労働させてしまう、というケースがあるのではないかと批判されているわけです。

 

「定額働かせ放題」か「定額怠け放題」か

自分は、この議論には生産性の改善という考え方が必須であると思います。生産性が改善すれば「定額働かせ放題」というのは労働者の側から見ると、より少ない時間の労働でも定額の給料がもらえる制度ということになります。いわば「定額怠け放題」です。

つまり同じ仕事がこれまで8時間かかっていたものが4時間でできてしまう様になれば、その空いた時間はその人の生活や人生のために使うことによって、仕事と生活の両方を充実させることができる事になります。生産性を上げれば上げただけ、総労働時間が短くなり時間単価が高くなるという訳です。

実際に私も裁量労働制で1日4−5時間しか会社の仕事をしていませんがフルタイムとしての給料を頂いています。これでも1人前の仕事ができており、生産性改善をコツコツと工夫して1日8時間も仕事しなくても良くなったのです。

 

生産性が低い日本人

現在されている議論というのは、この生産性の改善についての処方箋が全くないため、働くことが単なる苦役として認識されているように思います。そうではなくて生産性の改善によって仕事と生活の両方の質(クオリティ・オブ・ライフ)を改善していく検討が必要です。

実際のところ、この生産性改善の観点の欠如は全体の問題であり、日本の1人当たり労働生産性は現在OECD 加盟国のなかで21位(2016年調べ)となっており、先進国の中では最低になっています。

 

(出典:公益財団法人 日本生産性本部)

 

このような生産性の低さが結局のところ長時間労働をもたらし、仕事は苦役であるという認識に帰結しています。

ではなぜ日本の生産性がこれほど低いのか。自分のこれまでの経験と観察からは次のようなことが言えると思います。

 

なぜ日本の生産性は低いのか

前任者引き継ぎ文化

芸術家や創業者でないかぎり、自分の仕事を自分の前にやっていた人(前任者)がいます。日本人はかなり忠実にこの前任者から仕事を引き継いで、そのあと疑うこともなくコピーしてしまう傾向があります。どんなに時代遅れで効率が悪いやり方でも、それを見直すことなく毎日繰り返してしまう、そういう習性があるようです。

PDCA が回っていない

Plan-Do-Check-Actionは非常に平易で理解しやすいフレームワークですが、それ故に実施されない傾向があります。これは日本だけという訳ではありませんが、前述に前任者引き継ぎ文化とあいまって、問題点により気がつきにくい、そういう習性があるようです。この問題については過去記事ご参照ください。

効果がメキメキ上がるPDCAの使い方

ITリテラシーが低い

新しいアプリやクラウドサービスが登場しても、なかなか採用しようとせず、遠巻きにみているだけ、批評しているだけ、という人が多いように見受けられます。まずやってみる、の精神が欠如しています。

紙文化

世界でもいまだにFAXを多用しているのは日本だけです。諸外国では博物館にあるようなFAXマシーンが多くの事業所で現役です。FAXが使えないとかありえない、というのが、残念ながら日本の現状です。また、印刷したものを郵送したり、保管したりなど、日本の紙文化は低い生産性の原因です。1日の早くこれが消滅することを願うばかりです。

ミーティングが好き

生産性が低い人というのは集まって話すのが大好きです。この結果井戸端会議と変わらないようなミーティングが召集されます。基本的にアップデートとか情報共有目的のミーティングはメールなどで代用したほうが効率的であり、往々にして無駄です。私もこの手のご招待はなるべくお断りするようにしています。

電話が好き

電話は相手の時間と集中を奪う低生産性のデバイスです。にもかかわらず、電話をかけてしまう人が後をたちません。自分は基本的にかけることも、多くの場合出ることもしません。着信履歴を見て、手が空いたときに「御用は何ですか?」とメールします。たまに、「お時間のよろしいときにお電話ください」という留守電がありますが、何の用件かも分かりませんし、基本無視します。この場合も「御用は何ですか?」とメールします。相手のアドレスが不明の場合、申し訳ありませんが何の返事もしていません。

勤勉勤労の思想教育

多くの方は子供のころから、勤勉勤労は美徳とする教育を受けています。働かざるもの食うべからず、という訳です。本当は、働かないで儲かるのが一番なのに。この思想教育のおかげで、生産性が低いことについて疑問が持ちにくいようです。一生懸命働いてさえいれば、効率など関係ないからです。結果としてラットレースに参加していることが安心材料になっています。この問題についてはkちらの本に詳しいです。

抽象的に考えるのが苦手

日本人は特に欧米人と比べて、教育レベルが高い層であっても、抽象的に考えるのが苦手のように見えます。雑多な出来事に共通する性質を洞察したり、物事を俯瞰して見たり、そういう抽象化が苦手です。これも学校教育の後遺症なのかもしれませんが、目の前の具象に集中して、前後や全体が見えないので、最終的に生産性が上がりません。日本からはノーベル賞の学者先生も多く出ているので、全員が苦手ではないのでしょうが、平均すると苦手という感じです。

人生を楽しむという発想の欠如

長時間労働に甘んじてしまうのは、そもそも人生を楽しむという発想が無いから、という気がします。ですが、この点については、前述のとおり最近は改善の傾向があるように見えます。箱根の温泉ホテルなどは平日にいっても、結構混んでいて、みなさん人生を楽しんでいるなあと感じます。重要なことは生産性を改善して、その余った時間を楽しんでいるかどうか、です。そうでなければ、単なる怠け者です。

 

自分だけでも振り切る努力を

あれこれと書いてきましたが、日本で生まれ育って日本にいる、というだけで生産性が低くなりがちなのが、残念ながら現状です。そこに流されるのではなく、自分だけでも振り切って生産性を上げる努力が必要です。電話に出ないとか、当然世間の風当たりも強くなるわけですが、たった一度の自分の人生です。自分で納得のできる充実したクオリティ・オブ・ライフを目指すのが良いのではないでしょうか?

 

以上、日本人の生産性はなぜ低いのかという話題でした。

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