自社の経営を自己診断できるシステムが無料で利用できることをご存知でしょうか?独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)が運営している経営自己診断システムがそれです。
経営自己診断システム
http://k-sindan.smrj.go.jp/crd/servlet/diagnosis.CRD_0100
中小機構は国の中小企業政策の実施機関として経営者のサポートを行っているところです。日本の企業のうち企業数では中小企業が99.7%という状況ですので、国としても力が入っています。中小機構は様々な情報やツールの提供を行っており、その中のひとつとしてこの「経営自己診断システム」があります。
目次
何が診断出来るのか?
ズバリ、初期的な経営診断と「経営危険度」の点検です。経営危険度とは、要するに倒産のリスクがどの程度あるのか?ということです。
本システムは、中小企業信用リスク情報データベース(略称CRD)に蓄積されている200万社以上の中小企業の財務データを活用しています。
(経営自己診断システム)
との説明があるとおり、過去の経営破綻した企業またはそれに近い状態の企業(デフォルト企業という言い方をしています)の財務データと自社の財務データを比較検討して、経営診断を行い「危険度」を割り出してくれます。
中小機構が蓄積しているデータですので、品質は信頼できるものと思います。200万社という量もすばらしいです。
どのように診断するのか?
詳しくは上記サイトの操作説明に書いてありますが、全部で26項目の数字を入力して、診断する仕組みになっています。
例えば、貸借対照表からは「受取手形」、「売掛金」、「長期借入金・社債」など、損益計算書からは「売上高」(2期分)、「営業利益」、「経常利益」など。また、手形の「割引高」や「裏書譲渡高」、「期末従業員数」なども入力します。
(出典:中小機構 経営自己診断システム)
診断結果の読み方
診断結果は、まず「収益性」「効率性」「生産性」「安全性」「成長性」の5つの観点から示されます。
(出典:中小機構 経営自己診断システム)
このうち、「収益性」「効率性」「生産性」「成長性」の4つについては同業種の他社の過去データから求めた中央値との比較で点数化したものが示されます。5点が中央値付近の平均的な企業、10点は上位5%に入る企業、逆に0点は下位5%以下となります。
つまり同じ業種の他社と相対的にみて、どこが強いのか弱いのか、データに基づいた客観的な推定を行うことができます。この理解に基づいて、次の改善施策へとつなげることができるでしょう。
また、「安全性」は信号機のアイコンで3段階で示されます。青が「安全ゾーン」、黄が「警戒ゾーン」、赤が「危険ゾーン」です。これはデフォルト企業の過去データと比較して経営破綻のリスクがどの程度なのかを示したものです。
「資金繰診断結果画面」⑤に進むと、下図のようにその細かい評価内容を確認することができます。
(出典:中小機構 経営自己診断システム)
上図の例では、デフォルト企業や業界標準と比較しても高い点数であり、判定結果⑧は「安全ゾーン」とされています。また、具体的にどこが良いのか悪いのか指標ごとの比較(①)もできるようになっており、この情報は次の改善施策へのヒントとなります。
まとめ
見てきましたとおり、無料であるにもかかわらず、初期的な経営判断に使える便利なシステムです。点数が低く出たとしても、それはあくまで過去の同業種データとの比較においての点数付けであり、皆さんの現在の事業が悪いという訳ではありません。
ですが、客観的なデータに基づくアドバイスとして参考になりますし、今後どのような取り組みをしていったら良いか、の示唆を与えるものです。ぜひ活用してみて頂ければ、と思います。
場合によっては最初の26項目の入力データの準備がすこし大変かもしれません。もし自分では分からないようであれば、税理士の先生から数字を提供してもらうか、コンサルタントに声をかけて数字の整理から始めると良いでしょう。
以上、これは使わないと損!無料の経営診断システム、という話題でした。