【2024年確定申告】個人事業主向け。経理をして確定申告に備えよう

確定申告の季節です。個人事業主(フリーランス)向けに確定申告の基礎の基礎についてご案内します。



個人事業主の決算のやり方

個人事業主(フリーランス)の場合は、カレンダーの1年(暦年)で区切りをつけて、1年間の売上(収益)と経費(費用)の集計をします。この集計作業を「決算」といいます

多くの個人事業主の方は、日常の経理をやる暇がないですが、新年になったら早めに時間を見つけて、「決算」をやっておくと、2月から始まる確定申告にスムーズに入っていけます。

まずは、請求書など売上の記録と、領収書など経理の記録を引っ張り出して、簿記なのでおなじみの会計仕訳の形式にします(業界用語で「仕訳をきる」といいます)。下記の過去記事にそのやり方を簡単に説明していますので、ご参照ください。

会計仕訳を行うツールは、最近はやよいの青色申告オンライン 【会計ソフトfreee(フリー)】 のようなクラウド会計サービスも便利で良いのですが、規模が小さい場合には、通常のエクセルで十分です。

下記で紹介している「無料シンプル経理ツール」は、そのような小規模事業者にぴったりです。エクセルのマクロで私が自作した簡単なツールです。会計仕訳から損益計算書・貸借対照表を作成することができます。これだけで確定申告の準備まで行けますので、お試しください。

ただし、雇用している人がいたり、月に50程度以上の取引(仕訳)があるなどある程度の規模なら、やよいの青色申告オンライン 【会計ソフトfreee(フリー)】 のようなクラウド会計サービスを使ったほうが良いでしょう。

やり方とツールが決まったら、あとはひたすら去年分の仕訳を切っていきましょう。もし、「面倒でやっていられない」「時間が無い」という場合には、アウトソーシングすることもできます。税理士ドットコム のようなサイトから税理士の紹介を受けて、アウトソーシングできないか相談してみましょう。

税理士によっては仕訳入力から申告まで代行してくれます。もちろんコストがかかりますが、最近は価格競争のため安くなっていますので、時間と安心を買うと思えばリーズナブルな選択肢ではあります。



決算整理仕訳のポイント

決算整理仕訳とは通常の取引の会計仕訳と異なり、決算のときだけ行う会計仕訳です。いくつかの項目がありますが、ここでは個人事業主の場合に必要な可能性が高い4つを紹介します。

(1)発生主義への修正

日常の取引は「現金主義」と呼ばれる考え方で仕訳することが多いです。つまり、現金を受け取ったら「売上」を、現金を払ったら「経費」を認識します。普段はこれでも良いのですが、本来のルールは原則として「発生主義」の考え方で仕訳することになっています。発生主義では、現金をまだ受け取ってなくても、物やサービスを引き渡していたら「売上」を、現金をまだ払ってなくても物やサービスの引き渡しを受けていたら「経費」を認識します。

このため、12月と1月をまたいで、認識がずれてしまうものを修正する必要があります。例えば12月に物やサービスを引き渡していて、代金は1月に受け取る場合、「売上」を認識して次の仕訳を切ります。

売掛金 xxx    売上 xxx

同様に、12月に物やサービスの引き渡しを受けていて、代金は1月に払う場合、「経費」を認識して次の仕訳を切ります。1行目は仕入れの場合、2行目は電話代のような費用の場合です。

仕入 xxx 買掛金 xxx

費用 xxx  未払費用 xxx

また、逆に、事務所の家賃のようにまだ物やサービスの引き渡しを受けていないのに、12月に1月分の代金を前払いした場合、「経費」には計上できませんので、次のような仕訳を切ります。

前払費用 xxx 現金 xxx

このように「期間をまたぐ部分」の修正を行って、12月までに発生したものだけ、収益と経費に計上するように調整します。

売掛金・買掛金・未払費用・前払費用といった一時的な勘定科目は、翌年の初頭に逆仕訳をきって、年の途中は再び「現金主義」で仕訳していけば良いです。

年の初頭 ー> 売上 xxx 売掛金 xxx

年の途中 -> 現金 xxx 売上 xxx



(2)固定資産の減価償却

設備品など固定資産を期中で購入した場合は、いっぺんにその期の経費には出来ず、耐用年数(法律で決まっている)の間に分割して経費化することになります。この経費化が「減価償却」です。従って、次の仕訳をきります。

買ったとき ->  固定資産 xxx 現金 xxx

決算時 -> 減価償却費 xxx 固定資産 xxx

ただし、パソコンなど固定資産が10万円未満であれば、その期に全額を減価償却費にすることができます。また、税務署に青色申告を事前に申請してることを条件として、30万円未満であれば、その期に全額を減価償却費にすることができます(少額減価償却資産の特例といいます)。


(3)仮払金の清算

もし期中に仮払金や仮受金があれば、何のお金だったのか調べて、正しい勘定科目に置き換えます。仮払金や仮受金がそのまま残らないようにしましょう。

払ったとき -> 仮払金 xxx 現金 xxx

決算時 ー>    旅費交通費 xxx 仮払金 xxx


(4)棚卸し

商品や材料の在庫を持っているような場合は、「棚卸し」を行って、帳簿上の在庫と実際の在庫の差を確認します。紛失などで在庫が少ない場合や、古くなって売り物にならない場合にはその損失を経費に計上します。

決算時 ー>  商品減耗損 xxx 商品 xxx

決算時 ー>  商品評価損 xxx 商品 xxx



確定申告の準備

決算整理仕訳まで終わったら、確定申告の準備をしましょう。確定申告は税務署の窓口では毎年2月16日から3月15日まで(土日によりずれる可能性あり)です。早いうちに準備を済ませて心の負担を無くしましょう。また、インターネット経由での申告であれば、1月4日から行うことができます。

確定申告はインターネット経由で国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使って行うのがお勧めです。

パソコンにインストールして使うソフトウエアの「e-Tax」と混同しやすいのですが、「確定申告書等作成コーナー」では特に何かをインストールする必要はありません。ウェブブラウザーでアクセスして使います。私も最初間違えたので、混同しないように注意しましょう。

確定申告書等作成コーナー」を使う前提として、税務署に出向いて「ID・パスワード」の発行を受けましょう。平成30年までは「マイナンバーカード」を挿入したICカードリーダーをパソコンに接続していないと申告出来ませんでした(申告書の作成と印刷は出来ました)が、平成31年からは普通の「ID・パスワード」だけで申告できるように変わっています。

これがあればパソコンが無くてもスマホから申告できますので、是非「ID・パスワード」を取得しましょう。ただし、事前に本人が運転免許証などの本人確認書類を持って税務署に行く必要があります(代理不可)

「ID・パスワード」方式ではChromeやFirefox などのブラウザでも申告できます。「マイナンバーカード」方式ではInternet Explorer 11 しかサポートされてなかったので、確定申告のためだけにIEを使う必要もなくなりました。

上記以外の準備としては、会社が発行した源泉徴収票、医療費控除を受ける場合は医療機関等の領収書、ふるさと納税した場合は寄付金受領書、事業所得の決算書などを揃えます。

医療費控除については、集計用ファイル(作成コーナーの右上に掲載)のダウンロードを行って、あらかじめ詳細をエクセルで入れておくと良いです。



所得税(事業所得)の申告と納税

ここまで準備が出来たら、「確定申告書等作成コーナー」の「作成開始」から作成するだけ、です。ガイダンスに従って数字を埋めていくと、1時間もかからずに申告書の送付まで終了します

また、送付後に「間違え」に気がついた場合は、また最初から入れなおして、再度申告書を送付します。税務署では、3月15日までで一番最後に届いた申告書を最終のものとして扱ってくれます。最初に送付した申告書は無視されますので、税務署に連絡を入れたりする必要はありません。

払いすぎた税金が戻る還付ではなく、納税となる場合には、「クレジットカード納付」がお勧めです。手数料がかかるのが残念ですが、その分カードにポイント(マイル)を貯めることもできて、場合によってはお得になります。下記の記事よりご検討ください。


確定申告で使った各種書類は法律上の保存義務(7年間)がありますので、まとめて大きな封筒にいれて、紛失しないように取っておきましょう。

以上、個人事業主向け新年になったので去年の経理をして確定申告に備えよう、という話題でした。もっとしっかりしたガイダンスが欲しい方は、下記のような書籍をお求めください。