この記事は「市場調査とその分析のやり方は具体的にどんな方法がありますか?実際にやってみた例を見てみたいのですが」といった疑問に答えます。
目次
税理士を探している人について市場調査
税理士にとって「税理士を探している人」は潜在的なお客様であり「市場」に他ならないです。今回はその市場を理解すべく、市場調査を試みてみました。
結果として知りたいことは「どんな顧客像をターゲットすべきか?」という点です。ターゲットとなる顧客像を明らかにすれば、そのターゲットに対するアプローチの方法が見えてくるのでは?という期待があります。
また自分がこれまで想定していた顧客像と調査結果が違う可能性もあり、仮説検証が可能です。
調査方法
とある税理士紹介会社に登録して送られてくる案件を分析しました。分析した内容は以下のとおりです。
(1)法人か個人か
(2)年商規模
(3)税理士を探している理由
本当はもっといろいろなパラメータで分析したいわけですが、案件に書かれた情報が不十分のため、ひとまずこれだけです。
調査件数は100件ちょうど。日本政策金融公庫の資料によると年間に創業融資の申込が約5000件ということなので、サンプリング理論に基づけば今回の調査件数としてはまずまずといったところです。
調査結果
(1)法人か個人か
以下のとおり税理士を探している人の24%は個人事業主、76%は法人となりました。
個人事業主であれば所得税(事業所得など)の申告はかなり自分でできる環境が整ってきており、割合としては少ないだろうなと。
国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」などは年々改善されており、今ではおそらく一番使いやすいオンライン申告ツールになっています。個人でも大きなビジネスやRSUとか仮想通貨といったちょっとやっかいなものは税理士に頼んだほうが良いですが、副業や小商いなら自分でできる時代です。
(2)年商規模
年商規模については45%が1000万円未満、2000万円未満、3000万円未満、3000万円以上がそれぞれ20%弱で横並びといった様相です。
マスマーケットは1000万円未満にあることが分かります。ですが、過半数は1000万円以上であり、小規模市場と中規模市場が並存しているといえます。
(3)税理士を探している理由
案件に書いているコメントを以下の8つの区分に分類して集計しました。
予想通りというか当然に「新規開業」が最も多い33%です。「法人成り」7%も合わせれば40%がそういった新しいきっかけで税理士を探していることが分かります。
次に多いのが料金の問題で22%です。料金が高いのでもっと安い税理士を探しているパターンです。最近のコロナインパクトを考えれば、これもあり得る話です。
すこし意外だったのは次の「今まで自分でやっていた」で、14%ですから結構多いなと。前述のとおり自分でもできる環境ができてきていますが、ビジネスが大きくなってきたら自分でやるのは危険です。特に法人は危険です。早めに税理士をつけた方が安心でしょう。
「前の税理士と合わない」も12%でそれなりに多いです。税理士も人間なので合う合わないはありますね。無料お試しコンテンツやセミナーなどを提供している税理士を探して、人間を見てから契約することをお勧めしたいです。その方がお互いにとって無駄がありません。
「前の税理士の連絡遅い」5%もたまに聞く話です。なかには音信不通になってしまう税理士もいたりして、さすがにそれはマズイです。ひとり税理士の場合、病気等が考えられますが、そうなった場合に備えておく必要はありますよね。
「前の税理士が引退」5%は今後増えるかもしれません。平均年齢が還暦を超えている業界なので・・・
こうして税理士を探している理由を見ると、マーケットの様子を概観することができます。
クロス集計してみた
3つのパラメータでクロス集計するとどうなるでしょうか?
まず(1)個人か法人かと(3)税理士を探している理由でクロス集計を見てみますと、次の通りです。
法人の場合は「新規開業」26%が多く、個人の場合は「今まで自分でやっていた」8%が多くなっています。これは予想通りの結果です。
法人の場合は「前の税理士が高い」21%や「前の税理士と合わない」12%が次に多いです。個人よりも法人のほうが税理士に不満を持ちやすい傾向があるようです。そもそも法人のほうが料金体系が高くなる場合が多いので当然かもしれませんが、法人のほうが価格を差別化要因にしやすいといったことが言えそうです。
次に(2)年商規模と(3)税理士を探している理由でクロス集計を見てみますと、次の通りです。
1000万円未満の「新規開業」23%が最も多く、それはそうかなと。新規開業で年商が少ないのは普通のことです。
すこし意外なのは「前の税理士が高い」が1000未満で8%、3000万円以上でも8%と分かれて多くなっている点です。
1000未満についてはかつてはもっと年商があったのだがコロナの影響などで年商が下がってしまい、結果として税理士コストを見直したいといったシナリオでしょう。3000万円以上の場合は昔の高額な料金体系の税理士から見直したいというシナリオかなと想像します。
どんな顧客像をターゲットすべきか?
以上の観察から、結論として「どんな顧客像をターゲットすべきか?」について考察してみると、以下のようなお客様が「狙い目」と考えられます。
(1)「新規開業」の法人・個人。相対的に数が多い
(2)年商規模が大きめで旧態依然の税理士料金を払っている法人
アピールポイントは、(1)の場合、相場より少し低めの料金にして、新規開業者の目に留まるように露出を増やしていく、場合により広告を打つなど「数を打つ」アプローチでしょうか。
(2)の場合は本来の相場通りの料金で、むしろ税理士のスイッチコスト(初期コスト)を安く印象付けること、若さ(若い場合ですが)、レスポンスの良さ、サポートの良さ、といったものを前に出すアプローチでしょうか。
(1)は利益率は低いが数を多くとる薄利多売型で、業務効率化が運営上の鍵となります。(2)は高付加価値型で少ない件数でも収益を稼ぐことができそうです。
いずれにしろ重要なポイントとしては契約後に「税理士と合わない」という不幸な問題が起きないように、無料お試しコンテンツやセミナーなどを提供することも重要です(お客様の立場ではそういう税理士を探すこと)。事前に人となりがある程度分かることでそういった事故を防ぐことが出来るはずです。
以上、税理士を探している人について市場調査してみた、という話題でした。前述のとおり、予想通りという面とすこし意外という面があり、やはり税理士市場に限らずどんなビジネスでも市場調査はやってみた方が良いです。複雑でお金のかかる方法ばかりではなく、上記のような簡単で無料の方法も探せば見つかるはずですね。
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