【税理士】所属税理士が出来ること・出来ないこと【開業税理士との違いは?】



この記事は「所属税理士って何ですか?開業税理士と何が違うのでしょうか?」といった疑問に答えます。



所属税理士が出来ること・出来ないこと

このたび私自身が「所属税理士」として登録されたこともあり、税理士法上、所属税理士とはいったいどんな存在で、何が出来て・何ができないのか、改めて整理してみます。

【注記】2021年3月より「社員税理士」になりました。詳しくは→税理士法人船津会計 所沢事務所にてご案内しております。





税理士3パターン

平成26年の改正により、税理士は以下の3つパターンで規定されることとなりました。

  • 開業税理士
  • 社員税理士
  • 所属税理士

「開業税理士」は文字通り個人で開業している税理士です。「社員税理士」というのは税理士法人の役員である税理士です。税理士法人は二人以上の税理士が集まって設立した法人で、社員税理士が出資金を分担し、 無限責任を共有しています。

これに対して「所属税理士」は開業税理士や税理士法人に雇われている税理士です。 税理士事務所や税理士法人の他のスタッフと同様に給料もらって働いている立場ということになります。

ただし、正式に登録された税理士であることに変わりはなく、自ら顧客の依頼を受けて顧問契約を結ぶこともできます。この時に雇われている立場と、自ら契約を受任する立場とがあるために、所属税理士の運用ルールが複雑になっています。 



なぜ「所属税理士」?

どうして所属税理士という制度があるのか?というと、「税理士事務所や税理士法人に勤務しながら自分の顧客を増やせるチャンス」を与えるため、ということになっています。

税理士業界は高齢化と飽和化が進んでおり、若い世代の税理士になかなかチャンスが無いと言われています。税理士資格は「足の裏の米粒」(取っても食えないから)なんて揶揄されている状況です。

若くても成功している税理士はたくさんおり、要はその人のやりようだったりするわけですが、全体としてはこの状況を改善する目的で雇われの立場で生活を保障しつつ、自分の顧客を増やして独立に備えることができるようにしているのです。よく考えられている制度なのです。



所属税理士が出来ること

とはいえ、「雇われ」と「独立準備」と言う、ある意味ダブルスタンダードを達成するためにルールが少しややこしくなっています。

そこで所属税理士という立場で何が出来て何が出来ないのか整理します。

最初に所属税理士ができることは以下のことです。

(1)直接顧問契約の受任ができる

上述の通り、所属税理士は雇われている税理士事務所や税理士法人とは別に、自分で見つけた顧客と直接顧問契約を結ぶことができます。これにより、税務相談、税務書類の作成、税務申告、税務調査の立会い、といった税理士の独占業務を行うことができます。

ただし完全に自由ではなく、使用人税理士や税理士法人からあらかじめ、契約の都度、承諾を得る必要があります。つまり雇い主の許可を得てからでなければ、直接の受任をすることができません。 なお、この承諾は契約の都度必要ですが、毎期(毎年)の確定申告の都度必要ということではありません。

また、直接受任にあたっては、この承諾書のコピーと、一定の法定事項を記載した説明書を作成して顧客に提示しなければいけません。所属税理士とは顧客は説明書に署名押印する必要があり、その後雇い主に提出するルールになっています。

まとめると所属税理士直接受任した場合には、(1)契約書、(2)承諾書、(3)説明書、の書類3点セットが必要ということになります。開業税理士なら「契約書」だけで済みます。



(2)「税理士」と名刺に記載できる

これも当然ですが正式に登録された税理士ですので「税理士」の肩書きを使うことができます。



(3)税務代理権限証書をその税理士の名前で記載できる

所属税理士が顧客から直接受任した場合には、税務代理権限証書もその所属税理士の名前で記載することとなります。税務代理権限証書とは税務署に対して、「この税理士が税務代理権限を持っています」ということを知らせる目的で、確定申告書に添付する書類です。



(4)税務署類の署名押印欄にも所属税理士が自署押印できる

所属税理士が顧客から直接受任した場合には、確定申告書の署名押印欄には下記のような記載を行います。所属税理士が直接受任したのことを明示するためです。

記載例:○○税理士法人 所属税理士○○○○(直接受任)



(5)記帳代行についても直接受任できる

記帳代行サービスはそもそもも税理士の独占業務ではないのですが、これについても所属税理士は顧客から直接受任することができます。ただし、この場合も顧問契約と同じで、雇い主の承諾があらかじめ契約の都度必要ということになります。



(6)顧客は所属税理士に対して損害賠償責任を問うことができる

これは所属税理士に仕事を依頼した顧客側ができることなのですが、もしその仕事の結果財産に何らかの損害が生じたときは、その所属税理士に対して損害賠償請求することができます。

逆に言うと、所属税理士は個人の責任で「税理士職業賠償責任保険」に加入しておく必要があるということになります。





所属税理士が出来ないこと

一方、開業税理士なら出来ることでも、所属税理士には出来ないことがあります。次の2つです。

(1)自分の事務所を設立できない

所属税理士はあくまで税理士事務所税理士法人に勤務している立場ですから、それと併行して自らの事務所を設立することができません。税理士法のいわゆる2か所事務所問題(2以上の事務所を開設できない)に該当してしまうからです。

顧客によっては事務所や看板がない税理士を不審に思うかもしれませんが、これは致し方ない点です。開業税理士でも自宅を事務所として、看板など特に掲げていない税理士も多いので、世の中に受け入れられつつあることではあります。



(2)使用者を雇えない

所属税理士が直接受任によって忙しくなってしまい、人を雇いたいなと思ったとしてもこれが認められていません。本来の趣旨を考えれば当たり前ですが、人を雇いたいほど忙しくなったのであれば独立すれば良い、というだけの話です。

あくまで「ひとり」で出来る範囲でやってください、ということになっています。ただし、所属税理士が対応できない状況になったのであれば、一時的に税理士事務所や税理士法人のスタッフを借りることができる、とされています。これは顧客に迷惑をかけないための配慮でしょう。

また、何らかの事情で所属税理士が雇い主の税理士に顧客を引き継ぎたい場合には、一旦契約を終了し、使用人税理士または税理士法人と再契約してもらうということになります。





以上、所属税理士が出来ること・出来ないこと、という話題でした。「所属税理士」という制度は、ややこしいですが、新規参入者に対する「親心」を感じます。自分もこの制度をうまく活用できたらよいな、と思う次第です。



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