目次
紙の納付書が来なくなる
国税庁より「納付書の事前送付に関するお知らせ」が発表されています。
その内容は簡単に言うと、国のコスト削減のため令和6年5月以降は一定の場合に紙の納付書の事前の送付を取りやめることとします、というものです。
一定の場合とは以下の場合とされています。
- e-Taxにより申告書を提出されている法人の方
- e-Taxによる申告書の提出が義務化されている法人の方
- e-Taxで「予定納税額の通知書」の通知を希望された個人の方
- 「納付書」を使用しないダイレクト納付等の手段により納付されている法人・個人の方
ここで最も問題となるのが、「e-Taxにより申告書を提出されている法人の方」です。
つまり、電子申告で申告している法人には紙の納付書が事前に送られてこない、ということになります。
実務的には法人税などの申告は税理士事務所から電子申告し、納付は紙の納付書で金融機関から行っている中小企業は多いかと思いますが、それが出来なくなるということです。
ペーパーレスは結構なのですが、一律に送付中止は困ったことです。せめて希望を聞いてほしいのですが・・・
個人事業主も要注意!
また、個人事業主でも「e-Taxで「予定納税額の通知書」の通知を希望された個人」に該当するとやはり令和6年5月以降は紙の納付書が送られてこないので注意が必要です。
予定納税とは、前年分の所得金額や税額などを基に計算した金額(予定納税基準額)が15万円以上である場合、その年の所得税および復興特別所得税の一部をあらかじめ納付するという制度です。
ざっくり言うと前年の納税額が15万円以上なら予定納税額が発生し、国が計算した予定納税額を7月と11月に当年分の税金の前払いとして納付します。当年分の確定申告で精算され、払いすぎなら還付(返金)されます。
これまではこの7月と11月の納付のトリガーは紙で6月中~下旬に郵送されてくる「予定納税額の通知書」という方が多かったのですが、e-Taxで確定申告して、その際に「この申告書に係る通知等がある場合、e-Taxによる通知を希望します。」欄を選択していると令和6年5月以降はこの紙が来なくなりますので注意が必要です。
この場合、以後は以下の手順になります。
- 国税庁からお知らせメールが来る
- メール中にあるリンクから受付システムにログインする
- メインメニューの通知書等一覧の「確認画面へ」を選択し、「予定納税等通知書」から確認する
- ダイレクト納付等の手段により納付する
国税庁からのお知らせメールをスルーしてしまうと気が付かない可能性があります。
そもそも「この申告書に係る通知等がある場合、e-Taxによる通知を希望します。」欄を選択しなければ良いのですが、うっかり選択してしまうことはあり得ます。令和5年分の確定申告から注意しましょう。
ダイレクト納付等の納付手段
ダイレクト納付等の納付手段には現在のところ以下があります。
- ダイレクト納付(e-Taxによる口座振替)
- 振替納税
- インターネットバンキング等による納付
- クレジットカード納付
- スマホアプリ納付
- コンビニ納付(QRコード)
詳しくは財務省の以下の資料にありますので、参照ください。
ややこしいのが、振替納税とダイレクト納付の違いですが、どちらもあらかじめ税務署に銀行口座を登録しておく必要があるのは同じですが、振替納税は申告すると勝手にお金が引き落とされるのに対して、ダイレクト納付は申告後自分で国税庁ホームページで操作して納期限までに引き落とすようにできることが違います。
資金繰りなどの面で納税資金の準備がギリギリの場合はダイレクト納付のほうが良く、おすすめしております。
申告が終わっていざ納付となったときに紙の納付書が無い場合、どうするか?という問題があります。代替手段として上記のものがありますが、現実的には以下になるでしょう。
- クレジットカード納付する。事前の準備が必要ないので急な対応もできますが、手数料がかかり、カードの利用限度額までとなるのが難点です
- ペイジー(Pay-easy)で納付する。取引銀行がペイジーに対応していない場合もあるが難点です
- 所轄税務署に出向いて納付書をもらってくる、もしくは税務署で現金納付する。手間がかかるのが難点です
納付期限まで時間があれば(3)も割と現実的です。
ですが、ダイレクト納付の手続きをあらかじめしておくのがもっとも無難です。時間に余裕があるうちに是非。
ダイレクト納付の利用開始
ダイレクト納付の利用開始には「ダイレクト納付利用届出書」の提出が必要です。法人なら書面提出のみ、個人ならオンライン提出も可能です。法人はペーパーレスと言いながらなぜか書面(紙)で出す必要があります。書面提出では登録完了まで1か月ほどかかります。
詳しい手続き方法はこちらにあります。
地方税のダイレクト納付
法人の地方税(法人住民税や事業税)については、電子申告した場合に紙の納付書が来ないといったお知らせはいまのところありません。
当面はこれまでどおり納付書払いで大丈夫ですが、地方税だけ金融機関に出向くのも面倒ですから、国税をダイレクト納付にしたら地方税の納付もダイレクト納付にしても良いでしょう。
その手続きは主に以下の流れとなります。
- eLTAX(エルタックス)という地方税の電子申告用サイトのアカウント情報を取得する(もしまだであれば)。詳しくはこちら。
- ダイレクト納付口座の登録をする。詳しくはこちら。
- 地方税を電子申告する(通常は税理士事務所が代行)
- 地方税共通納税システムで納付する(納付情報を発行して納付する)
地方税共通納税システムで納付する方法は以下の動画説明が分かりやすいです。
納付情報の発行操作手順
納付操作手順
令和5年4月から共通納税の支払方法が増えて全国の自治体でクレジットカード納付もできるようになっています。
また、法人が個人住民税を給与天引きして払う場合(特別徴収)でもダイレクト納付が可能です。そのやり方は以下のフローチャートとビデオをご参照ください。
個人住民税(特別徴収)の納付フロー
https://www.eltax.lta.go.jp/support/manual/tokucho-flowchart/
納付情報の発行操作手順