土地や建物などの不動産を買うのは一生に一度の買い物と言われます。当然ですが高価ですので、そう何度も買うものでもないでしょう。なので絶対失敗したくない、と思うのは普通のことです。ところが、失敗してしまうことも多々あります。私もそのひとりです。
完全に失敗したという訳ではないのですが、後から考えると「あーすればよかった、こーすればよかった」という後悔の念が出てきます。私は平成21年に土地を購入して家を建てた(現在の自宅)のですが、そのときの経験を踏まえて、これから不動産を買おうという人に知っておいて欲しいことを書きます。その当時の私には分からなかったのですが、宅建士となったことで分かったことです。
目次
(1)Webで探さないこと
最近はインターネットで不動産を検索することができるようになっています。賃貸であればインターネットで探すのが妥当だと思いますが、土地や建物を買うという場合にはインターネットで探すというのは少し問題があります。
大抵の場合、土地や建物を売りたいという人は不動産屋さんに相談をし、そしてその不動産屋さんがインターネットのサイトに売り物件として登録します。ですが、本当に魅力的な物件または儲かる物件というのは不動産屋同士で売買してしまう、ということがよくあります。
この結果、売れ残った物件が一般向けとしてインターネットに登録されるということになります。つまり、インターネットにあるものは不動産屋が物色した後の売れ残り物件である可能性が高いのです。良い物件の話は不動産屋さんに情報が入ってきますので、先に信頼できる不動産屋さんに物件を探している旨の相談をして、探してもらうところからスタートした方が良いです。
(2)不動産屋さんとの契約
不動産屋さんとの契約には法律で定められている3つのタイプがあります。一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3つです。契約の自由度と責任内容によって3つの違いがあるのです。
一般媒介契約とは買主である皆さんの自由度が高い(複数の不動産屋さんと契約できる)反面、不動産屋さんから見ると仕事をしても報酬に繋がらない可能性があるため、真面目にやってくれるかどうかは分からないというデメリットがあります。
専属専任媒介契約では不動産屋さんは一社に絞られますので、買主である皆さんから見ると自由度が狭まりますが、不動産屋さんから見ると仕事をすれば報酬につながる可能性が高いので真面目に努力してくれるというメリットがあります。
不動産屋さんは専属専任媒介契約を勧めてくると思いますが、どちらを選ぶかはその時々の皆さんの判断で希望すれば良いということになります。
(3)設計士や工務店の選び方
マンションや建売住宅を買うのではなく、自分で好きな家を建てたい、という方も多いと思います。私もそうでした。基本的なデザインを自分たちで行い、設計士さんにお願いして設計し、工務店に施工してもらいました。どうしてもコスト的な観点から小さいところを選んだのですが、これが失敗でした。安いからといって小さいところを選ぶと思わぬリスクもあります。
私の場合、完成引渡しで決済(代金の支払い)が終わって間も無く、設計士さんが音信不通となってしまいました(多分夜逃げです)。個人の設計事務所でしたので、それ以降相談できない状態になっています。また、施工した工務店は5年ほどたったときに倒産してしまいました。
これは非常に痛かったです。多少コストが嵩んでも長期的に付き合えるようなしっかりした設計事務所や工務店を選択することをお勧めします。こちらより様々なハウスメーカーや工務店の情報を入手して比較しましょう。資料の請求は無料ですし、一度の入力で効率よく集めることができます。
(4)地歴を調べる
地歴というのはその土地に元々何が建っていたのか、どう使われていたのかという土地の歴史です。家を建てる以上、今は更地になっていたとしてもその土地に元々何があったのかということは知っておく必要があります。
例えば、元々田んぼと言う場所であると地盤が緩い可能性がありますので、地盤の改良に相当費用がかかります。ヘタをすると時間が経った後で家が傾いてくるという恐れもあります。
また元々ガソリンスタンドがあった場所で、廃業した後の土地だとすると、ガソリンタンクが通常地下に埋めてありますので老朽化したタンクからしみ出た油で土地が汚染されている可能性というのもあります。もちろんこれは土壌改良することで克服できるのでしょうが、それも無料ではありません。
このように元々どんな場所だったのかということでその後のことが変わってきますので、注意しておくことに越したことがありません。地歴は土地の登記事項証明書を取れば分かります。土地の登記は法務局からオンラインで誰でもどの場所でも取得することができます。その他にも図書館で古い住宅地図を確認するなどの方法もあります。
(5)役所で規制を調べる
希望の土地を買ったとしても、そこにどんな家でも建てられるかというと、なかなかそうなっていません。様々な規制があり建てられる建物に制限がかかっている場合が結構あります。
代表的なものとしては、用途地域という規制があります。用途地域によってその場所にどんな建物が建てられるのか、何階建ての建物が建てられるのか、あるいは現在なかったとしても将来周辺にどんな建物が立ちそうなのか、そういったことがわかります。用途地域は役所へ行けば簡単に調べることができます。
これ以外にも、その場所によって様々な規制があります。例えば日影規制という規制は周辺に日陰を作ってはいけないというもので、建てられる建物の高さや形状に規制がかかる可能性があります。また周辺の道路との位置関係で斜線規制というものがありこれもまた建物の高さや形状に規制をかけています。このような各種規制も役所に行くと教えてくれます。
さらに役所では、その場所に関しての開発計画を調べることもできます。今は住宅が密集してる場所でも、将来的に区画が整理されて大きな道路を建設する予定とかがある場合があります。これによって土地の一部が収用されることとなったり、最悪は立ち退きになったりする可能性もありますので、開発計画の有無というのも調べるポイントになります。
(6)土地の値段
土地の値段はひとつではなくて目的に応じて様々な値段があります。これは市場で取引されているものではなく相対取引と言って通常1対1での取引になりますので市場性のないものであるためです。
土地を買うという場合には、過去の取引事例から同じような場所の同じような土地がいくらで取引されたのか調べて、それを参考に価格を算出するのが一般的です。これに対して路線価のような課税目的で使う土地の値段は一般の取引価額よりも低く設定されていますので土地を買う時の参考としては不十分なものとなります。
過去の取引価格については不動産屋さんでなくても一般の方が簡単に調べられるようになっています。具体的には下記のようなWebサイトのツールを使って調べると良いでしょう。
国土交通省の土地総合情報システム http://www.land.mlit.go.jp/webland/
(7)少子高齢化の影響
最近国土交通省が推進していることとして、土地適正化計画というのがあります。これは何かと言うと、今後の少子高齢化による人口減少を想定して、人が少なくなった時の都市のあり方というものをプランしているものです。
簡単に言うと、人が住むべき場所というのをある程度定めて、そこを重点的に住みやすい場所になるように整備していく、そんな計画です。逆に言うと、この都市適正化計画の計画外となっている場所の土地を買ってしまうと、将来的に住みにくい場所になって価値が下がる可能性があります。
まだこの立地適正化計画は全国的に普及しているわけではありませんが、いくつかの市町村では計画の作成を進めています。例えば、東京都八王子市や埼玉県秩父市などではすでにこの計画が作成されています。もしこれから土地適正化計画のある場所の土地を買う時には計画区域の中で土地を買うようにした方が良いでしょう。さもないと人口減少のあおりで土地価格が下落してしまうということになるからです。
(8)おまけ
不動産屋さんと付き合う前に、不動産業界について少し知識を仕入れておいたほうが良いです。その意味で、こちらの漫画「正直不動産」はおすすめです。漫画ですので、大げさな面もありますが、大きく外れていないと思います。
以上、自らの経験を踏まえて、不動産を買う前に知っておきたい7つのこと、という話題でした。
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