「天は人の上に人を造らず 人の下に人を造らず」(福沢諭吉)と言って人は平等なわけですが、どうしても人を能力で区別する指標が存在していて、子供のころからそういう区別(差別ではない)に晒されてきているのも事実です。
目次
偏差値による人の「区別」
その代表例が「偏差値」です。子供のころからテストを受けると学力偏差値というものが計算されて、自分の能力を「数値」で見る事になります。テストを受けると成績の良いものから悪いものまで、その人数は正規分布を描きますので、ちょうどピークとなる真ん中が偏差値50とされています。つまり、「あなたは偏差値50」です、と言われれば、良くも悪くもない平均的な学力ということになります。
(出典:Wikipedia)
これより右側の偏差値が高いほうが学力が高く(つまり賢く)、左側の偏差値が低いほうが学力が低い(つまりバカ)、ということになっています。つまり世の中には「賢い人たちのクラスター」と「バカな人たちのクラスター」があるということです。
「バカマーケット」とは
このことはマーケティングを考える上でとても重要です。マーケティングでは対象として考えるターゲット客層の特徴を設定します。あなたの商品やサービスをどんな特徴を持った客層に向けて売りたいのか、あらかじめセットして、そういう客層が好む属性・性質を追求するのです。属性・性質とは例えば、デザイン、色、機能、名前、キャッチコピー、価格、ロゴなどなど商品やサービスを印象付けるものをいいます。
ひとつの仮説として、上記の「賢い人たちのクラスター」で構成される市場(「賢人マーケット」といいます)と「バカな人たちのクラスター」で構成される市場(「バカマーケット」といいます)の2つが存在するのではないか?という考え方があります。つまり、同じ商品やサービスであっても賢人マーケットとバカマーケットでは売り方が違う、と思うのです。
偏差値の理論上、賢人マーケットとバカマーケットのサイズは同程度の市場規模のはずですから、購買力や可処分所得の観点でも同じくらいの力があるはずです。一般に賢人マーケットのほうが高所得でお金を使いそうな感じがしますが、バカマーケットのクラスターでも仕事で成功して羽振りの良い人はいます。バカマーケットのクラスターだからお金を使わない、ということはありませんし、日常生活をする訳なので、普通にお金を使うはずです。
そういう仮説のもと、世の中を見ますと、ヒット商品の中には、どうやら意識的に「バカマーケット」を狙ったのではないか?というものがあります。
バカマーケットを狙った具体例(1)
例えば、「らあめん花月嵐」がそうです。らあめん花月嵐は日本全国に250店舗以上を展開し、生き残りが難しいラーメン業界で長い間根強い人気を誇っています。私も大好きで古くから通っています。こちらの特徴は下記のようなラーメンのネーミングにあります。
「豚そば銀次郎」 ・・・豚骨と魚介のWスープラーメン
「戦国武将らあめん伊達政宗」 ・・・ 仙台味噌を使ったラーメン
「嵐げんこつらあめんぐらんキャニオン」 ・・・ 太麺背脂醤油スープのチャーシューラーメン
このネーミングのバカバカしさが、いかにもバカマーケットを狙っているように感じます。普通に「豚骨魚介Wスープラーメン」とすれば良いところを、なぜあえて「豚そば銀次郎」とするのか?それは商品の属性・性質をバカマーケット向けにアレンジしているからです。また、この言い換えにより顧客の印象に強く残るようになり、リピート客の獲得にも貢献していることでしょう。
らあめん花月嵐のネーミングセンスはいつも驚かされます。バカバカしくもすばらしいの一言。歴代の「作品」は「KAGETSU ARASHI MUSEUM」で見る事ができます。バカマーケットを狙うにあたり勉強になりますので、ご覧ください。
バカマーケットを狙った具体例(2)
もう一つの具体例は、音楽です。2018年は「DA PUMP」の「U.S.A.」が大ヒットしましたが、この楽曲もいかにもバカマーケットを狙っています。
まず楽曲の構成時代が非常に素直で分かりやすいです。「C’mon, baby アメリカ どっちかの夜は昼間」ってバカバカしい歌詞もすばらしく、子供が真似したくなるダンスも秀逸です。マーケティング的には非常によく出来た名曲で、なぜレコード大賞にならないのか、大人の事情は分かりませんが、ここ最近聴いたバカマーケット向けの楽曲として最高だと思います。
バカマーケットに商機あり
商品やサービスを市場に投入しようとしたときに、ついつい「賢人マーケット」向けで考えてしまいがちです。ラーメン店で言えば、女性も入りやすい店づくり、インスタ映えする一杯、気取った味付け、など。音楽でいえば、ジャジーな感じ、落ち着いたボーカル、ラブバラード、など。
これはこれで良いとは思うのですが、ライバルも多く、従って継続したビジネスにするには難易度が高くなります。賢人マーケットは参入が多いので、いわばレッドオーシャン化してしまっており、よほど抜き出た才能がないかぎり、お互いに消耗戦となり、疲弊していきます。
市場のもう半分であるバカマーケットを狙うことで、より長期的に持続可能なビジネスにできる可能性があります。ただし、格好悪いです。プライドを捨てて、ばかげた商品やサービスを投入する勇気が必要ですし、時として批判されたりすることもあるでしょう。ですが、負けないで生き残ることが「勝者」の条件ですので、現在の手持ちの商品やサービスに限界を感じたら、是非バカマーケットに商機を見出してみてください。
以上、新規市場の参入はバカマーケットを狙え、という話題でした。起業の勉強をしたい方は、こちらの本がお勧めです。
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