現在とある有料サービスのサブスクリプションビジネスに関与しています。有料サービスを年間契約の形で市場に投入しようとしているのです。今回はサブスクリプションサービスというものをいかに導入して、成長させていくのが良いか、戦略的なアプローチについて考えてみたいと思います。
目次
ニコニコ動画の有料ユーザー数が減少
現在市場にあるサブスクリプションサービスは様々ありますが、その有料会員数は公表されていないことが多く、実際にそのサービスが売れているのか分かりにくい面があります。ごく少ない公表の例としてニコニコ動画があります。ニコニコ動画はここ数年ユーザー数の減少が続いており、下図と掲載記事のような有料ユーザー数の推移となっています。
「ニコ動」有料会員、減少ペースやや緩和 3カ月で7万人減
(出典:ITMedia ビジネス Online)
製品ライフサイクルで考えてみる
これを製品ライフサイクル(下図)に当てはめて考えてみますと、明らかに成長期を終えて、成熟期から衰退期へと向かってるように見えます。
このように通常の製品と同様に、サブスクリプションサービスについても製品ライフサイクルの考え方が適用できるものと考えられます。
問題はその製品ライフサイクルを特性を理解して、どのような戦略的なアプローチをとるべきなのかということです。指をくわえて成熟期から衰退期へ移行していくのを見ているわけにはいきませんので、そのような時期が来ることを予め想定して戦略を立てていくということが必要です。
通常の製品の場合の戦略
通常の製品(特にハードウエア)とサブスクリプションサービスと一番大きな違いは、通常の製品はローンチしてしまうと、簡単には更新をすることができず、機能の追加や改善をすることが難しいということがあります。モデルチェンジや新製品という形で既存の製品と入れ替えてしまうアプローチになるでしょう。古い製品は値引き販売したり、新製品の邪魔をしないように撤収・廃盤にされたりします。
ソフトウエア製品であれば、機能の改善や追加を定期的に実施してユーザーの使い勝手や利用体験を良くしていきます。マイクロソフトのOffice365やSalesforce.comが年に何度も小さな(というほど小さくもありませんが)アップデートしているのは、これによりユーザーに気に入ってもらい、契約を続けてもらうためです。
逆に言うと、大きなアップデートを年に1回やるのでは、その間にユーザーに飽きられて、サブスクリプションから離脱されてしまう可能性があります。短い周期で小さな喜びや驚きを届けて、惹きつけ続ける必要があります。
「サービス」製品の場合
これに対して「サービス」製品の場合は、サブスクリプションの維持がさらに難しくなります。なぜなら、ハードウエア製品のように古くなったサービスを新しいサービスで置き換えることはなかなか困難ですし、ソフトエア製品のように内容を年に何度もアップデートするという訳にもいかない場合が多いからです。
従って、「サービス」製品の場合はサービスそのものに新しい内容や付加価値を追加していくことで、徐々に中身を成長させる戦略をとります。サービスの特性を活かして成熟期もしくは衰退期への移行を阻止し、成長を続けていくというのが基本的な考え方となります。
成功例:Amazon プライム
「サービス」製品のサブスクリプションで成功するには、Amazon プライムのように「新サービス」を追加することになるでしょう。顧客は対価に見合う価値を求めますが、サービスの場合、同じサービスだけを続けていると価値が相対的に低下してくる性質があります。市場には直接または間接に競合がいますので、そのサービスの価値との比較で次第に見劣りしたり、飽きたりしてくるようになります。見劣りしたり飽きたりすればユーザーは離脱します。
Amazon プライムの場合、次々に新しいサービスを追加しているのは、対価に対する価値が相対的に低下しないようにしているためです。無料配送、ミュージック、ビデオ、本、ワードローブと定期的にサービスを追加して相対的な価値低下を防止しています。この間、日本では同じ料金ですので、顧客にとってサブスクリプションを離脱する理由はありません。
新サービス投入の見極め方法
重要なことは顧客からのフィードバックを常に受けて、顧客の「対価 vs 価値」の感覚にマッチしているかを検証することでしょう。対価が高すぎると感じているのであれば、サービスを追加または改善して価値を高めるアクションが必要ですし、逆に価値のほうが高いと感じているのであれば、値上げの余地があるとみることが出来ます。実際にAmazon プライムはアメリカでは値上げしていますので、そのような判断があったのでしょう。
このように、有料による「サービス」製品のサブスクリプションでは最初から定期的にサービスの追加か改善を織り込んで数年先のロードマップを作成することが重要です。そしてその実施の判断基準としては、顧客の「対価 vs 価値」の感覚を常に検証して、価値が対価を上回っているかを確認します。それによってサブスクリプションの離脱を防ぎつつ、成熟期や衰退期への移行を阻止するということになります。もし対価が価値を上回わるようであれば、新サービス追加の時期です。
以上、有料サービスのサブスクリプションで成功する方法、という話題でした。同様の状況にあるマーケティング担当者の参考になれば幸いです。サブスクリプション・マーケティングについては最近書籍も増えてきました。下記などおすすめです。
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