2023年10月から始まる消費税の「インボイス制度」ですが、いまだに反対意見も多く、事業者側が消極的ということがあり、当初の制度を緩和する改正が次々に出ています。
いったい今どうなっているのか?2023年2月時点でのポイントを表形式でまとめます。元ネタの多くは以下の財務省が出した「案」です。「案」となっていますが、この内容で実務では準備しています。この先まだまだ変わるかもしれませんが、ひとまずの現在地です。
インボイス制度の負担軽減措置(案)のよくある質問とその回答(PDF)
目次
適格請求書発行事業者となる小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置
いわゆる「2割特例」です。
何がどう軽減されるか? | 預かった消費税の2割だけ納税すれば良い |
対象は? | 本来は免税事業者なのにインボイス制度に登録して課税事業者になった事業者 |
対象外は? | インボイス制度に関係なく課税事業者となる事業者課税期間を短縮している事業者課税事業者選択届出書を提出して自ら課税事業者となった事業者 |
メリットは何か? | 原則課税なら仕入税額控除の計算が必要だがこれをしなくて良い。インボイスの保存も不要。 簡易課税を選択すると2割超を納税する可能性がある業種の事業者にとっては節税になる。 |
適用を受けるための手続きは? | 確定申告書にその旨を付記するだけ。事前の届出は不要 |
適用の時期は? | 2023年(令和5年)10月1日から2026年(令和8年)9月30日までの日の属する各課税期間において適用(3年間) |
中小事業者の少額取引に係る事務負担の軽減措置
少額ならインボイス不要という緩和措置です。
何がどう軽減されるか? | インボイスの取得・保存を不要とし、一定の事項が記載された帳簿のみの保存を要件として仕入税額控除できる |
対象は? | 基準期間(前々年又は前々事業年度)における課税売上高が1億円以下の事業者 または 特定期間(前年又は前事業年度開始の日以後6か月の期間)における課税売上高が5,000万円以下の事業者 かつ 課税仕入れに係る支払対価の額(税込価額)が1万円未満の取引 |
対象外は? | 上記以外の事業者 または 取引 ※ 税込3万円未満の公共交通機関や自動販売機などについては元々インボイスの交付義務が免除されている |
メリットは何か? | 現在は全ての事業者につき、税込3万円未満の取引に係る請求書等の保存は不要。 経過措置期間は対象の事業者に限って1万円未満の請求書等の保存が不要 |
適用を受けるための手続きは? | 一定の事項が記載された帳簿の保存 |
適用の時期は? | 2023年(令和5年)10月1日から2029年(令和11年)9月30日までの課税仕入れについて適用(6年間) |
返還インボイスの交付義務の見直し
実質値引きとなる売り手負担の振込手数料についてインボイスをどうするのか?という話です。
何がどう軽減されるか? | 振込手数料が売り手負担となり、手数料を差し引いた金額を支払う場合に売り手は返還インボイスを発行しなくてよい |
対象は? | 売上げに係る対価の返還等に係る税込価額が1万円未満である場合 |
対象外は? | 1万円以上の値引きは返還インボイスの発行が必要となる |
メリットは何か? | 振込手数料を売り手負担とする場合、売手側で売上値引とする処理と支払手数料(課税仕入れ)とする処理の2つの方法があるが、売上値引として処理することで、事務負担が軽減される |
適用を受けるための手続きは? | なし |
適用の時期は? | 2023年(令和 5年)10 月1日以後の課税資産の譲渡等につき行う売上げに係る対価の返還等について適用(期限なし) |
適格請求書発行事業者登録制度の見直し
インボイス制度の登録は3月末の締め切りから、実質9月末までに延長という話です。
何がどう軽減されるか? | 2023年(令和 5年)10 月1日から適格請求書発行事業者の登録を受けようとする事業者は、 3 月31日までに登録申請書の提出が必要だったが、理由がなくても4月以降でも間に合うようになる。 免税事業者が適格請求書発行事業者の登録を受けようとする場合は、登録申請書に、その提出する日から15日を経過する日以後の登録希望日を記載するものとし、登録希望日後に登録がされたときは、その登録希望日に登録されたものとみなされる。 |
対象は? | 2023年(令和 5年)10 月1日からインボイスを発行したいが、3月末までに登録しなかった事業者 |
対象外は? | 令和 5年3月末までに適格請求書発行事業者の登録を受けた事業者 |
メリットは何か? | 令和5年3月31日までの期限の事実上の撤廃 |
適用を受けるための手続きは? | なし |
適用の時期は? | 令和5年9月末まで |
免税事業者からの仕入についての仕入税額控除
仕入先・外注先がインボイスを発行しない場合の8割控除・5割控除の特例の話です。
何がどう軽減されるか? | 2023年(令和 5年)10 月1日免税事業者や消費者など、適格請求書発行事業者以外から行った課税仕入れに係る消費税額を控除することができなくなる。 しかし、激変緩和の観点から、免税事業者等からの仕入れについても、インボイス制度実施後3年間(令和8年9月末まで)は仕入税額相当額の80%を、その後の3年間(令和11年9月末まで)は仕入税額相当額の50%を控除可能な経過措置が設けられている。 |
対象は? | 2023年(令和 5年)10 月1日以降に免税事業者から課税仕入れを行う課税事業者 |
対象外は? | なし |
メリットは何か? | インボイスを発行できない事業者からの課税仕入れについても一部の仕入税額控除ができる |
適用を受けるための手続きは? | 仕入税額控除の適用にあたっては、免税事業者等から受領する区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等の保存と本経過措置の適用を受ける旨(8割控除・5割控除の特例を受ける課税仕入れである旨)を記載した帳簿の保存が必要。 |
適用の時期は? | 令和5年10月から令和11年9月末まで(6年間)。 これ以降はインボイスを発行できない事業者からの課税仕入れについては仕入税額控除ができない。 |