三匹の子豚の三男もしくは働かないアリにみる組織論




先日とあるセミナーにて厚切りジェイソンさんの講演を聴きました。厚切りジェイソンさんはご存知のとおり、お笑い芸人でありながら米国TerraSky社の役員といいうお立場の方です。役員としての知性と芸人としてのプレゼンテーション力を兼ね備えており、講演は秀逸でした。ここ最近見た中ではダントツ。いろいろ勉強になったわけです。

そんな中でも彼が話した「三匹の子豚」の話がとても示唆に富んでおり、深く考えるきっかけになりました。

 

ジェイソンさんの「三匹の子豚」(ネタばれ)

三匹の子豚のお話自体は、みんな大抵知っていますし、特に最近子育てした方は鮮明かと思います。自分はすっかり忘れていたのですが、簡単に言うと次のような話です。

ある村に三匹の子豚がいました。長男・次男・三男の三兄弟です。あるとき、狼が村を襲うかもしれない、と聞きつけて、危ないのでそれぞれ家を建てることにしました。三男は遊びたい盛りで、家を建てるなんて面倒で仕方ありません。そこでワラを集めてきて適当に家を建てました。それを見ていた次男は「さすがにワラは無いでしょ」ということで、木材を集めて木の家を建てました。それを見ていた長男は「そんな弱いのじゃ駄目でしょ」ということで、レンガを集めてきて、隙間無く強固な家を建てました。

そんなある日、本当に狼がやってきました。まず、一番弱そうな三男に家に「がおー」と襲い掛かります。ワラの家はひとたまりも無く壊れてしまい、三男は命からがら次男の家に逃げ込みました。狼も追いかけてきて今度は次男の家に「がおーがおー」と襲い掛かりました。木の家でも持ちこたえられず、二匹は命からがら長男の家に逃げ込みました。狼も追いかけてきて今度は長男の家に「がおーがおーがおー」と襲い掛かりました。

ですが、さすがにレンガの家は強く狼は諦めて森に帰っていきました。三匹の子豚は無事生き延びることができました。めでたしめでたし・・・

さて、ここで問題です。この話から得られるレッスン(教訓)は何でしょうか?

普通は長男のように勤勉でまじめなことが大事、十分な準備を怠らず、リスクに対処しましょう、ということかと思います。ですがジェイソンさんの話したレッスンは、「三男のように遊んでしまっても、最後生き延びられれば結果オーライ。他の人がレンガの家を建ててくれるので遊んじゃって大丈夫」ということでした。

講演会場は苦笑に包まれた訳ですが、自分は「いや、まったくそのとおり」と思いました。そして、この話は考えれば考えるほど深いものがあります。



 

この話の本当のレッスン

最小限のスタートで結果オーライを目指す

最初から完成度の高いものを目指さずに、最小限・最低限のコアと呼べるものだけを準備して、とりあえずスタートしてしまう。そのあとは状況に応じて対応すれば良い、ということです。

三男のようにとりあえず最小限のワラの家を建てて自分の好きなことをやり、狼襲来の状況変化に応じて、人の家に逃げ込むという対応は、ある意味正しいです。結果生き延びた訳ですから、問題ありません。三男の人生(豚生?)を充実したものにしてくれるでしょう。最初から完成度の高いものを目指して時間を無駄にする可能性もある訳ですから、時間という誰にも有限なリソースを最もうまく使ったのは三男ということになります。

 

自分で全部やらなくてよい

今回は長男がレンガの家を建ててくれていたので、三匹とも生き延びることができました。要するに三男や次男は自分がやらなくても、長男がやってくれたおかげで助かったのです。これは逆に言うと、組織に長男のような人がいる事が最初から分かっていれば、三男や次男は自分でやる必要はないのです。

神経質な人や完璧主義の人は自分で全部やらないと気がすまないという人がいますが、それは体や心にとってとても有害な考え方です。放っておけば人がやると考えて、あえて自分でやらないことが大事です。これによって、ストレスや病気から自分を守ることができます。

 

組織にマネージャーは不要かも

この話には管理者(マネージャー)というものは出てきません。狼襲来のうわさを聞きつけて、三匹の子豚は自発的に行動を起こしたのです。だれもマネージャーから仕事をアサインされたりしていません。このことは、従来からある階層的な組織とか指揮命令系統が本当に必要なのだろうか?という疑問を投げかけています。

組織のメンバーがそれなりに成熟していれば、外部からの刺激を感知して、それぞれが必要な反応を勝手に行う、ということが考えられます。最近はどの職場も高齢化してベテランばかりですから、わざわざマネージャーから仕事をアサインしなくても、それぞれが必要な仕事をするのでは?ということです。

 

組織には多様性が必要

もしも三匹の子豚が全員三男のような性格だったらどうでしょうか。全員狼に食べられて終了です。しかし、一方でもしも三匹の子豚が全員長男のような性格だったらどうでしょうか。もちろん狼襲来にはベストの布陣ですが、それぞれがレンガの家の建築に時間をかけていますので、組織のリソース活用という意味では問題があります。つまり無駄が生じているということです。

つまり、組織には同じような構成員しかいないと、不都合があるということです。今回は狼襲来という事態でしたので、長男タイプの構成員が機能したわけですが、例えば村の文化祭があってアート作品を作成するという事態であれば、どうだったでしょうか?ひょっとすると、三男が普段遊んでいるだけあって、自由な発想で良い作品を提案するかもしれません。

このように様々な事態に適切に対応できるようにするには、組織には多様性が必要だと言えます。金太郎飴のような組織は意外と脆いのです。

 

アリの世界に学ぶ

上記で外部からの刺激を感知して、三匹の子豚がそれぞれが必要な反応を勝手に行う、ということを書きましたが、まさにこれが起きているのがアリの社会です。最近下記の書籍「働かないアリに意義がある」を読んだのですが、この中で紹介されているとおり、アリの社会(コロニー)には女王と働きアリしかいません。

中間管理職無しに、ある者は巣を作り、ある者を餌を探し、ある者は卵の世話をします。だれも仕事を命じたりしていません。これは反応閾値(はんのういきち)というそうで、人間でも汚れた部屋に我慢できずに直ぐに掃除する人と、そんな部屋でも平気でご飯を食べれる人がいますが、刺激に対して勝手に反応してしまう習性をいいます。

それぞれのアリが様々な刺激に対して勝手に反応することで、コロニー全体としての運営ができているというわけです。これが人間の組織に応用できれば、つまり構成員各人の反応閾値をうまく組み合わせれば、管理職はいらなくなる、と思ってしまうのです。

そうなると中間管理職の数は減って、ビッグボスが人材のオーケストレーションだけやるような組織が将来の組織かなと思うわけです。ちなみに、書籍のタイトルになっている働かないアリの意義も非常に面白いです。是非ご一読を。

 

以上、三匹の子豚の話や、働かないアリの本を読んで働き方や組織論についていろいろ考えてみた話でした。

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