フリーランス個人事業主の決算整理仕訳はこうやろう

会計期間が終わりますと、会計上の締めくくりとして決算整理仕訳を切ります。この作業は小さな会社でもフリーランス個人事業主でも申告書を作成する前に必要になります。自分で申告するという方は忘れないようにしましょう。

決算整理の目的は主にその会計期間で発生した収益と費用を正しく認識して、所得を計算することです。中小事業者や個人事業主は期中の仕訳を現金の入出金で切っていることが多いですので、この現金主義的なやり方から発生主義といわれる考え方へ修正するのです。

ここではその修正に必要な決算整理仕訳について、大まかに概要を紹介します。

売上・仕入

売上についてはお金を受け取っている・いない、仕入についてはお金を支払っている・いない、の各状況について発生主義に修正します。すでに発生したものは当期の売上または仕入とし、まだ発生していないものは翌期に繰り延べます。

事象 仕訳
未入金のため未計上の売上 売掛金(未収金) / 売上
未支出のため未計上の仕入 仕入 / 買掛金(未払金)
売上として仕訳したがまだ売上が発生していない前受金 売上 / 前受金
仕入として仕訳したがまだ受け入れていない前渡金 前渡金 / 仕入

費用

費用についてお金を支払っている・いない、の各状況について発生主義に修正します。すでに発生したものは当期の費用とし、まだ発生していないものは翌期に繰り延べます。

事象 仕訳
前払いしたがまだ受けていないサービス(保険など) 前払費用 / 保険料

(翌期に係る部分)

当期に既にサービス等を受けたがまだ支払いしていないもの(電気料金など) 水道光熱費 / 未払費用

(当期に係る部分)

売上原価と商品評価

期首に在庫であったものは当期に売れて、売上原価になっていますので、仕入勘定に振替えます。また、当期仕入れたもので売れ残りは在庫として繰越商品に振替えます。また期末在庫のうち傷・破損などでもう売れないものは、当期の損失にできます。

事象 仕訳
期首の在庫を売上原価に算入する 仕入 / 繰越商品
期末の在庫を売上原価から除く 繰越商品 / 仕入
期末の在庫で廃棄するもの 商品減耗損 / 繰越商品

(帳簿価格)

減価償却

固定資産は事業の用に拱手するまでの支出額(取得価額)の大きさによって、当期にいくら費用にできるかが決まります。それぞれの場合に応じて費用を計上していきます。

事象 仕訳
固定資産の取得価額(30万円以上)のうち、当期に費用となる部分を計上(建物、車両など) 減価償却費 / 建物

減価償却費 / 車両

一括償却資産(10万円以上20万円未満)があれば、その取得価額のうち、当期に費用となる部分(3分の1)を計上(備品など) 減価償却費 / 備品
小額減価償却資産(10万円未満)は全額当期の経費にできる(備品など) 消耗品費 / 備品

(取得時備品としていた場合)

中小事業者(資本金1億円以下の法人と個人事業主)なら30万円未満の資産は当期の経費にできる(ただし総額300万円以下) 消耗品費 / 備品

(取得時備品としていた場合)

貸し倒れ

取引先が破綻してしまったり、その懸念がある場合、貸倒損失や貸倒引当金の繰入を行います。そのような事態や心配が特に無ければ、作業不要です。

事象 仕訳
取引先の倒産などで法的実質的にに回収見込みが無い 貸倒損失 / 売掛金

または 貸倒引当金 / 売掛金

(引当金を前期に計上していた場合)

(売掛金の全額を振替える)

取引先の払いが1年以上滞って回収できるか分からない場合など 貸倒損失 / 売掛金

(売掛金の備忘価格1円を残して残額を振替える)

個別評価や一括評価で翌期の貸倒が見込まれる場合 貸倒引当金繰入額 / 貸倒引当金

仮払金

仮払金の勘定に残高が無いかチェックして、残高があれば内容を調べて精算し、残高ゼロになるようにします。

事象 仕訳
出張費や交際費を仮払いして未処理のものを精算 旅費交通費 / 仮払金

交際費 /

現金 /

(使い残しは現金へ戻す)

決算整理仕訳が切れると次は所得計算・税務申告です。決算から申告まで結構な手間には違いありませんので、本業に時間を割くために税理士に依頼するというものありだと思います。ご自身でされる法人の方は下記の記事などもご参照ください。

法人税申告書と作成順序