新しい再出発のやり方「事業再生ADR」について。2分で分かります。

事業再生


過剰債務になったら

企業が過剰債務の状態になってしまったら、どうなるでしょうか?普通はいわゆる「倒産」ということになり、事業を再生しようとするのか、清算して消えて無くなるのか、ということになります。

従業員や取引先、融資した金融機関への影響は大きいですから、なんとか事業を再生したいということになります。ですが、事業再生も簡単な話ではなく、一定の債務を減免して(チャラにして)もらい、一旦過剰債務の状態をリセットするプロセスが必要となります。



法的整理と私的整理

この場合に取りうる方法として従来からある会社更生、民事更生といった法的整理に加えて、「事業再生ADR」という私的整理の方法を利用することができます。法的整理では裁判所が介在して進めますので、手続きに時間を要する問題がありますし、裁判所側もさばききれない、という問題があります。

そこで事業再生ADRでは公平な第三者(特定認証紛争解決事業者と言います)にはいってもらい、債務者と債権者で債務の減免について合意を図ります。これで利害関係者全員が合意すればそれで整理が成立します。もし一人でも合意しなければ、止むを得ず法的整理に進むことになります。



事業再生ADRは迅速さが売り

特定認証紛争解決事業者は2週間程度で債権者集会を招集し説明を行い、その後も短期間のうちに事業再生案を決議しますので、裁判所に比べると相当な迅速性ということになります。だれも時間を要することを望んでいませんから、多くの場合では全員合意となります。

下表は上場企業の適用事例ですが、多くが「成立」(全員合意)となっています。

事業再生ADR事例

(出典:平成29年経済産業省 事業再生ADR制度について)



事業再生ADRにはメリットがたくさん

事業再生ADRのメリットは全体の迅速性だけではなく、次のような点もあります。

(1)紛争解決事業者の介在により、事業再生ADRプロセス中に必要となるつなぎ融資が受けやすくなる。中小企業基盤整備機構の債務保証を受けた上で、事業再生円滑化関連保証を受けることができます。

(2)事業再生ADRが成立したあとの事業再生においても融資が受けやすくなる。中小企業信用保険法の特例を受けることができます。

(3)税制面での優遇がある。債務の免除を受けると免除益が法人税の課税対象となってしまいますが、ここに期限切れ欠損金を充てて損金参入することができます。それでも足りなければ青色欠損金を充てて、免除益を相殺することができます。債権者の側では、免除した債権は寄付金に該当せず損金算入となります。

(4)その後の法的整理の簡便迅速化。事業再生ADRを経たあとで、なお事業が再生せず、法的整理に進んだ場合には、すでに行われた資産評定結果等が考慮されるため、裁判官のみで手続きが進むなど、迅速な再生が可能になります。



事業再生ADRの利用方法は?

特定認証紛争解決事業者は、事業再生実務家協会(JATP)という民間団体が選任した弁護士、公認会計士、税理士などの専門家です。事業再生ADRの利用を検討している場合には、JATPにて無料の事前相談を受けることができますので、問い合わせてみると良いでしょう。

事業再生実務家協会(JATP)
http://www.turnaround.jp/

以上、新しい再出発のやり方「事業再生ADR」、という話題でした。さらに詳しく知りたいという方は、次の書籍をお勧めします。

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【独占禁止法】メーカーの販売店に対する価格について、競争阻害効果によりガイドライン違反になる事例について考えてみた

独占禁止法


難しい独占禁止法

企業の競争に関する法律は複雑で難解です。何をやってはダメで、何をやっても良いのか、常識だけでは分かりにくい場合があります。これは大丈夫だろう、ということが実は違法だったり、昔は大丈夫だったことが法改正によって現在では違法だったりして、油断できません。

それにも関わらず、「知らなかった」では済まされないのが、法的リスクのやっかいなところです。政府は官報に出した段階で、世間が知っている前提なので、注意していないと思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。特に後から法改正があった場合がやっかいです。

最近も「あれ?それはまずいのでは?」という事例がありました。何がどうしてまずいのか説明してみたいと思います。



グレイな事例

とあるメーカーの事例です。そのメーカーが販売店を通じて製品を売るときにどのように値付けがされるかというと、メーカーが販売店に売る価格があって、そこに販売店が自分の利益(マージン)を上乗せして顧客に価格提示する、ということになります。

このとき、メーカーが販売店の価格(消費者やエンドカスタマーへの価格)を指定したり強制したりすると、これは「再販売価格の拘束」といって、完全にアウト。独占禁止法違反です。このため、メーカーが「だいたいこのくらいで売って」と希望を言えば、それが「希望小売価格」ですし、希望なし(販売店への価格しか提示しない)なら「オープン価格」ということになります。これらは、独占禁止法違反を回避するための方法です。



競争阻害効果

ところが、複数の販売店があった場合に、販売店各社への価格に差をつけたらどうなるか?A社はがんばっているのでB社より安い値段で卸します、という場合です。これは独占禁止法上、アウトではありませんが、グレイな事例ということになります。販売店の価格を指定しているわけでは無いので、「再販売価格の拘束」には該当しませんが、競争阻害効果が生じると認められる可能性があるから、です。

つまり、このメーカーの製品が欲しいと思っている顧客がいたとして、A社もB社も自分の利益(マージン)を上乗せして顧客に価格提示するので、必然的にA社が提示する価格が安くなります。結果として、この顧客はA社から買わざるを得ないから、です。



競争が無いことにより損を被る顧客

もちろんB社が利益を減らしてA社との競争を選ぶことは可能ですが、B社が競争を避けたりして、状況によってはこの競争は起きません。実際に起きないことが多いです。これが「競争阻害効果」です。結果的にこの顧客は競争に晒されていない製品を買うことになります。すなわち、競争に晒されていないため往々にして「高値掴み」となります。

独占禁止法では「競争阻害効果が生じると認められる場合には,不公正な取引方法に該当し,違法となる」(不公正な取引方法第12項〔拘束条件付取引〕,独占禁止法第19条)(流通取引慣行ガイドライン第3部第1)としています。

このガイドラインに照らすと、上記のメーカーの事例は競争阻害効果が生じる拘束条件付取引を行っていると判断される可能性があります。もちろん、B社やエンドカスタマーである顧客が公正取引委員会に訴えたりしないかぎり、発覚しない話かもしれませんが、メーカーは違法性のリスクを抱えていることになります。



流通取引慣行ガイドラインの改正

この流通取引慣行ガイドラインが平成29年6月に25年ぶりに改正されて、明確化とインターネット等最近の取引にマッチした内容に変わっています。最近の改正であり、これまでシロだったものがクロに変わっている可能性もあります。一度、下記のまとめを参照して、理解を更新しておくと良いでしょう。

流通取引慣行ガイドライン改正の概要(公正取引委員会)

https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h29/jun/170616_01_files/170616_5.pdf



シロ・クロ判定は慎重に

ただし、上記の事例がかならずクロかというと、そうでもなく、その他の競争条件も考慮して個別に判断する、ということになっています。ちょっと怪しいなと思う場合には、公正取引委員会による独占禁止法に関する相談窓口を利用して当局の見解を事前に把握しておくとことをお勧めします。事前相談制度については、下記をご参照ください。

事業者等の活動に係る事前相談制度(公正取引委員会)

https://www.jftc.go.jp/soudan/jizen/index.html


以上、メーカーの販売店に対する価格について、競争阻害効果によりガイドライン違反になる事例について考えてみた、という話題でした。


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どうする?高齢者の5人に1人が認知症の時代に。後見人制度を活用しよう

最近よくニュースで聞く言葉ですが、5人に1人が65歳以上の高齢者である社会のことを超高齢化社会というそうです。東京都では2015年にすでに超高齢化社会に突入しているということで、この先もどんどん高齢化社会となっていくであろう、というのは周知の事実です。

歳を重ねてくると次第に心配になってくるのは、いつまで自分が健康だろうか?ということですね。特に認知症というのはやっかいな問題です。内閣府の平成28年版高齢社会白書によると、その患者数は下記のとおり次第に増えていく予想になっています。

65歳以上の高齢者の認知症患者数と有病率の将来推計についてみると、平成24(2012)年は認知症患者数が462万人と、65歳以上の高齢者の7人に1人(有病率15.0%)であったが、37(2025)年には約700万人、5人に1人になると見込まれている

こうなってくると認知症になる前に何らかの手を打っておきたい、準備しておきたいと考えるのは普通のことと思います。もちろん健康に注意していつまでも元気でいられるのがベストですが、万が一認知症になった時に自分の家族やその財産をどうやって守るのか、それが問題です。

そこで考えられる選択肢の一つが、「後見人制度」です。

以下にこの制度について簡単に説明します。

 

後見人制度とは

後見人制度は正式には「成年後見制度」といいます。そして大きく分けると法定後見制度と任意後見制度の2つがあります。

法定後見制度は、家庭裁判所によって選ばれた成年後見人等が本人が法律行為を行うときにサポートするものです。これは本人の判断能力が欠けている場合に、配偶者・四親等親族などが裁判所に申し立てて、後見人をつけてもらうという手続きを行います。裁判所は、法律や福祉の専門家などの第三者を選任します。

法定後見制度が認知症などで本人の判断能力が無くなったと認められてから使うものであるのに対して、任意後見制度は本人にはまだ十分な判断能力があるうちに、将来に備えて自らが選んだ代理人に代理権を与える契約を結んでおく制度です。代理人は契約で決めた事務を裁判所の監督(任意後見監督人による)のもとで行うことができます。当然ですが、本人の意思に反して代理人(任意後見人)が好き勝手できるわけではありません。

 

任意後見人になれる人

任意後見人は契約でお願いされた人がなれますので、未成年や破産者など一定の場合を除いて、親族でも契約することができます。自分の配偶者や子供、付き合いがある弁護士や司法書士、税理士、福祉専門家など信頼できる人がいればお願いするのも良いです。

 

任意後見制度を利用する場合の費用

まず任意後見契約は必ず公正証書によりますので、その作成にかかる費用が1-5万円必要です。値段の幅は、自分で書類作成するか、司法書士に頼むか、です。自分で作成すれば安く済ませることも可能です。

任意後見人の報酬は契約で決めた金額となります。報酬額は第三者に頼む場合は、管理財産額の多寡によって月額で1-3万円程度、これに加えて後見事務を行った場合の実費です。また、同時に裁判所が専任する任意後見監督人にも報酬を支払いますが、こちらは裁判所が無理の無い範囲で決めた金額を支払います。親族に任意後見人を頼む場合は無償とすることもできますが、その場合でも任意後見監督人への報酬の支払は発生します。

 

後見人制度の相談窓口

後見人制度を検討したい場合には、地方自治体の相談窓口がありますので、まずはこういった公的なものからあたるのが良いでしょう。ホームページで調べたり、役所の福祉部とか福祉課に問い合わせると具体的な情報が分かります。

 

まとめ

自分の認知症対策というのは、なってからでは判断が出来ないと考えられるので、元気なうちに検討しておくことをおすすめします。私は下記の書籍を読んで大変参考になりました。おすすめします。類書も多いので、知識を蓄えることから初めてみてはいかがでしょうか。

以上、どうする?高齢者の5人に1人が認知症の時代に。後見人制度を活用しよう、という話題でした。

フリーランスと独占禁止法

本日(2017年9月3日)付けで毎日新聞が次のように報じました。

フリーランス:独禁法で保護、公取委検討 労働環境改善へ

フリーランスと独占禁止法にはどういう関係があるのだろうか?と疑問に思い、調べてみました。

独占禁止法とは

独占禁止法とはそもそも「公正かつ自由な競争を促進し,事業者が自主的な判断で自由に活動できるようにすること」を目的としており、フリーランスである個人事業者においても自主的な判断で自由に活動できるように保護の対象と考えられるということです。

会社員のように事業者と雇用契約があれば、労働基準法で保護されていますし、事業者として請負契約があれば、独占禁止法の保護がある訳ですが、このどちらにも属さないフリーランスはグレーゾーンとなっていて、企業側が不利な条件を押し付けたり出来てしまうことが問題ということです。

どうしたら良いのか?

会社をいったん辞めて、その会社からフリーランスとして仕事をもらうような形態がありますが、法律的にはかなり不安定な身分ということになります。プログラマーやデザイナーのような専門的な技術がある人材の場合、競合他社に引き抜かれないように不当な条件で契約してしまうということも実際にあるようです。

フリーランスの仕事をするなら、出来る限りしっかりとした請負契約を結ぶようにしましょう。

個人的には、会社員であっても自主的な判断で自由に活動できるべきで、利益相反が無い限り副業・複業は認められるのが望ましいと考えます。いまだ多くの日本企業が就業規則で副業を禁止しているのは、経済が低迷するなかで労働力の流動性を落とすことになりますから、非常に残念な話です。

企業に勤めながらでも副業・複業でどんどん活躍できる人材が豊富にいるのに、もったいないですね。私の場合、幸いなことに勤めている会社(外資系)が副業・複業を承認してくれるのでありがたい限りです。これから社会に出る就活生はそういう観点からも志望企業を見たら良いと思います。転職を考えているなら、副業・複業を承認してくれる所を探すのもありですね。